Uniqueness

「次世代サードプレイスの潮流」研究会

はじめに
このたび、都市生活研究所では「次世代サードプレイスの潮流」というテーマによる研究会を発足し、活動を開始しております。
商業施設やホテル、または公園などの公共空間等において、都市や地域と生活者の関わり方が大きく変化しています。
たとえば、近年のいくつかの新しいホテルにおいては、宿泊や結婚式などの宴会需要だけでなく、地域の様々な人が集まり、団欒したり仕事をしたりする「新しい自分たちの居場所」としてラウンジを活用する現象が見られます。
当研究会では、そんな都市空間をデザインする第一人者である有識者の方々を招聘し、多角的な視点で議論することで、「次の時代に必要とされる都市空間/サードプレイスとは、どんな場所・時間なのか?」を探ってゆきます。
今年度内で全5回程度の開催を予定しており、今回はその第1回目の報告となります。

【第1回】商業/飲食施設 賑わいを誘発する、商環境発想で人の流れをデザインする場づくり

第1回は、「商業施設」をキーワードに、「賑わいを誘発し、人の流れをデザインする場づくりとはなにか」について、新宿駅の商業施設「NEWoMan」のデザインに携われた大野力氏((株)シナト sinato )をゲストに、塩田氏(編集者)、YOMIKOメンバーでディスカッションを行いました。

イメージ画像
「次世代の場づくり」とは

新宿駅の商業施設「NEWoMan」では、人の流れや賑わいを創るため、共用部(通路)と専有部(テナント)が異なる空間とならないよう、物理的な越境と視覚的な境界を見えなくすることで、専有・共有の区分をぼかすようなデザインを作り上げた大野氏。
大野氏が手がけたデザインのように、「賑わいを誘発し、人の流れをデザインする場」となっている商業施設が他にもあるのではないか、と研究会メンバーから下記事例が挙がりました。

イメージ画像
イメージ画像
(塩田氏)
事例をみると、きっかけのための空間が大事そう、トキ消費ができるきっかけをどうつくるかが、必要になってくる。
(大野氏)
機能と1対1対応していない空間がいいのではないか。広いスペースが自由なわけではない。自由だけど規定しているが良い。自由すぎると何もできないので、その補助線がほしい。いかにユーザの能動性を引出すか、そのための補助線を引くのが、建築デザインの見せどころでもある。日常的空間か非日常的空間か、個人の居場所か集団の居場所なのか、の2軸によって、生活者の能動性を引き出す空間を整理できるかもしれない。事例で考えてみると、喫茶ランドリーやイオンのウォーキングスペースは日常、上海の百貨店は非日常に、切り分けられそう。
様々なゾーンを越境する空間や仕組みが生活者の能動性を引き出し、「賑わい」の創出につながる
2軸によるポジショニングマップ
イメージ画像
(大野氏)
ポジションにおけるシーンが見えてくると、各ゾーンにおける課題や機会も見えてくる。4つの方向性に事例をあてはめてみると、空間のテーマや用途が見えてくる。一民間企業が徹底的に社会貢献することによってその会社の価値が上がって、商業としての売上も上がるのなら、それは新しい回路。これがいろんなゾーンでできてくると、人々にとって居心地の良いサードプレイスになるかもしれない。
その場所やコミュニティが必要とする環境や条件は都度異なるため、上記のようなポジショニングマップに当てはめながら空間づくりの方向性を整理・検討すると、適切な「場」のあり方が見えてくるかもしれない。さらに、不特定多数で全然属性が違う人が、同じ場所やサービスの中にいるような状況を目指すと、上記の各ポジション間での越境や役割のMIXが生まれ、もう一つ違った場所を作ることができるかもしれない。
(大野氏)
1施設に1ゾーニングの方法もあるが、1施設に複数のゾーニングを作る方法もある。アメリカのBIDのような公共施設の周りの利益を還元してもらうような仕組だと、公共施設でも利益が出る(例:ブライアントパーク)。日常も非日常ゾーンも、選択肢がたくさんあって、都市に実装されていくのが望ましい。最後まで作り上げすぎない、デザインをしすぎない、自由さを残すことも重要。どういう補助線・エレメントを作るかは建築家が考えればよく、一番の理想は、予想外の方向性にユーザが使い倒してくれること。海外は自己主張がはっきりしているため、補助線の必要はないかもしれないが、日本はやはり必要。境界線をどんどん壊していくのが重要だ。
[ 編集後記 ]

第三の居場所、サードプレイス。
家庭でなく、職場や学校でもない、居心地の良い場所。
これまでは、義務や強制ではなく「そこにいたい」という自分の意思から居座り、快適に過ごせる空間(例:スターバックス)が求められてきたが、現在は「自由に過ごす」だけではなく「多様な人々と交流できる」など、より自分が能動的・主体的に過ごせる空間が求められ始めている。

様々なサードプレイスが存在する中、次の時代に必要とされる「場」は、場所に合わせて人々が自由に過ごすのではなく、自分がしたい過ごし方に合わせて自由に空間を変えられる・使い分けられる場所かもしれない。

商業施設においても、「買い物をする場」だけでなく「何かができる場」へすでに変わりつつある。自分や家族の可能性や未来を感じて訪れる場所として、人々の新しい「何か」につながる空間(トキ)を提供していく必要があるだろう。

「日常の生活に溶け込みつつも、個の力を引き出し、人々に新たな豊かさを提供すること」が都市開発の新たな使命になっているかもしれない。

イメージ画像
本件についてのお問い合わせ
都市生活研究所 城
TEL:03-5544-7223
(読売広告社 都市生活研究所 第1ルーム 相澤恭子)