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発想力を刺激する YOMIKO TREND REPORT

広告会社は、これからどこへ向かうべきか? ~Spikes Asia13から見えた未来のヒント~

伊藤 雄大 Takehiro Ito マーケティングデザイン局 第3MDルーム プランニングディレクター

※執筆者の所属部署・役職名は執筆当時のものです。

2013年9月15日~17日の3日間、シンガポールのサンテックシティホールで開催されたSpikes Asia13 Festival of Creativityに参加してきました。

広告祭なのでもちろん、アジア・太平洋エリアの広告コミュニケーションの作品を対象として、賞が競われるわけですが、Spikes Asiaの特徴は、多彩なセミナー開催にあります。
3日間、ぜんぶで33のセミナーが開催され、朝から夕方までランチタイムを除きびっちりとスケジュールが埋められています。

今回はこのセミナー参加を通して、ドキッと感じたことをレポートしたいと思います。

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広告会社は自己否定できるかがカギ。広告ビジネスを破壊するアイデアを自らが考えられるか?

これは、昨年のカンヌからの流れだと思いますが、セミナー全般を通して、広告コミュニケーションの領域を超えたテーマで話をするセミナーがほとんどでした。新しいビジネス/サービス開発、新しいアプリ開発、新しいテクノロジー開発などなど。。。
その中でも、AKQAのCCOレイ・イナモト氏が言っていたことが広告会社のみらいを指し示すヒントになるような気がしましたので、その印象的なお話の趣旨を以下にご紹介したいと思います。

「予想外なプレイヤーの予想外なビジネスアイデアがブランドを崩壊させている。それは広告がブランドを守るスピードより早くなっているのが現実。広告会社は、自分の事業領域以外の企業とも競争しなければならない。」

「予想外なプレイヤーの予想外なビジネスアイデアに対抗するには、自分を否定・破壊するようなアイデアを考えられるか?がカギ。」

これからは自己否定の発想から入らないと、予想外の敵と戦えない時代。
なるほど!とドキッとしました。逆にいえば、クリエイティビティが売りのこの業界だからこそ、そういう発想から物事を捉え、考えることもできるはずだとも強く思いました。
変化に対応するというスタンスではフォロワーでしかなく、予想外の変化を自ら生む側、うねりをつくる側になる=そういうマインドで日常の仕事を行うことが、今後の広告会社のあり方としては重要だと思いました。

アッ!と驚くパワフルなアイデアは、Big Dataから始まる。

Big Dataは実際の生活者のアクションに基づいたリアルなデータだから、潜在的に生活者のホンネが潜んでいる。
だから、ホンネを探るには、消費者向けの定量調査や定性調査だけではダメで、Big Dataを常に意識してウォッチしなければならないという主張がなされていました。

さらには、それを毎日、いや毎時間見て、スピーディーかつフレキシブルな対応をしていくことが重要で、あるクライアントとの仕事においては、1日にブリーフが2回書き換えられるのが当たり前なようです。

確かに、プランニングの過程でBig Dataを見ることが重視されてきてますし、通常の定量調査よりも分析のしがいがあり、新しい発見があるように思います。それは、セミナーであったように、アクションに基づいたリアルなデータだから、という側面が大きいように思います。マーケッターはもちろん、クリエイターもBig Dataに関心を持たないと、人の心を動かすソリューションを出せない時代が来ていると感じました。

Social Good、その心は“Double duty”!

Social Goodなキャンペーンを評価する傾向はカンヌに引き続き、Spikes Asiaでもトレンドになっていました。その中でSocial Goodについて、より分かりやすく説明しているセミナーがあったので、ご紹介します。

「企業がやるべきことは、企業(ブランド)にとって健全な成長(売り)と社会に対する善いこと、この2つの義務(double duty)を同時に実現すること。その実現のためには、その2つが重なるShared Value(共有価値)を発見することが必要。」

この話はSocial Goodの概念を分かりやすくしたものだと思います。
カンヌでもグランプリを取り、Spikes Asiaでも7冠を取った「DUMB WAYS to DIE」のクリエイティブディレクターJohn Mescall氏も「ブランドにとって一番大事な価値を伝えながら、同時に世界のために何かできないか?それを徹底的に追及することで、結果としてボクは世界を動かしているんだ!」という話をしていました。
ゴールドを取ったトヨタの「AQUA Social Fes!!」もまさにdouble dutyを実践した事例だと思います。

■DUMB WAYS to DIE
http://www.youtube.com/watch?v=IJNR2EpS0jw
■AQUQ Social Fes!! 2013
http://aquafes.jp/top/

広告会社の目指す姿:「Market Designer」

今回いろいろなセミナーを聞いていて思ったのは、広告会社は広告コミュニケーションの領域を超えていくのはもはや前提。人の心をアッと驚かせて動かし、世の中のためになる新しいビジネスやマーケットを発明・創発する存在になる。その源泉として強いクリエイティビティがあるんだから、それを活かしできるはずだ!ということです。
予想外の敵に対抗するために、自分のビジネスを否定するくらいの先鋭的な発想で変化を創りだす、うねりを創り出す、そんな存在になる必要があるんだと思いました。

Communication Designerからもう一歩進んで、そういう新しいマーケットやビジネスを先鋭的な発想で生み出せる「Market Designer」という存在を志向することで、広告会社の未来の姿が見えてくるのではないか?
そういう印象を持ったSpikes Asiaとなりました。

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