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withコロナで見えてきた住宅ニーズの変化<前編>

2020.11.09

YOMIKOオリジナル「withコロナ住まい調査」

世界はもとより、日本に住む全ての生活者に対し、経済的にも生活面でも大きなインパクトを与えた新型コロナウィルスの流行。これによって、住宅購入検討者の行動やマインド・ニーズはどう変わっていくのか。
マーケットそのものはどう変化していくのか。
その兆候を探るために、私たち読売広告社は2020年5月25日の緊急事態宣言の解除を受けて、「首都圏住宅購入意向者」への緊急調査を実施しました。

長い自粛期間やテレワークなど経験から本質的な価値観が見直されるように!

コロナ禍前後の住まいの考え方においては、テレワーク需要の拡大から「インターネット環境のよい家に住みたい」が2ランク上昇の4位に。さらに注目なのは、「マンションよりも一戸建てに住みたい」が3ランク上昇とランク外から9位にランクインしています。これは、最近増加傾向にある共働き層がテレワークになった際に、お互いに仕事に集中できる個室が必要と感じた結果だと想定され、戸建への意識の高まりというデータは、間数=部屋数への意識と高まりとも捉えられます。
また、エリア・立地の考え方は、「住民サービスの充実に取り組む自治体に住みたい」が4ランク上昇しランク外から7位に。これは、自粛期間中に知事の発言などに注目が集まったことが起因していると考えられます。そして、「自然が豊かなところに住みたい」も3ランク上昇し、こちらもランク外から8位にランクイン。
「戸建意識=間数・部屋数志向」「住民サービス」「自然の豊かさ」など本質的な暮らし価値への評価が高まったと言えます。

住まいに求める「機能や設備」にも影響! 住まいは単なる生活する場から「仕事・オンラインで学習する場」など機能拡大が求められるように

コロナ禍によって、住まいの機能・設備意識に影響した人は6割にも上りました。
もっとも影響を与えたと考えられるテレワークですが、その懸念は「運動不足」や「オンとオフの切り替え」が全世代共通で高いポイントを示しました。
年代別では、若年層では「子どもがいるので集中しづらい」。60歳以上の高齢層では通勤・職場での仕事が長年の習慣となっているためか「通勤先とは違う環境なので集中できない」でした。

そのようにテレワークの懸念点から居住空間(専有空間・共有空間)に取り入れたいものの傾向も年代によって若干の違いが見られました。
住まいの専有空間では、20〜30代、40〜50代のバリバリ仕事をしていると想定されている層では「大容量無制限のWi-Fi設備」「テレワーク用の半個室スペース」や「テレワーク用の書斎」など仕事に関連するスペースが平均よりも高い傾向になりました。
一方、60歳以上の層では、「食料がたくさん保管できる保管スペース」「気兼ねなく運動や音楽を聞ける防音・防振スペース」が高いポイントを得ています。年齢からくる機動力の問題もあり、買い溜めなどが起こった際の備えを万全にしておきたいなどのニーズが顕在化したと想定されます。

また共用空間は、全世代で「運動不足を解消するフィットネスルーム」「除菌・ウィルス除去機能が強化された宅配ボックス」が高いニーズが見られました。
年代別では、20〜30代・40〜50代では「子どもを見守りながら働けるワークスペース」「完全個室型ワークスペース」など子育てと仕事の両立を求める空間への高いニーズが感じられます。
60代以上の高齢層では「屋外の開放感があるテラス的なワークスペース」「書類の印刷や宅配便手配ができるワークカンター」など居住性と仕事の両立を求める空間への高いニーズなど、弱〜中・高齢層では異なる傾向が見られました。住まいへ求める機能の拡大ニーズがうかがえます。

コロナ禍のなかでも購入意欲は上昇傾向。 上昇理由では「コロナは無関係」「ライフステージ要因」「価格下落への期待」など

コロナ禍によって、住宅購入予算平均は191.0万円ダウンと予算はやや縮小傾向が見られました。
また、住まい購入の影響を受けたとする割合も半数を超えており、影響を受けたものは「購入時期」「予算」「エリアや街」など。
ただし、購入意欲の上昇度は約3割、減退度は1割半ばと、コロナ禍のなかでも意欲は上昇傾向にありました。上昇理由では「コロナは無関係」「年齢的なタイミングなどライフステージ要因」「価格下落への期待」が上位を占めました。一方、減退理由は「経済悪化による収入・雇用への不安」など“将来への不安”が半数を占めました。

コロナは、生活者の住まいの選び方や住み方(居住空間)、購入の仕方など様々な部分に影響を与えました。生活者は自粛生活などの今までの違う暮らし方が強いられる中、生活や住まいを見つめ直す時期にもなったのではないでしょうか?そのような環境下だからこそ、住まいの理想の“多様化”、住まいの役割の“多機能化”というニーズの兆しが見えてきたのではないでしょうか!?

前編では、コロナ禍での住まい調査の全体傾向を紹介させて頂きました。後日、後編ではさらに踏み込んだエリア分析によって見えてきた、生活者の傾向の違いや差などについて紹介させて頂きます。

佐々木 崇秀

データドリブンマーケティング局 都市生活マーケティングルーム ルーム長

シニアストラテジックプランニングディレクター

1973年宮城県生まれ。2009年読売広告社入社。
デジタルマーケティングセクションを経て、2011年より都市生活研究所へ。主に不動産デベロッパー関連の業務に軸足を置き、首都圏タワーマンション事業のマーケティング分析から販売戦略立案の他、地方都市の大規模街づくりプロジェクトにも参画。その他業種のブランドでも、コミュニケーション戦略からプロモーション・プランニングまで、幅広い業務に従事。