Report

発想力を刺激する YOMIKO TREND REPORT

SXSW(サウスバイサウスウエスト)に見る広告の未来

小原 裕美子 Obara Yumiko クリエイティブ局 第4CRルーム

※執筆者の所属部署・役職名は執筆当時のものです。

未知のイベントSXSWに行った理由:「インタラクティブはもっとシンプルで楽しい!?」

SXSWは、毎年3月にアメリカテキサス州オースティンで開催されるMusic、Film、Interactiveの3つの部門からなる産業見本市、フェスティバルです。渋谷くらいの規模の街で世界的音楽フェスと映画祭とテック系カンファレンスが同時に行われているというとイメージしやすいかもしれません。

2007年twitterがInteractive Awardを獲り翌年ブレイクしたことから、ここでAwardを獲ると世界的にブレイクすると言われ、次のトレンドが生まれる場として注目されています。年々参加者数が増え、2013年はInteractiveだけで3万人、3部門合わせると6万人が参加したそう。これはカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルの約6倍にあたり、次のトレンドをチェックしに行く広告関係者も増えています。

SXSW会場
SXSW会場

そんなSXSWに私が視察に行ったのは、ある理由からです。
当時、プロモーションの企画セクションでInteractiveをメインに担当していたのですが、得意先は「Interactiveなプロモーションはやってみたいけれど、具体的な話はややこしくて苦手」とか「バーチャル好きな一部の人のものでは?」と考えているケースがあり、提案しても判断が難しいという理由で採用しにくいようでした。そこでSXSWという「Interactiveが音楽・映画というポピュラーなエンタテイメントと同列に語られる場」に行けば、Interactiveをシンプルに、楽しいものとして得意先に伝えるヒントがあるかもしれない、という想いで未知のイベントへ突撃しました。YOMIKOからは初参加ということになります。

行ってみたら「インタラクティブはカオス」だった。

行ってみると、そこにあったのは混乱・混沌・熱気…はっきり言うとカオスでした。
期間中、なんと2,000以上のカンファレンス・イベント・パーティーが縦横無尽に開催され、内容が多岐に渡りすぎて全貌が掴みきれません。

まず、著名人(アル・ゴア元アメリカ副大統領など)によるキーノートスピーチが多数、並行して様々なセッションがあります。
いわゆる「Interactive」関連のセッションだけでも、様々なカテゴリがあります。

新テクノロジー

ソーシャル

モバイル

デザイン

コンテンツ

ビッグデータ

クラウド

解析

ゲーム

等・・

同時に一見関係ないテーマのセッションも多数行われます。

宇宙

健康

働き方

投資

カルチャー

政治

インスピレーション

等・・
(後から関係してくることが分かるのですが)

SXSW会場
SXSW会場

更に、新サービスをブース展示するTrade Showも開催され、夜になると企業による多数のパーティーで街がごった返しになります。

選択肢が多く、どのセッションを受けるのが良いか悩みますが、会場が街のあちこちにあるため、移動時間を考えると悩む時間もありません。そして、やっと決めて辿り着いた会場でも、満員で入れないことも多々ありました。

また、セッションのスタイルは、日本で一般的な一方的にスピーカーの話を聞く受け身スタイルではなく、参加スタイルと言えます。参加者からの質問タイムに1/3以上の時間が割かれるのは普通で、全てが質問タイムのセッションもありました。油断していると、突然、「隣の席の人と自分の仕事内容をシェアしてビジネスチャンスをつくってみて」などと言われ、初めて会う外国のビジネスマンと英語での情報交換にトライすることもありました。
セッション開始前に列に並んでいる間にも、前後の外国人にガンガン英語で話しかけられるので、とことん参加型のイベントと言えます。

SXSW会場
どのセッションでも質問者が行列をつくる

最初はこのカオスを自分の中で整理しないと・・と取り組んでいましたが、数日で無理だと諦めました。そして日本からの参加者たちと「この全貌が掴めないイベントそのものが、インタラクティブビジネスの象徴では」という結論に達しました。

つまり、

・インタラクティブビジネスは360°の全方位で進化していると言われるが、まさにイベントそのものが360°、各セッションの見ている方向が違う。

・考えてから行動するのだと遅い、まず始めてみる方が重要。

・計画通りには進まないこともあるが、違っていたら軌道修正すればよい。

・受け身や自己完結型ではイノベーションは生まれない。新しい考えやテクノロジーを持った人・モノと出会って進化させる。

という「今のInteractiveそのもの」を体感できる場になっていると感じたのです。

多くのセッションで繰り返されたキーワードに【serendipity】(セレンディピティ)がありましたが、その意味を知って、やはりその考えは間違ってないと確信したのでした。

キーワード【serendipity】とは

思いがけないものを偶然に発見すること。また、その能力。
何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉。

ということで、Interactiveは急激な進化を遂げているためカオスな状態ですが、セレンディピティを持つことで革新的なアイデアを生むのに最適な場になる、と言えます。冒頭で「Interactiveはシンプルで楽しい」と表現しましたが、「カオスで、可能性に満ちていて楽しい」と言う方が近いな、と感じたのでした。

ちなみに、このカオスビジネス(?)はアメリカがリードしていますが、Google Glassと比較もされ話題になったメガネ型ウェアラブルデバイス「テレパシー」や、セッション・ブースともに盛況だったオープンソースガール「初音ミク」など、いくつか発表された日本発のテクノロジーやインタラクティブプロモーションも、しっかり注目されていました。

メガネ型ウェアラブルデバイス 「Google Glass」
Interactive Breakout Digital Trend Award 「Leap Motion」
SXSW会場 日本発「テレパシー」
日本発「テレパシー」を試してみました。

SXSWに見る広告の未来

広告ビジネスは成熟期を迎え、これ以上の広がりは難しいと言われています。CMやグラフィックが流行らないというのではありません。これからも素晴らしいCMやグラフィックは沢山生まれるでしょうが、従来のメディアを活用したマーケティング規模はこれ以上広がらないという見方です。

一方Interactiveビジネスはまさに進化し続けています。ライフスタイルの全ての側面がネットに繋がっていき、数年後の生活がどうなっているか予測できない。そしてこれまでの広告ビジネスとどう繋げると効果的か、考えても結論はでないわけです。とはいえ立ち止まっていては、何も生まれません。

そんな中、革新的なアイデアを生むために必要なのは、Interactiveの進化の中に自分を置くことだと思います。Interactiveは既に「自分とは関係ないもの」ではなくなっており「難しいもの」でもなくなっていきます。私たちはコミュニケーションのプロとして、Interactiveが変えるコミュニケーションをまずはしっかりwatchすること、そしてアイデアを提案する際は一方的な提案ではなく、得意先や生活者と「一緒に楽しみ、一緒に進化させる」視点で作ることがポイントなのでは?と感じています。