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2020.06.22
今や当たり前に使われている「ビッグデータ」や「IoT」など、様々なデータをビジネスに活用して企業のサービスを加速させようとする動きはとどまることがありません。
広告会社も例外ではなく、企業が保有する顧客データや各種ツールから得られる関連データなどの入手コストが下がり、より企業サイドに立った施策の検討が可能になっています。
言い換えると、企業からは「各種データを広告会社ならではの観点で正しく分析し、有効な策に落とし込む」ということがより求められるようになってきています。
また、今後オンラインとオフラインの境界がどんどんなくなっていき、日常生活のあらゆるデータが取得できるようになると、そうした需要はさらに高まっていくと考えられます。
しかしながら、データアナリストと言われる、データ調査 / クレンジング / 変換 / モデリング/ 分析 / 有用な施策の導出 が出来る人材は現在少数しかいません。
今後は、今の社会人がエクセルを使えるのと同じように、少なくとも最低限のデータ分析知識とスキルを誰もが持てるようになる必要があると考えています。
そこで、読売広告社における私たちのチームは、各種データの使い方の研究を日々進めています。
例えば、正しい広告効果測定で使える基本的な考え方として、統計学の手法で「差分の差分法」というものがあります。
ビール飲料メーカーを例に、ある製品で一定期間TVCMを出稿し、その前後で調査をすると5%から7.5%に認知度が上がっていたとします。
差分の2.5%が今回のTVCM出稿による純粋な効果かというと、もちろんそれだけではありません。
もしかすると、夏の季節でビールに対する消費者のニーズが高まっていることによる影響(トレンドの影響)かもしれませんし、1回目の調査結果が回収したパネルの偏りなどによってたまたま極端な値を取っていて2回目の調査結果で本来の数値に近づいた(統計学で言う「平均への回帰」が発生した)だけかもしれません。
つまり、調査1と2の間には広告出稿以外の第3の要因が絡んでいる可能性が多分にあり、その第3の要因を「交絡因子」と言います。
なので、本来であれば純粋なTVCMによる効果を測定するために、TVCM接触層と非接触層のパネルをそれぞれ偏りなく集めて調査し、調査前後の「TVCM接触層の認知率の差分」から「TVCM非接触層の認知率の差分」を差し引き(交絡因子による影響を除外)する必要があります。この考え方を「差分の差分法」と言います。
このように、データを扱うにあたって専門的な統計手法の考え方やその使い方を正しく理解することで適切なアウトプットを導き出すことができます。
交絡因子による影響の有無の確認や、要因と結果に対しての正しい相関関係なども導き出すことができます。例えば、広告施策をX、得られる結果をYとしたとき、以下のような関係性が考えられます。
広告施策Xと結果Yに対して交絡因子が存在し、それぞれに影響を与えている場合もありますし、交絡因子ではない別の因子(中間因子)が結果Yに対して影響を与えているケースもあります。
例えば、ECサイトを運営する広告主に対して、TVCMを実施した場合のTVCM出稿施策をX・売上をYとします。
Xを実施したことによって認知者が増え、興味関心を持つユーザーが増える、それによってツイートや検索する人が増え、サイト流入が増し最終的に一部の人が商品を購入、売上Yが増加するという流れが考えられます。
この時、Xによって数値的変化があり、かつYに影響を与える「認知ユーザー数」「興味関心ユーザー数」「ツイート数」「検索数」「サイト流入数」といった要素がXとYの「中間因子」となります。
また、要因(説明変数)と結果(目的変数)に対してどういう因子が存在する可能性があるのか、また、因子を含めて結果にどのような影響を与えるか、データ分析によって明らかにすることができます。
下記はデータ分析でよく使われる手法の一覧となります。
私たちのチームではこうした分析手法を正しく理解し、対象データや広告施策などのタイミングに応じて正しく使い分け、広告主が求める根源的な要因 / 各因子の相関性 / 目的変数の正しい導出に注力しています。
直近の事例でいいますと、美容系メーカー様にてMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)や共分散構造分析(SEM)のご支援・ご提案をさせていただきました。
MMMでは、各種広告施策とその他の季節性や競合出稿などのビジネス変動要因が、契約数や検索数といった目的変数にどのような影響を及ぼしうるか、過去のアクチュアルデータをもとに時系列解析を用いて明らかにし、広告施策によって得られる効果の可視化と広告予算の最適配分を導き出しました。
また、共分散構造分析(SEM)では、TVCM出稿後の調査結果をもとに、TVCMのクリエイティブ要素(サービス内容が明確 / 著名人を使用している、等)が企業の認知や好意にどれくらい影響を与えているかを構造解析し、各要素(因子)の相関性および相関係数を明らかにしました。
それによって、クリエイティブのどんな要素が効いているのか客観的なデータをもとに判断ができ、次回以降の改善に繋げることが可能です。
その他においても、飲料メーカー様に対して、直近の購買データ(リーセンシーデータ)からNBDモデルを活用した購買数の予測モデルの構築など日々取り組ませていただいております。
データ分析はあくまで企業の課題を解決する一手段にすぎませんが、冒頭で述べたように今後データの重要性がますます高まっていく中で非常にキーになっていく領域であると考えます。
今井 大輝
営業戦略推進局 デジタル戦略デザイン部
1992年生まれ兵庫育ち。2016年からSIer企業にてAIやIoT、ビッグデータに関連したソリューション営業・開発を経験したのち、2018年に読売広告社入社。
前職での経験や知識を活かしつつ、デジタル×マーケティング領域での戦略立案からデータ分析やサイト分析、MA・BIツールの活用、デジタルメディアの提案まで幅広く従事。