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発想力を刺激する YOMIKO TREND REPORT

2015 Cannes Lions International Festival of Creativityレポート

大谷 義智 Otani  Yoshinori クリエイティブ局 シニアクリエイティブディレクター

2011年、通称カンヌライオンズの名称をCannes Lions International Advertising FestivalからCannes Lions International Festival of Creativityへと変えて早4年。従来の「広告」の姿は完全に変貌を遂げ、新しい広告産業が走り始めています。

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そしてそこには、クリエイテターのみならず、企業経営者、事業開発者、投資家、コンサルタント、技術者、そして大学教授や博士、次世代をになう学生まで、世界90カ国から約13,000人が押し寄せ「ミライのコミュニケーションのヒント」を得ようとしています。年を追うごとに拡大し続けるカンヌライオンズ、今年のトピックは2つ。

Topic 1 「創造力」がイノベーション「革新」を起こす。LIONS INNOVATION FESTIVALの登場。

2013年に創設された「イノベーション部門」を拡大し、新しいアワードプログラムとして「LIONS INNOVATION FESTIVAL(ライオンズ・イノベーション・フェスティバル)」が開催されました。INNOVATION LIONとCREATIVE DATA LION 2つのライオン(賞)で構成されるこの部門は、インターネットが多くの人々に普及し、次々と生み出される新しいテクノロジーや、ビッグデータ時代に生きる広告産業に、新しいコミュニケーションアイディアを求めています。

昨年、ホンダがかつてのアイルトン・セナの走行データを音と光で再現する「Sound of Honda」のインスタレーションで、様々なカテゴリーのライオンを獲得しました。ホンダブランドのDNAを新たに再現し、生活者に驚きとともに新しいブランドエンゲージメントを実現したように、今年も様々な作品がエントリーされ、見事、INNOVATION LIONのグランプリを獲得したのは、「WHAT3WORDS」。地球上のあらゆる地図データを3平方メートルのグリッドで分解し、3つの言葉で設定、グローバルな理解を促進します。住所もない僻地で暮らす人々に物資を届けたり、病院や学校の住所を設定したりすることを可能にしたこのシステムは、実際にアプリケーションをダウンロードして活用できるので、興味のある方は是非お試しください。

https://map.what3words.com/

Topic 2 性差別や偏見を打ち破る広告表現を讃えるGLASS LIONの登場。

マイノリティーの人々の頭の上には、見えない偏見などの壁(GLASS)が常に存在し、その存在が故に社会への進出が遅れています。そんな人々を応援する意味を込め、今年、性差別や偏見を打ち破る広告表現を表彰する特別部門、「GLASS LION(グラスライオン)」が登場しました。

同部門は、米フェイスブック最高執行責任者のシェリル・サンドバーグ氏が創設した、NPO「LeanIn.org」が協賛。アメリカにおいても数少ない女性CEOのサンドバーグ氏は、「女性やマイノリティーの人々の積極的な社会進出を願っています。しかし、数年後にはこのような賞がなくなることが一番の理想だと思うのです。」と一言。

この新部門でグランプリを獲得したのは、生理用品Whisperのインドにおける施策です。タイトルは「Touch the Pickle」。インドでは、生理期間中の女性は不浄のものとされ、様々なことを禁止されます。その中のひとつにあるのが「漬物壺に触るな」。このばかばかしい風習を覆し、インド社会に生きる女性たちに変革をもたらしました。

企業(ブランド)は社会をより良い方向へと変えているか、Social Change が問われる時代。

新設されたINNOVATION LION そしてGLASS LIONの両部門のグランプリ作品をみても分かる通り、数年ほど前から言われてきたSocial Goodの視点は、企業やブランドがいかに社会に貢献しているか、社会を変えているかSocial Changeを問いただしています。

デザイン部門、プロモ&アクティベーション部門でグランプリを獲得したVOLVOの「Life Paint」もその一つ。イギリスでは、年間約1万9000人もの人々が自転車事故に遭っています。夜は得に危険で、ヘルメットを被らずに大事故になることも。VOLVOが開発したのが車のライトに反応し光るスプレー。安全な車社会を生み出すために、社会環境から変えていく姿勢が、新しいビジネスモデルを生み出しました。

広告エージェンシーは、ビジネスをデザインする会社へ。

今年、様々なセミナーで語られた「スタートアップ」という考え方。従来のように、企業からのオリエンや予算提示を受けて仕事を始めるのではなく、その企業が社会において、企業価値をどう高められるかを共に考え、新しいビジネスを生み出し、スタートさせる。

急速に変化するメディア環境の中、広告会社の存在価値も問われている昨今。「広告会社が新しい魅力的な産業になるためには、想像力でビジネスをデザインしてこそなのだ」と語る、R/GAのGlobal Chief Strategy Officer/Barry Wacksman氏の言葉が印象的でした。

最後に、、、

「広く人々へ告げる」という広告の概念は、「広く社会に機能する」ものへと変わり、生活者の消費や利便性を追求するだけでなく、社会そのものを良い方向へと導くものでなくてはならない。

広告会社で働く私たち一人一人の社会への態度が、大きく問われていることを、痛切に感じる今年のカンヌでした。