Report

発想力を刺激する YOMIKO TREND REPORT

2014 Cannes Lions International Festival of Creativity レポート

2014年6月15日から6月21日に、フランスのカンヌで開催された、世界最大級の規模を誇る広告・コミュニケーション関連のアワードである、「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」(Cannes Lions International Festival of Creativity)。
世界最先端のトレンドをキャッチすべく、YOMIKOグループは5名を視察のために派遣しました。今回はそのうちの2名より、カンヌで得た最新のクリエイティブ・最新のコミュニケーションのトレンドを報告します。

REPORT1
『クリエイティビティの可能性は、果てしなく広がっていく。』

大谷 義智 Otani Yoshinori クリエイティブ局 シニアクリエイティブディレクター ※執筆者の所属部署・役職名は執筆当時のものです。

WHY CANNES?

なぜ、今改めて「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」(通称カンヌライオンズ)が注目されているのか?その答えは簡単で、そこにミライのコミュニケーションを指し示す「ビジネスの種」があるからなのです。昨年、カンヌライオンズ事務局の総指揮代表Terry Savage氏は、こんなことを話していました。

「カンヌを、広告賞の祭典から、ラーニングプログラムにしたい。」
「より多くの投資家が、カンヌに参加してくることを期待している。」
「ここは、美大と工科大学とビジネススクールを、かけ算した場所なのです。」

アワードの部門数は毎年のように増え続け、今年はプロダクトデザイン部門が加わり17部門、97カ国からエントリーされた参加作品は、37,427作品と昨年比で5%の増加。会期中は、エージェンシー、クライアント、制作会社などが、世界中からのセレブリティーとともに、約70件を超えるセミナーを開き、フォーラムと呼ばれる小規模セッションは約100件。最新のテクノロジーについて学ぶテックトーク、若い世代を育成するためのマスタークラスの開催など、カンヌは完全に学びの場へと変貌しつつあります。

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期間中、全ての作品を見ることも、全てのセミナーに出席することも到底無理な話しで、参加者もそれを知ってか、フィルム作品やケースフィルム(各エントリーに近年添付されるようになった全体の施策を短いビデオにまとめたもの)を事前にYOU TUBEなどで検索するなどの予習が欠かせません。

「全てが見れないなんて!」と不満の声が聞き漏れる中、それでもなお参加者が増え続けている理由はやはり、世界トップクラスの審査員たちが導きだす「ミライの広告の羅針盤」と、国籍も立場も超えた様々な人々のコミュニケーションから生み出される「ビジネスチャンス」に他なりません。

新コンペティション CANNES LIONS HEALTH の登場。

そんな中、今年の1つのニュースに、「カンヌライオンズヘルス」の登場が上げられます。カンヌライオンズの2日前(6/13.14)に開催され、従来のカンヌライオンズとは別に、ヘルスケア分野におけるコミュニケーションを審査するイベントとして開催されました。

先進国でおこる高齢化社会の加速化を背景に市場が膨らむ中、広告規制の多いヘルスケア関連のクリエイティビティーの再評価と、ROI(投資収益率)の相乗効果を狙っての設立とのこと。カテゴリーは医療用医薬品対象の「ファーマ部門」と一般医薬品および健康関連商品の「ヘルス&ウエルネス部門」の2部門のみ。

1423点の応募の中から「ヘルス&ウエルネス部門」において初代グランプリを獲得したのは、日本からのエントリー「Mother Book」。アイディアの強さ、クラフトの美しさ、そして生命の誕生を祝福する不変的なメッセージが高く評価されたとのこと。

審査員長のKathy Delaneyさんは、「世界の為に良い事をしようと考えられた様々な作品の中で、大きなスケールの作品ではなくこの本を選んだ理由は、ひとりひとりの生活の小さな変化が、生活者にインパクトを引き起こすと思うからです。」とのコメントが印象的でした。

日本の活躍 Team Japan

ライオンズヘルスでのグランプリをはじめ、日本からの受賞は全部で57作品。昨年の33作品、一昨年の50作品に比べても大幅な増加。その背景には、過去最多の14名の日本人審査員達のチームワークが伺えます。

カンヌライオンズの審査においては、審査員自身が所属するエージェンシーの作品に票を入れられないのはもちろん、サポートスピーチもすることができません。ワールドカップ同様に、国内でのチーム(エージェンシー)の垣根を超えて助け合わなければ、様々な国の審査員達のディベートに負けてしまいます。

そんな中、カンヌライオンズの中でも最高位と言われる(ゴールドより固い)チタニウム部門のグランプリに輝いたのが、ホンダの「Sounds of Honda」。様々な作品を押しのけての快挙です。

DATA Creative+ 企業(ブランド)のデータからコンテンツを生み出す「データクリエイティブ」

数年ほど前から、よく耳にするようになったビックデータ、生活者の日々のデータをベースにコミュニケーションデザインする作品は、かつてカンヌライオンズでもよく見かけたのですが、「Sounds of Honda」のように、企業が持つ過去のデータを鮮やかに現代に蘇らせ、ブランドの価値を指し示したクリエイティビティーはかつてなかった。ダイレクト部門でグランプリを獲得したBritish Airwaysの「The Magic of Flying」もデータクリエイティブのひとつの例と言えるでしょう。

ソーシャルな視点が当たり前の時代、企業(ブランド)が生活者のデータをコントロールしようとするのではなく、企業自らが集積し培ってきたデータをどう生活者に提供できるか、企業正義も問われているのかもしれません…。

Selfy Insight 生活者を、ひとり一人として捉え彼らの欲求に応える「セルフィインサイト」。

今年、最多のグランプリを獲得したのが、高級百貨店Harvey Nicholsのクリスマスキャンペーン「Sorry I spent it on myself(ごめんなさい、全部自分のために使っちゃった)」。フィルム部門、プレス部門、インテグレーテッド部門、プロモ&アクティベーション部門の4冠を達成しました。

高級百貨店だからこそ、インパクトのあるウルトラ安いプレゼントを制作し、グラフィック広告から展開、その後、ムービーはオンライン、店内、シネアド等で流されたとのこと。プロダクトの力とグラフィックの力、ユーモアのあるアプローチが秀逸です。

生活者を属性で捉えず、ひとりひとりとして捉え、その裏に何千人がいると考える。
昨年、オスカー賞でホストのEllen DeGeneresさんが撮影したSelfy(セルフィー/自撮り)が、Twitterで爆発的に拡散したことからも解るように、自分をコンテンツ化するムーブメントを、それぞれのブランドが理解しようとしている。プロモーションでもフィルムでも一人の生活者のインサイトを捉えるものが多く目立ちました。

Expert's Real  Contents それぞれの分野のエキスパートだからこそ、生み出せるコンテンツが、感動を呼ぶ。

リアルということ。生活者に嘘はつけないということ。フィルム部門でグランプリを獲得したVOLVOの大実験も、ソチオリンピックでのP&GのThank You Mumキャンペーンも、素敵なメッセージだけでなく、リアルなアクションがないと、生活者はついてこない。(ツイートしない、シェアしない。)

一般の人たちが撮影した動画が、プロが撮影した動画と同じ次元で見られ、シェアされる時代だからこそ、 映像のエキスパートとして、制作者にもその手腕が求められていると感じます。

最後に…

2005年カンヌライオンズの審査員をさせて頂いてから、はや10年が経とうとしています。かつて8部門しかなかったコンペティションはテクノロジーの進化と共に、17部門の巨大ビジネスコンベンションへと姿を変えました。そのプロセスの中で、新しい技術や、マーケティング手法に生活者も制作者も翻弄された昨今。

しかし、今年のカンヌライオンズから強く感じた事は、どんなに環境が変わっても、人と人のコミュニケーションの間にビジネスが生み出されているということ。

企業と生活者のことを第一に考え、分野の垣根を超え、共に創造をする限り、あたらしい「ビジネスの種」は開花するのだという実感です。

そして、「その種は自身で見つけ、耕さなければならないのだ。」という当たり前の反省をお土産に、今年のカンヌライオンズは幕を閉じました。

REPORT2
『クリエイティブが集まる場所で感じた事』

和田 直也 Wada Naoya 統合プロモーション局第2ソリューションルーム コミュニケーションデザイナー ※執筆者の所属部署・役職名は執筆当時のものです。

はじめて、カンヌに行きました。
そこで感じたカンヌライオンズの素晴らしさを中心にレポートをします。

カンヌの素晴らしさ

カンヌが素晴らしい場所と思えた理由が、3つあります。
出会い、時間、作品&セミナーという視点でお伝えしていきたいと思います。

●【出会い】

カンヌは、世界で最も大きいクリエイティブFesだからこそ、クリエイティブに関わるさまざまな人が集まります。

広告会社、クライアント、制作会社、プロダクション…
業界で名を馳せた人、カンヌに出品している人、会社から派遣された人、自腹で来る若者…

ほんとうに、多くの領域、さまざまな人が集まります。

そこで1つ気づいた事は、日本にいる時のような壁がないこと。
海外にいるおかげなのか、会社の大きさ、競合関係なく、とことんクリエイティブについて話すことができます。
大事な事は、そこでどんな人と、何を語り、何を持ち帰ることができるかでした。

そこで話をした中から、一緒に仕事をしたいと思える仲間ができます。
実際、カンヌで知り合い、いま一緒に仕事をしているという出会いもありました。

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●【時間】

カンヌに滞在している間、1日10時間以上を7日間、広告をはじめとしたクリエイティブのインプットができます。

賞をとった作品をひたすら見ること。
業界の著名人が語るセミナーを聞くこと。
出会った人と話すこと。

その時間をどう使うかは、自分の裁量に任されます。

ぼくらの仕事は、アウトプットしていくことだからこそ、それ以上のインプット(しかも質の高いインプット)をすることが、同じくらい大切なのだと思います。

カンヌは、ふだんの業務から強制的に解放してくれて、能動的にインプットする時間をつくることができる場所でした。

●【作品&セミナー】

ふだんの業務でも実感していますが、カンヌライオンズのエントリー作品により顕著なのが、統合的であり、インタラクティブ的な設計がうまくなされていること。

生活者のメディア・コンテンツタッチポイントが多種多様になっている現在、モノゴトの本質から考えると、必然的にインタラクティブな設計が求められています。

マーケティングは戦略視点だけでなく、より企画視点までを検討する必要があり、統合プロモーションは企画視点だけでなく、より戦略視点まで踏み込むことが求められていると思うのです。

ここで、カンヌライオンズで印象に残った作品をいくつかご紹介したいと思います。

1つめは、AKQAのセミナー、フューチャーライオンを獲得した学生による作品です。
手話の動作をセンサーで読み取り言語化していくという、テクノロジーの力でコミュニケーションの領域を超えたツール。
この作品はシンプルに誰でも、言語の壁・身体的な壁を超えてコミュニケーションを取れた時の可能性が感じられるところに企画の面白さの本質があります。
これを戦略的な視点から企画に落とし、発展的にコミュニケーションの企画に落としていくことを考えると、壮大な可能性を感じました。

2つめは、フォルクスワーゲン「kombi last wish」のプロモーションで、ブランデッドコンテンツ&エンターテイメント部門でゴールドを獲得しました。

この作品の本質的なところはブランドを一番愛してくれたのは誰かということに向き合っていること。ターゲットを明確にしつつも、社会的にいいねと言われるような話題となったことです。

長らく愛されたブランド、Kombi(コンビ)が生産終了になることに合わせて、ウェブサイト上に「Kombiの最後の望み」という、クルマ自身がお世話になった人にプレゼントを届けるという擬人化コンテンツを展開。生産終了という消え行くものとのエンゲージメントも注目すべき視点の1つだと思います。

3つめは、WestJetの「Christmas Miracle」のプロモーションで、サイバー部門をはじめ各賞を獲得しました。

この企画が本質的に優れていると思うのが、ブランドの想いを人々に喜ばれる形で届けていること。航空会社は輸送手段でしかないという領域を超え、ブランドとして愛されることに成功していました。

カナダの航空会社が乗客たちへ贈った粋なクリスマスプレゼント。完全サプライズで行われたこのプレゼントは、大きな話題を集めました。

カンヌで感じた事

カンヌライオンズでは、本年も多くのキーワードが登場していました。

「デジタル」、「ビッグデータ」、「ストーリーテリング」などのクリエイティブキーワード。
「ソーシャルグッド」、「セルフィ」などのコミュニケーションキーワード。

たぶんこれからも、時代を捉えるキーワードは多く登場するでしょうし、
これらのキーワードを押さえておくことも当然重要です。

ただ、それ以上にもっと大切な事は、キーワードに踊らされない、本質を考える力を伸ばしていくこと。
生活者、メディアがめまぐるしく変化する中、モノゴトの本質を見極められる力を養う事の重要性を改めて感じました。

さらにもうひとつ大事にしたいのは、時代の変化に対応できる仲間をいかにつくれるか。
わたしたちの仕事が繁盛していくために、共創してくれる仲間がどれだけ自分の身の回りにいるか。
より個の強さとネットワークが重要だということを、カンヌは教えてくれました。