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2024.11.15
~YOMIKOデジタルコンサルティングセンターが始動~
2024年4月、YOMIKOで新たに発足したデジタルコンサルティングセンター。
AIなどの最新のデジタルテクノロジー、マーケティング、クリエイティブの豊富な経験値とデータを武器に、企業の未来を共にデザインし、ビジネス変革の提案や企業成長を支援する組織です。YOMIKOならではのアプローチと今後の展望について、デジタルコンサルティングセンターの立田真一郎、木村朋子に聞きました。
― 2024年4月に新しく「デジタルコンサルティングセンター(DCC)」が立ち上がりました。どのような組織なのでしょうか。
立田:クライアント企業が抱えている課題やビジョンの実現、そしてVUCA時代おいて、未来志向型の経営を目指していくために、未来「創造」「予測」「探索」をテーマに、テクノロジーを活用し最適解を提案することが我々のミッションです。またテクノロジーの活用以外にも、達成すべきゴールに対して様々なデータを利用し、クライアント企業の課題解決に取り組んでいます。
デジタルコンサルティングセンター(DCC)の提供価値
具体的なコア機能としては、ストラテジー、データ、クリエイティビティの融合を立脚点に、デジタル領域の戦略立案から実装、実行までをワンストップでサポートすることです。また、技術革新を背景に、これまでの常識とは一線を画したクリエイティビティの探索や、そのクリエイティビティを具現化するためのクリエイターとエンジニア人材も揃えています。これにより、広告会社らしいアジャイルで、MVP型の支援ができる組織になっています。
例えば、生成AIを活用し、新しい企画の創出を支援するアイデア創造アプリケーション「ミライアイデアcreation」を自社開発しリリースしました。このアプリケーションは、当社が広告主に行うマーケティング支援を目的に開発しており、人間のクリエイティビティの拡張を支援し、提供価値の向上を目指しています。
―「デジタルコンサルティングセンター(DCC)」は立ち上がった理由・背景を教えてください。
立田:昨今デジタルとAI技術の急速な進化を背景に、企業が求めるニーズが大きく変化してきています。過去は「要件に合った戦略やクリエイティブ」を提案・実現をすれば良かったものが、今は「戦略全体を見て最適化を行い、より付加価値の高い提案」が求められつつあります。それに応えられないと、お客様のパートナーとしての存在価値を失いかねないと思いました。
そこで今まであったデジタル領域を取り組む組織を再編し、時代に即応できる専門部隊が立ち上がりました。
― どのような体制なのか教えてください。
木村:少数精鋭の3つのグループで成り立っています。それぞれのグループは、『AI×ストラテジー』『AI×クリエイティブ』『AI×データビジネス』とAIという共通テーマを持ち、それぞれ異なる専門性を持っています。
各チームが持つ専門性が相互に連携がされることで、最大のシナジーを発揮できる組織体制になっています。
木村:さらに、私たちのチームは、20代の若いメンバーが中心となって構成されています。
特にAIの分野では、最新情報がほんの数日で古典になるケースもあります。そうしたスピードに迅速な対応ができるのは、フレッシュな視点を持つ若手ならではの強みです。常に情報収集して、クライアント企業の期待に応える活動をつづけていくことを心がけています。
また、現在技術革新によってあらゆる分野が、目まぐるしく変化するダイナミズムの時代です。相互作用によって事業の競争力に影響をもたらす、複雑な事業環境のため、偏りなく、広い視野、多角的な視点からアプローチしていくことを、重要視しています。
― デジタルコンサルティングセンター独自のソリューションはありますか?
立田:新しい技術や、ユニークなアイデアが詰まった、独自開発のデジタルソリューションをコンスタントにローンチしています。
AI動画生成ソリューション『aivon(アイボン)』は、AI技術をもちいることはさることながら、クリエイティブ制作プロセスそのものの変革にアプローチをしています。これにより、大規模なパーソナライゼーションの実現につながっています。
「aivon(アイボン)」動画イメージ
また、人的資本経営推進の観点から、社員のスキルや人脈をデータで可視化して企業内のチームビルディングを支援するアプリケーション も自社開発しました。現在社内インフラ基盤として運用をしており、対外的に提供もしています。
業内のチームビルディングを支援するアプリケーション画像イメージ
しかし、ソリューション開発は結果論です。
パッケージ化したソリューション開発を推進することが目的ではなく、課題の解決手法をゼロから創造し、社会実装できることが重要であり、その結果柔軟な課題解決力の発揮に繋がると考えています。
またあるクライアントへは、AIを活用して効率的に精度の高い売上予測値をつくる取り組みをしています。
目的は組織の意思とAI予測を融合させ、未来予測型の経営を実現することでした。データサイエンスのみならず、事業構造の理解、外部環境の変化に対する洞察、それを元に経営を改善する必要がありますから、各種の考察であったり、アクションプランに対する造詣と実行能力も必要です。私たちが実現したいミッションを体現した、よい一例だと思っています。
― AI領域におけるYOMIKOならではの強みを教えてください。
立田:YOMIKOとして掲げているAI観は、博報堂DYグループが掲げているAI観と同じで、「人間中心のAI(Human-Centered AI:HCAI)」というものです。人間中心のAIとは「人間の能力や体験を向上させるためのAIの活用」ということです。
この人間中心のAI観の対極にあたる代表的な論調が、「人の仕事はAIに置き換えられる」というものです。私たちが推進しているAIは、置き換えではなく、人間が中心におかれ「人の能力を拡張したり、人がより幸福になるためにAIをどのように活用するか」という点が出発点になっています。これが我々の確固たる信念であり、強みのひとつです。
YOMIKOに相談すると何ができるかと問われれば、「人がやっていた仕事をどのように置き換え、省人化するか」ではなく、「マルチなステークホルダーが、より幸福になるための戦略を立案し、その手段としてAIを開発・実装が可能」となります。
そのために必要なあらゆるケイパビリティを総動員させ、さまざまな要望に応えることが私たちにはできます。
パッケージ型のソリューションを提供するだけではなく、クライアント企業の課題や実現したビジョンに合わせて、社内はもちろんのこと、外部のパートナーとのアライアンスを組んで、解決にあたることが可能です。こうした柔軟性を備えているのも、広告会社だからこそです。
さらにYOMIKOならではの強みは、広告会社として、豊富な生活者のインサイトを持っていることです。「AIと人との最適な距離感」は、まさに刻一刻と変化しています。
AIとの距離が近すぎたり、離れすぎたりすることによって、人の感情にはゆらぎが発生します。AIを用いたことによる「炎上」も、ゆらぎの一つです。
AIと向き合う際に、人間を中心に、意識や感覚といった感性的な部分を最も大事にしていきたいと考えています。
感性的に考えていくと、技術的に可能であることと、社会的に受け入れられることの間には、極めて大きな隔たりがあります。その観点から適切にAIを把握できているという点が、YOMIKOの大きな強みだと思います。
木村:AIトレンドは日々追って検証をしていますが、AI技術、フレームワーク(安全性、規格、ガイドライン等を指す)といった技術的な見地から、どうやってAIを活用していくのか?という観点だけでは不十分です。技術的には実現できても、人間の感性的に、あるいは今の社会に適切なのかどうかの洞察を深めることが、とても大事だと感じます。
私たちは海外動向を含めて最新の状況を見ているので、実証段階レベルの技術から、実装を構想してから、世に送り出すまでのリードタイムの間におきる社会変化も想定しています。
そうした観点から、私たちが推進しているアプローチとして、完成形ではなく、あくまでアップデート可能なミニマムプロダクトをスピーディーに作るMVP開発にフォーカスしている点も、YOMIKOの特徴だと思います。
今後も、これまでにない新しい価値提案や、ソリューション開発、ビジネスモデルの提案・実行といったスピーディーかつ付加価値の高いご支援体制を築いてまいります。
― AIやテクノロジーの最新情報を収集しているなかで、注目しているトレンドはありますか?
立田:AI活用の点でいえば、企業がPoC(概念実証)フェーズから実践フェーズへと移行していることが挙げられます。これまではAIを使って小規模な実験を行い、可能性を探る段階が中心でしたが、今はその成果をビジネスに組み込み、競争優位の確立に向けた活用が進んでいます。
活用が進んでいる理由は、単純にPoCが成功しているという側面だけではなく、AIを活用するためのガイドライン整備が進んでいる点、そしてAIの開発を支援するためのアプリケーション開発プラットフォームが大幅に強化され、より簡単に取り扱える周辺環境が整ってきたことが大きいとみています。
さらに、注目すべきは、特定業界に特化したAIソリューションの発展です。コンタクトセンター向けの会話型AIや、創薬分野における分子構造を予測するAIなど、業界ごとのニーズに対応したAIが急速に発展しています。これにより、各企業は自分たちの固有の課題に合わせてAIを導入し、具体的な成果を上げやすい状況が生まれているのです。
こうした企業活動の結果として、最終的には、企業が提供するあらゆる機能やサービスへのアクセスインターフェースをAIが担う未来が訪れるでしょう。言い換えれば、AIがユーザーとサービスをつなぐ“エージェント”としての役割を果たす時代が近づいています。
これまで、広告会社が求められていた役割は、生活者視点で戦略、クリエイティブ、そしてメディアをデータによってつなぐエコシステムを作り上げることでした。
しかし、今後AIがインターフェースとしての役割を持つ“エージェント”の時代に突入することで、AIエージェントと調和をとり、自然に機能させるかが新たなチャレンジとなります。
この新たな課題をいかにクリアするかによって、ブランドと生活者の関係性や、ビジネスの価値をどのように創造できるかが決まってくると思います。
木村:私が個人的に気になるテーマは、人の感情や気まぐれのような意思決定プロセスをどうAIが予測していけるようになるかです。
その予測が可能になると、これは本当に広告業界に革新が起きるだろうと考えています。これまで定量・定性調査で予測していた特定ターゲットの感情をAIが予測できるようになれば、業務プロセスが大きく変わるでしょうし、予測・企画・制作・実施・検証・改善のサイクルが確立されると思います。
今後、広告会社として、人が考え抜くところの濃度を上げていくことが求められるはずです。なんだか恐ろしくもありますが、いずれ近い未来に到来するだろうという気がしています。
私たちもそうした今後訪れるであろう変化に対応するため、AIと協業してより付加価値の高い提案をしていくかを真剣に考えていかなければなりません。そうした意味では、何か特定のフェーズだけ効率化するソリューションを開発するというより、全体の流れをどのように予測し最適化していくか、広告会社のバリューチェーンにAIをどう組み入れていくかが問われていると思います。
― 最後に今後の展望をお聞かせください。
立田:AIを含むデジタル領域で、博報堂DYグループの一翼を担ってイニシアチブを発揮していきたいと考えています。デジタル活用がビジネスにおいて不可欠となるこの時代、YOMIKOの役割は単なる支援にとどまりません。我々は、独自の先進的な取り組みを通じて、これまでに培った人財と実績を結集し、クライアント企業のニーズや課題に対して最適な解決策を提供していきます。
「AIを活用したいけど、何から手をつけるべきかわからない」「データを軸にしたビジネスにシフトしたいが具体的にどのようなアプローチが必要か」というご相談でも構いません。企業の価値向上に向けて、戦略的な提案か実行支援まで一貫して推進していきます。
木村:この時代、当社を含めて多くの企業が「この先どうなるのか」という漠然とした不安を抱えていると思います。先を読むことが格段に難しくなっているなか、その不安を払拭していくには「一歩ずつ着実に未来を創りながらアップデート」していくしかありません。
YOMIKOはGAME CHANGE PARTNERというビジョンを掲げていますが、それはまさに「クライアント企業と一緒に未来を創っていく」パートナーです。未来創造に向け常に進化を続けているので、その知見をお客様と共にアウトプットしていきたいと考えています。
(終)
立田 真一郎
読売広告社 デジタルコンサルティングセンター センター長
デジタルストラテジスト
2013年読売広告社入社。 最先端のデジタルとストラテジックプランニングを活用した、マーケティングならびにDX支援業務を担当。事業戦略支援、マーケティング、プロモーション、CRM設計、MA活用など、幅広い領域において実施計画の策定実績多数。オリジナルの広告配信手法等、自社ソリューション開発も多数手掛ける。
木村 朋子
読売広告社 デジタルコンサルティングセンター デジタルコンサルティングルーム ルーム長
AIクリエイター
2009年読売広告社入社。営業、ダイレクトマーケティング、デジタルマーケティングにおける戦略立案、データ分析・MA活用などの幅広い領域を担当。2021年度から、デジタルのクリエイティブを担う、パフォーマンスクリエイティブチームの立ち上げに参画。現在はデジタルコンサルティングルームのルーム長を務めながら、AIと協業しながら新たなクリエイティブの企画・制作やソリューション開発を手掛ける。