YOMIKO STORIES
2024.12.24
事業と社会の新たな関係性を生み出す“ソーシャル・アプローチ”とは? ~「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」レポート第1弾~
2024年11月21日、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー「TOKYO NODE HALL」にて「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」が開催されました。これは、YOMIKOが2024年に掲げた独自の価値創造モデル「コミュニティクリエイション®」に基づいて様々なプレイヤーをつなぎ、事業課題や社会課題の解決を図る事例を紹介するイベントです。本フォーラムからのレポート第1弾として、都市生活研究所 所長 城 雄大が登壇したオープニングセッション「事業と社会の新たな関係性を生み出す”ソーシャル・アプローチ”とは」をお届けします。
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「コミュニティクリエイション®」によって 社会課題解決と事業成長を目指す
2024年にYOMIKOが中期経営計画で新たに掲げた価値創造モデル、「コミュニティクリエイション®」。これは、ビジネスと社会のサステナブルな成長のためにクライアントとともに変化へと挑戦する「GAME CHANGE PARTNER」としての姿勢を明確に打ち出したものです。この新しい提供価値に基づき、今期は従来の「都市生活研究所フォーラム」からさらに進化した「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」を開催することになりました。
フォーラムのオープニングセッションで登壇したのは、都市生活研究所 所長 城 雄大。社会課題の解決にアプローチする世界的な潮流である“ソーシャル・アプローチ”の概要について基調講演をおこないました。
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様々なレイヤーで社会課題への取り組みが加速している現在。そんな中で、企業や事業が社会課題に取り組む意味とは何でしょうか?公演冒頭、城氏はそのように問いかけました。
「いま起きている様々な社会課題は、私たちの日常を確実に変えつつある『社会のあり方』の問題です。そして、この社会こそがあらゆるマーケットの大前提である以上、生活者の暮らしが健全で豊かでなければ、企業や事業の成長はありえないのです」
ただ、社会課題は複雑化の一途を辿っているため、行政が単独でそのすべてに対応することは物理的に不可能です。そこで、様々な知識と経験を持つステークホルダーをネットワークでつなげていくことが今まさに必要なのだと城氏はいいます。
「多様な連携による異なる視点の掛け合わせや補完関係、いつもとは違うメンバーと働くことから生まれるモチベーション。それらが、これまでにない創造的なチームを生むことにつながっていくんです」
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様々なステークホルダーと協力し合いながら、共に社会課題の解決を目指し、新しいコミュニティをつくり出していく。そうしたアプローチ手法をYOMIKOでは「コミュニティクリエイション®」と呼びます。具体的には、各プレイヤーが持つ多様な視点やケイパビリティを組み合わせることで、長期的な課題解決を通じて社会と事業の成長を目指していくというもの。城氏は、こうしたコミュニティ形成による成長戦略がいま世界中で始まっているとして、スペインのバルセロナ市で行われている事例を複数紹介しました。
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バイク事故につながる危険箇所を“見える化”する 「MAPIT CARE」
バルセロナは、人口163万人を擁するスペイン第二の都市です。外国投融資戦略ではEU内で1位の評価を受け、同じくEU内におけるスタートアップ拠点としての人気は第3位。その成長戦略に世界中の注目が集まっている都市だと城氏はいいます。
まずはじめに紹介されたのが、より豊かな暮らしに向けたイノベーション生み出すために立ち上げられた組織「bit habitat(ビットハビタット)」の事例です。バルセロナ市が出資をおこなう同組織は、様々な社会課題の解決に向けて民間企業やアカデミア(大学などの研究職)、スタートアップなどをつなぎ込み、社会実装に向けたプログラムの提供とプロジェクトマネジメントをおこなっています。
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ビットハビタットの代表的なプロジェクト「MAPIT CARE」について、城氏は次のように解説します。「バルセロナは、バイクの利用が非常に多い都市としても有名です。その利用率はヨーロッパでトップである一方、バイク事故の多さが非常に大きな社会課題になっています。その問題に対して行政とビットハビタットが連携し、課題解決に向けたサービスのアイデアを公募しました。そこで採択されたのがMAPIT(マピット)社の『MAPIT CARE』になります」
同プロジェクトでは、バイクに搭載されたセンサーで危険箇所を「見える化」し、その情報を市の道路整備にも活用するという活動をおこなっています。中でもビットハビタットが行政およびアプリ開発会社、各種外郭団体、一般市民とのハブとなり、一緒になって実証実験を推進しているところだといいます。
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産官学で共創する研究教育拠点 「FAB LAB Barcelona」
バルセロナにおける2つ目の事例として紹介されたのが、建築系の大学院が運営するFAB LAB Barcelona(ファブラボ バルセロナ)が推進するプロジェクト。ファブラボは、産官学で共創していく研究教育拠点であり、学生と市民をものづくりやワークショップなどの活動を通じてつなぎこみ、多種多様なプロトタイプづくりやリサーチをおこなう組織です。
「ファブラボが面白いのは、その活動を単なる『ローカルな試み』にとどめておかない点にあります。世界中に何百、何千箇所というネットワークを張り巡らせ、それぞれが連携しながらグローバルにマーケット展開していこう、という野心を持った組織です(城氏)」
同組織が推進するプロジェクト「FOOD Shift 2030プロジェクト」についても、城氏は次のように紹介します。
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「これは『持続可能な食文化の創造』や『肉中心から植物食材へのシフト』、『フードロス削除』、『都市農園』などの”食”をテーマにした課題に市民が積極的に参画し、主導していくプロジェクトになります。”具体的な日常行動から着実に変えていこう”という意志を持つ、いわば運動体ともいえる活動だといえます」
ここでも多くのコミュニティメンバーが多様なワーキングを通じてつながり、知恵とアイデアを出し合っているのだといいます。
最後に、城氏は最近バルセロナで参加したというスマートシティに関する世界最大の展示会と国際会議について紹介をおこないました。
「このイベントは、数年前まで『再生可能エネルギー設備や都市OSなど次世代インフラの見本市』という色合いが強かったのですが、今回はここで多様な連携をつくり、社会と経済の新しい成長を目指す、というイベントへと大きく進化していました。そこでは『LIVE BETTER』という根源的なテーマが掲げられ、毎日たくさんのセミナーが開催され、議論が行われていました」
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「ソーシャル・アプローチ」によって 事業成長への課題を“暮らし目線”で発見する
城氏によれば、ヨーロッパ各国はもちろんのこと、中東やアジア圏からも多数の国が積極的に参画しており、政府や自治体によるブースやプレゼンテーションが数多く展開されていたのだといいます。
「今回、多くの国がキーワードとして挙げていたのが『Co-Creation』、『Partnership』、『Ecosystem』の3つでした。それぞれの立場や業種、国までも超え、次の成長に向けて新たなモデルとプログラム、そしてネットワークを築こうとする、非常に活気に満ちたイベントだと感じました」
生活者や企業、社会課題を解決するためのコミュニティのあり方には多種多様な可能性があります。ただ、その中でも企業がよりダイレクトに社会につながるためには行政やNPO、そして何よりも市民たちとコミュニティを形成し、次の成長を目指す必要があります。YOMIKOではそうした手法を総称して「ソーシャル・アプローチ」と呼んでいる、と城氏は話しました。
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ソーシャル・アプローチをおこなえば、事業成長への課題やソーシャルインサイトを「暮らし目線」で発見できるようになります。また、社会課題の解決と新たな事業構築へ向けた連携体制や仲間づくりが、どんどん広がることにもつながります。
城氏は、そういった仲間たちと開発した「新しい商品」「新しいサービス」「新しいビジネスモデル」を暮らしのリアルな現場である”実社会”で実証実験をおこない、実装していくことがより可能になっていくと思うと述べました。
GAME CHANGE PARTNERを目指すYOMIKOとして、多くのクライアント企業や自治体の皆様と一緒にこれからの成長のあり方について考えていきたい。城氏は、今回のフォーラムをそのための貴重なきっかけにしたい、と話を締めくくりました。
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城 雄大(じょう たけひろ)
都市生活研究所
所長
1999年 読売広告社に入社。マーケティング・プランニングの部門を経て、2011 年より都市生活研究所に所属。主に地域の再開発に関するコンセプト開発 商品企画や都市と生活者のインサイトに関する研究などを手掛ける。大学時代に学んだ民族学での「フィールドワーク視点」を大切に研究を続ける。東京大学大学院 新領域創成科学研究科スマートシティスクール修了