YOMIKO STORIES
2024.12.24
Path for Community Creation〜コミュニティクリエイションへの道〜(2)各ステークホルダーと連携し、世の中に新しい価値を提案する
YOMIKO独自の価値創造モデルである「コミュニティクリエイション®」をどのように実践しているのか、4つの注力領域の担当者に、それぞれの実務の視点から語ってもらう「Path for Community Creation〜コミュニティクリエイションへの道〜」。
第2回は、マーケットコンサルティングセンターの小島正子と菊池真由の2人に話を聞きました。
社会や生活者を起点とした課題の発見
― 初めに、それぞれが担当する事業領域の説明をお願いします。
小島:私たちが所属するマーケットコンサルティングセンターでは、クライアント企業のビジネス変革を実現するための仮説や戦略を生み出すことをミッションとしています。
菊池:近年は、先を見据えた打ち手がわからないといったご相談も多くあります。そのため、まだ顕在化していない課題そのものを私たちが掘り起こしたり、その解決策を企業様自身が考えるプロセスを支援したり、といったことにも取り組んでいます。
― ご担当されている事業領域で、気になっているトピックがあれば教えてください。
菊池:食品飲料業界からご相談を受けることが多いのですが、業界は今、大きなマーケット環境変化の中にあると感じます。具体的な変化としては、①人口減少や高齢化・単身世帯の増加など人口動態上の変化 ②完全栄養食やサステナブル食材などおいしさ以外の新たな争点の登場 ③食にもタイパを求めるなど生活者が食に求める価値観が変化 ④宅配サービスや異業種専門店の参入など多様なプレイヤーの登場、などがあげられます。
小島:こうした多様な変化を踏まえると、商品やサービスの特徴を訴求して生活者の気持ちを掴むといった従前の短期的な戦略だけでは足りないなと感じます。いま必要なのは、マーケット全体を俯瞰して見つめ、どのように生活者をはじめとするステークホルダーとの中長期の関係性を構築し、事業そのものをサステナブルなものに作りかえていくか、なのではないでしょうか。
その意味で、これから生活者がどうなっていくかなど、企業様が普段の業務の範囲ではなかなか考えられない未来予測を先まわりして情報収集し、プランニングの基礎材料にすることも日頃から心がけています。
すべてのステークホルダーに、新たな視点を
― 「コミュニティクリエイション®」につながる取り組みもあるのでしょうか?
小島:食品業界において、「食卓における47都道府県の嗜好の違い」に着目し、その違いをうまく活用することで、「メーカーや商品」と「生活者」の結びつきをより強く、中長期的でサステナブルなものにしていくサービスパッケージを提供しはじめています。
菊池:これまで食品業界では、テレビCMなどの広告を通じて商品を生活者に向けてアピールし、流通商談を通じて商品を店頭に並べていただき、販促プロモーションなども併用して「売りたい商品を売っていく」という環境を作るのが一般的な手法でした。ですが、それだと“一方的な押し売り”になってしまうことも多く、時間が経つと店頭から消えてしまう、というサイクルをたどることも多かったと思います。
小島:この既存のコミュニケーションに、コミュニティクリエイションの概念を取り込み、これまでとは違った座組でゲームチェンジを起こすことができないか。そう考えたのが、今回のサービスパッケージ開発のきっかけです。具体的には、47都道府県ごとの食嗜好の違いに着目した「おうち料理調査(定量調査)」を全国約5,000人規模で実施、そこで発見されたエリアによる食嗜好の差をコアコンテンツとすることで、「生活者×流通×メディア×企業(商品)」の四者それぞれが気づきを得たり活用したりすることができ、商品はもちろん地域までも活性化できる仕組みを設計しました。
―エリアによる食嗜好の差、というのは具体的にはどういうことなのでしょうか。
菊池:食の地域差から思い浮かぶのは郷土料理や特産物だと思うのですが、実は家庭料理においても地域差があります。今回の調査から、例えば、広島県民はステーキが好き、京都府民はピザが好き、埼玉県民はムニエルが好き、といった事実が浮かび上がってきました。
ただ、こうした地域差は「灯台もと暗し」のようなもので、意外に、その土地の県民の方はご存知なかったりします。そのため、生活者(県民)も認識していない意外な事実を知ることで、自身のエリアの意外ともいえる特徴に関して興味持ち、商品が関連するカテゴリへの積極的な関与を引き出すことにつなげることができます。
また、この食嗜好における地域差、という“意外性のある情報”は、生活者のみならず流通やメディアにとっても「興味深い情報」として、店頭や番組の情報コンテンツとして活用いただくことができます。地域の盛り上げ材料になるイメージをしていただけると良いと思います。
小島:つまり、「おうち料理調査」という新たな情報を起点に、その地域の特徴を盛り上げながら、生活者×流通×メディア×クライアント企業のみなさんがwin-winになる「三方よし」の構造をつくることができ、それがひいては地域の豊かな食生活をサポートすることにもつながっていくことになるということですね。
―すでに具体的な実施例があれば教えてください。
菊池:実際に、大分県で実施した万能ソースのプロモーションなどが分かりやすい事例として挙げられます。
このプロモーションでは“大分県民は牛肉をよく食べる”という「おうち料理調査」の結果をもとに、万能ソースに「ステーキに使えるソース」という新たな価値を持たせて訴求。店頭でステーキ肉と万能ソースのクロスマーチャンダイジングを実施するとともに、インフォマーシャルを県内で放映するなど、生活者に驚きとともに調査結果を伝えられるような仕掛けをつくりました。流通やメディアの皆様から面白い情報と取り組みであると評価いただき、結果、商品の売れ行きも大変好調だったとお聞きしています。県民のみなさんも、自分たちの知られざるを一面とともにステーキソースを楽しく召し上がっていただけたのではないかと思います。
小島:乳製品のケースもご紹介しましょう。乳製品を料理に使っていただくために、埼玉では卵と、東京はパスタと、神奈川はエビと、といった具合に、各都道府県の食卓によくのぼる食材とのコラボレーションレシピを考案し、商品と生活者の新たな出会いを提供しました。このケースでは各エリアの推しレシピ一覧をラインアップでご紹介したこともあり、いろいろな気づきや楽しさがあったと好評をいただいています。ここには、縦長の日本だからこそ、「エリア差」をうまく活用するスモールマス発想でマーケットを攻略することの面白さがあるように思います。この成功体験を水平展開し、エリアごとに生活者や流通・メディアとのコミュニティをクリエイションしていけば、おのずとサステナブルな事業運営が見えてくるのではないでしょうか。
「コミュニティクリエイション®」は、全員が主役になれる仕組み
―今後、 「コミュニティクリエイション®」をどのように実践していくのでしょうか?
小島:「おうち料理調査」は、いわば“単なるデータ”に過ぎないので、そこから何を掘り出して、どう面白くするか。どう戦略設計・アクティベーション設計ができるかが成否のカギを握ります。生活者、流通、メディア、そして企業にとって、どうすれば新鮮でユニークな価値創造と感じていただけるか。チームメンバー全員で、これからも知恵を絞っていきたいです。
― 流通やメディアなど、他の領域との関わり方にも変化がありそうですね。
菊池:そうですね。従来のプロモーションでは、一方通行の流れが主流でした。しかし、「おうち料理調査」はネタとして扱いやすいので、テレビ局も自発的・能動的なアクションがしやすくなると思います。また、スーパーにとっても、自分たちの店舗に来た生活者(お客さま)に気づきを与えて、お買い物を楽しんでもらう方法を考えやすくなります。「おうち料理調査」によって、全ステークホルダーが課題を自分ごと化し、主役になる座組みが作れるのではないかと期待しています。
世の中に「幸せ」の総量を増やしていきたい
― 「コミュニティクリエイション®」で実現したい未来を教えてください。
小島:今回お話した「おうち料理調査」では、食の地域差をコアコンテンツとしましたが、料理以外にもコアコンテンツの着眼点はいろいろあると考えています。さまざまな着眼点から、多様な業界でステークホルダーを結びつけ、世の中の「楽しい」「ためになる」「幸せになる」総量を増やすことにチャレンジしていきたいですね。
菊池:食の地域差という着眼点で調査を進めて、地域に寄り添って何かを発信していくことの大切さを改めて感じました。今後は調査のみならず、弊社の「CIVIC PRIDE®」や自治体とのコネクションも活かして、各地の生活の質を上げるお手伝いがしたいと考えています。
(写真右)小島 正子 マーケットコンサルティングセンター
(写真左)菊池 真由 マーケットコンサルティングセンター