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発想力を刺激する YOMIKO TREND REPORT

2016 Cannes Lions International Festival of Creativity レポート

大谷 義智 Otani  Yoshinori クリエイティブ局 シニアクリエイティブディレクター

63回目を迎えるCannes Lions International Festival of Creativity(通称カンヌライオンズ)。今年は、エンターテインメント部門が別イベントとして独立し、従来のカンヌライオンズに、ライオンズヘルス、ライオンズイノベーションを合わせ、4つのイベントが8日間にわたり開催されました。

27のカテゴリーにエントリーされた総作品数は43,101点(昨年比+7%)、約1,000を超えるセミナーやフォーラム、ワークショップは、世界約100カ国から来た様々な職種の参加者(約14,000人)の脳を刺激し続けます。
※情報はオフィシャルサイトより転載

もはや、アウトプットされたコミュニケーション施策を評価する場ではなく、「新しいコミュニケーションビジネスを模索する場」へと完全に生まれ変わったカンヌライオンズ。ミライのコミュニケーションのあり方が見えてきます。

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世の中を突き動かす、本当の創造力(クリエイティビティー)が試されている。

今年のカンヌにはスローガンがあり、それは‘Creative matters for business for change and for good’「ビジネスを生み出すのも、変化をつくるのも、社会を良くするのも、創造力の問題だ」とでも訳せば良いのでしょうか。技術革新が進み、様々なビジネスモデルがスタートアップする中、本来のクリエイティビティー(創造力)が真剣に問いただされた今年のカンヌライオンズ。偽善的なソーシャルグッド施策や、ただ面白さだけを狙った広告表現は姿を消し、これからの社会を真摯に良い方向へと導く考え方や施策にスポットが当てられた年となりました。

Creative Matters for business ビジネスを生み出す創造力。

そんな中、アウトドア部門でグランプリを獲得したのは、Brewtroleumハイネケン・ニュージーランドの施策。ビールの広告規制が厳しく、若者のビール離れも進む中、ビール製造時に生まれる副産物からつくった バイオ燃料を売るビジネスモデルを ガソリン会社Gull Petrol社と共に実現したハイネケン。従来のガソリンに比べ二酸化炭素排出量を8%削減できるというから驚きです。ビールを飲むきっかけを、環境活動までつなげ新しいビジネスモデルを立ち上げているところが秀逸です。

モバイル部門のグランプリには、ニューヨークタイムスとグーグルとの共同施策NYT VR。昨年11月グーグルカードボードをサンデータイムズと一緒に配布、同時にNYT VRサイトを開設、購読者に世界中のニュースを3Dで体験してもらいました。新聞購読者が減る中、クラシカルメディアと新しい技術を融合させ、生活者に世界の情勢を3Dで体験させるこの施策は、ミライのコミュニケーションやメディアの姿を指し示しています。

Creative Matters for change 変化を生み出す創造力。

プロモ&アクティベーション部門とチタニウム部門、両部門のグランプリに輝いたのはアメリカのアウトドアショップREI社が行った#Opt Outside (#外に出かけよう) が獲得。クリスマス商戦のブラックフライデーに、全店舗を休むという大胆なプロモーション。結果、他の多くの小売店も店を閉め、クリスマス休暇は買い物をする日ではなく、郊外を楽しむ本来の休暇のあるべき姿に行動変容をうながしました。

メディア部門は、既存のメディアをうまく再活用する施策が多いなか、グランプリに輝いたのが、シンプルで賢いアプローチと審査員長も評したバーガーキングの施策McWhopper、プレス部門に続く2つ目のグランプリです。世界平和デーにバーガーキングが「一緒にハンバーガーをつくろう!」との申し出を断ったマクドナルド。それを機に、生活者は自身でいろいろと自らハンバーガーを創り出し、しまいには他のハンバーガーチェーンがバーガーキングにアプローチするというハプニング!競争ばかりの大量消費社会に一石を投じます。

Creative Matters for good社会を良くする創造力

近年、もてはやされているソーシャルグッド型コミュニケーション、しかし、その施策が実際生活者の中でワーク(機能)しているかどうかが問われた今年のカンヌ。社会貢献度を判断するグランプリ フォー グッド部門では、ブエノスアイレスDAVID制作のMANBOOBSが獲得。自分の触診で早期発見することのできる乳がん。自分でできる触診の方法を知らしめたいが、その映像を拡散できないのが現実。そこで、男性の胸を借りての説明となりました。

PR部門は、スェーデンのCOOP(生協)The Organic Effectがグランプリを獲得。オーガニックフードは高いと嫌厭する人たちにむけて、スウェーデン環境研究センター監修のもと「オーガニック食品だけを食べ続けると、人体にはどのような影響があるのか」をPRしたムービーがこちら。子供たちの体の中にある化学物質の数値がほぼゼロになる驚きの結果を示します。

最後に、、、

新しいビジネスを、新しい社会を、新しい変化を、様々な創造力(クリエイティビティー)で実現しようと世界中の人たちが模索する場、それがカンヌライオンズ。そこには、少しでも世界をより良い方向へと導こうと奮闘する人々の「知」と「エネルギー」が集まっています。
カンヌライオンズが終わり、その数週間後、カンヌのビーチからそう遠くもないニースで悲惨なテロ事件が起きました。世界のグローバル化が加速する中、多様性のあり方が議論ではなく暴力へと変わりつつある時代。コミュニケーションを仕事とするわたしたちに何ができるのか?真摯に受け止めなければならない時代なのだと痛感します。

末尾となりますが、こんな刺激に満ちたカンヌライオンに今年も参加させていただき、心より深く感謝しております。ありがとうございました。