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「都市」と「生活者」視点で描くサービスデザインプログラム ─今、注目されるサービスデザインとは?

2020.04.14

いよいよ始まった5Gサービス。本格的な展開までにはまだ時間がかかりそうですが、企業等の組織は実用レベルに進展したテクノロジーを活用して、社会課題の解決や多様な生活者ニーズに対応した商品やサービスを創出することが求められています。
YOMIKOはテックアイデアソンの提供により、サービスデザインによる価値創造、ビジネス創造の支援に取り組んでいます。テックアイデアソンのプログラム開発を行うデジタルマーケティングセンターの桐生克明とプログラム開発に参画いただいている(株)ニューロマジックの永井菜月氏がサービスデザインによるアプローチについて語り合いました。

サービスデザインとは?なぜ今、注目されているのか?

桐生:テックアイデアソンは、社会や生活者の課題発見、企業ミッションの再認識を通して組織内のイノベーション気質をボトムアップすることからはじまり、テクノロジーの進展を前提としたプロダクトやサービスをカタチにするまでをワンストップで支援するプログラムです。YOMIKO独自のアセットを活用したサービスデザインプログラムとして開発をしています。
ニューロマジックさんには特にサービスデザインのアクティビティに関するナレッジを提供いただいていますが、御社はサービスデザインで豊富な実績がありますよね。

永井 :当社は元々、1994年にウェブサイトの制作会社としてスタートしました。当時はインターネットがまだビジネスとして普及していないような時代でしたが、今やウェブサイトはオウンドメディアとして重要な顧客接点になりました。そんな状況の中で、そもそもビジネスが抱える課題やサービスの展開までを考えた上でウェブサイトがどのように機能するのかご提案したい、そう考えて始まったのがサービスデザイン事業です。
昨今の社会的な状況はサービスデザインのニーズを高めています。様々なテクノロジーやSNSによって、企業とユーザー、プロダクトとサービスといった、これまで分け隔てて考えられていたものの境界線が消え薄れつつあります。良いものを作るだけでなく、それをどう提供し、どんな価値を届けるのかといった、無形の価値についてもきちんと企業はデザインする必要に迫られています。そんな状況で、まさにサービスをデザインするという考え方は、現代の企業が抱える多くの悩みにアプローチする一手として、非常に関心が高まっていると考えられます。

桐生:サービスドミナントロジック(※1)の考え方といえますが、今あらゆる企業や組織において、イノベーションの核としてサービスまたは“サービス化“が重視されていますね。
様々な企業の新規事業部の方とお話していると、新しいプロダクトやサービスのアイデア出しを目的としたワークショップを実施されるケースが多いです。サービスデザインにおいても手法としてはワークショップを実施しますが、ビジネス課題からインタフェースまでを網羅したより体系的なアプローチと言えますよね。リサーチから実装までを一気通貫した連続的・統合的な取り組みとして実施することになります。

永井:サービスデザインは、ユーザーが抱える課題やニーズを炙り出し、その上でサービスや製品が提供されるまでに関わる人や物、場所、インタフェース等といった、サービスの流れにおけるあらゆるポイントを考慮し、カスタマーエクスペリエンスの設計を行います。具体的には、定量/定性調査を実施しペルソナやカスタマージャーニーの作成を行ったり、企業組織内のサービス提供プロセスを見直すためにブループリントの作成を行ったりします。
こういった考え方を体現する身近な例でいえば、カフェがコーヒーを提供するだけでなく店内を心地よい空間にすることで人気を博していたり、スマートフォンを展開する企業が関連アプリケーションまで開発し提供していたり・・・。現在成功している企業は、生活者に提供する「コーヒー」や「スマホ」など単体のサービスや製品だけを考えるのではなく、それを提供する空間や利用状況まで鑑みた、サービス全体、そしてそこでユーザーに提供される無形の価値、こういったことを注意深くデザインしているのがわかります。
こういったサービス全体の設計を、上記のツールを活用しながらデザインするのがサービスデザインです。

※(株)ニューロマジック ホームページより

桐生:ペルソナやカスタマージャーニーによるユーザー体験を起点とした課題発見のアプローチは一般的になってきているように思います。一方で、企業組織内のプロセスの見直しを部門横断的に推進することの方が難しいという状況もありますね。大きな組織では機能別に部門が編成されていてユーザーとの距離感がそれぞれ違います。さらにオープンイノベーションという流れにおいては、カルチャーや言語が違う企業や組織間で一つの目標に向かってプロジェクトを進行しなくてはなりません。

永井:そういった状況を打破するのが「デザインスプリント」という手法です。いくつかある流派によって元になっている思考は様々ですが、概括的には何か製品やサービスを開発したり改善する時に取り入れることができる3日〜5日間のワークショップ形式の手法です。この数日間の間に、課題を特定したり、ユーザーを理解したり、アイディエーション、そしてプロトタイプまで行うメニューが、数分単位で組まれているのが特徴です。
なかなかサービスデザインを社内で体現できる企業文化がない、といった場合に、短い時間でユーザー視点を理解し、サービスデザインの知識がない人も比較的参加しやすいメニューが多いのが特徴です。
ユーザー調査からそれを受けたアイデア創出まで短期間でできるデザインスプリントは部門横断的なプロセスの構築に非常に有効な手法です。

桐生:サービスデザイン、デザインスプリントの手法は「生活者発想」を基軸に企業や組織の事業を支援する我々のアプローチと非常になじみの良いものだと思います。
私たちはいわゆるユーザー・生活者視点に加え、都市生活研究所を中心に「都市」と「生活者」を互いに影響を与え変化するものとしてとらえ研究をしていることがYOMIKOのユニークネスだと考えています。デジタルトランスフォーメーションによってテクノロジーがその変化をこれまでになく大きなものにしていく状況において、課題そのものがわからない、つまり課題設定が課題となるケースが多くなっています。そういた状況において都市生活研究所のナレッジを活用し、課題発見の方法論を型化して提供しいきたいと思っています。
永井さんからみてYOMIKOとの連携プログラムに期待するのはどんなところになりますか。

永井:ここまでサービスデザインの考え方やデザインスプリントの魅力についてお話ししてきましたが、やはりデザインスプリントも手法であって、その手法を誰が、どのように使いこなすかによって出せる結果ももちろん変わってきます。比較的多くの人に取り入れやすい手法ではありますが、やはりより良いアウトプットを残すにはきちんと現状を理解し、その上で正しいユーザーにリーチし、そして発想されたソリューションを具体的に推進していくパワーも必要です。そういった意味では、都市生活研究所のリソース、そしてYOMIKOの総合的な事業支援の力によって、この手法はより実践的に応用できると思います。

桐生:テックアイデアソンでのニューロマジックさんとのパートナーシップにおいて、YOMIKOとしても新しい提供価値を創造していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

(※1)「サービス・ドミナント・ロジック(SDL)」とは、「モノ(有形の商品)」と「サービス(無形の商品)」を区別することなく包括的にとらえ、「企業がいかにして顧客とともに価値を創造できるか」という価値共創の視点からマーケティングを組み立てようとする考え方のこと。2004年に、マーケティング研究者であるロバート・F・ラッシュとステファン・L・バーゴによって提唱された。

桐生 克明

デジタルマーケティングセンター センター長代理

1996年読売広告社入社。営業としてPHS事業AE、FTTH環境でのコンテンツ配信実験を大学と協働し企画・運営。また、通信事業サービスの中期事業計画支援をコンサル会社と協働で担当。2007年からはデジタル領域に軸足をおきソリューション・統合プロモーションディレクターとして活動。自社開発ではスマートデバイスを活用した住関連向け営業支援ソリューション「スムスマート」開発等をおこなう。現在は、デジタルマーケティングセンターで新事業・サービスのUX・UIデザインのプロデュース業務に従事。

永井 菜月

株式会社ニューロマジック

サービスデザイングループ サービスデザイナー

2018年ニューロマジック入社。サービスデザイナーとして、ユーザーインタビューなどの調査企画・実施を担当。 また、アパレル企業の採用サイトや学習塾のパンフレットなど、調査結果を元にしたユーザー視点でのプランニングも手がける。
デザインスプリント開催時はファシリテーターとしても活動し、欧米向けに開発されたサービスデザイン・メソッドを日本企業向けにローカライズするなど、日英二か国語を活かし業務に従事する。