YOMIKO STORIES

まちと事業の課題を解決する市民連携プロジェクト 柏の葉スマートシティ×明治「ヨーグルトで街に未来をプロジェクト」

~「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」レポート第2弾~

 2024年11月21日、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー「TOKYO NODE HALL」にて「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」が開催されました。本フォーラムからのレポート第2弾として、三井不動産株式会社 (以下、三井不動産)柏の葉キャンパス 街づくり事業推進部 主事兼 一般社団法人UDCKタウンマネジメント コミュニケーション部 小林 悟氏と、株式会社 明治(以下、明治)発酵マーケティング部プロバイオグループ長 堀越 槙吾氏、YOMIKO ビジネスデベロップメント局 高橋 比香理が登壇した柏の葉スマートシティ×明治「ヨーグルトで街に未来をプロジェクト」についての詳細をお届けします。

“世界の未来像”をつくる街として開発された 「柏の葉スマートシティ」

「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」のメインセッションPart1‐1に登壇したのは、プロデューサーとして「公民学」連携のプロジェクトの推進や、タウンマネジメントなどを担当する高橋 比香理。本セッションでは「世界の未来像」をつくる街として、今も発展を続ける「柏の葉スマートシティ」でおこなわれた住民の健康増進活動をサポートする取り組み「ヨーグルトで街に未来をプロジェクト」が紹介されました。 

 セッション冒頭、高橋は企業が地域の多くのステークホルダーと共に、より健康な暮らしを目指してイノベーションに取り組む全国でも先進的な取り組みであるとして、本プロジェクトの概要を説明しました。

「このプロジェクトは、これまで公民学連携で健康長寿に取り組んできた『柏の葉スマートシティ』と、ヨーグルトをはじめとする食習慣の改善に取り組んできた明治さんが共創するプロジェクトです。この活動を柏の葉エリア内で閉じることなく、ヨーグルト自体が持つ健康価値の向上を図ることも本プロジェクトの狙いのひとつでした」

 続いて、柏の葉スマートシティのデベロッパーである三井不動産の小林氏と、本プロジェクトの推進企業である明治の堀越氏が登壇。まずは小林氏から柏の葉スマートシティの概況が語られました。

柏の葉スマートシティの立地は、つくばエクスプレスの「柏の葉キャンパス」駅を中心とするエリアであり、都内までのアクセスは快速列車で30分。周辺には東大、千葉大、国立がん研究センターなどの国内有数の研究機関が点在していることが特徴です。また、つくばエクスプレス開通前年の2004年に更地からスタートしたため、文字通り「ゼロ」から開発された街です。

 まちづくりのコンセプトは、課題先進国日本から「世界の未来像」をつくること。柏の葉スマートシティは、ゼロから立ち上げられたため「街固有の課題」が存在しませんでした。その代わり “日本が抱える課題を、まちづくりを通して解決していこう”という思いが出発点にあると小林氏はいいます。

三井不動産 小林 悟氏

 一例を挙げると「ららぽーと柏の葉」の施設内につくられたまちの健康研究所「あ・し・た」では、現在3,700名ほどの健康意識の高い住民とコミュニティをつくり、様々な健康情報を発信しています。また、各種アカデミアや公民学と連携し、「生涯健康で暮らせるエリア」のモデルケースの実現と、「新たな医療産業が生まれ育ち、世界へと発信していくエリア」を目指す「ライフサイエンス拠点化構想」を持っているのだといいます。

 まちづくりのスキームとしては、まちづくり推進のための中枢機関を設立。それが柏市や首都圏新都市鉄道、柏商工会議所、田中地域ふるさと協議会(住民による組織)、東京大学、千葉大学、三井不動産と、多くのステークホルダーが集結してできた「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」です。UDCKでは月に一度、駅前の施設で話し合いを重ねながら街づくりを推進してきたと小林氏はいいます。

「いろんな主体が関わっているため、同じ方向性を目指せるようにまちづくりのビジョンを決め、それを随時更新しながら進めています。中でも特徴的なのは、公民学連携であること。そこでのキーとなる存在がUDCKになります。そうしたつながりを基に一般社団法人『UDCKタウンマネジメント』を設立し、多くの組織がここでゆるく繋がりながら街づくりをおこなっています」

多種多様なステークホルダーを繋ぎ込む 「UDCKタウンマネジメント」

 そんな柏の葉スマートシティが街づくりのテーマに掲げているのが「環境共生」「健康長寿」「新産業創造」の3つであり、今回の明治との共創プロジェクトは、健康長寿の課題への取り組みになります。

 小林氏は、同スマートシティが抱えていた課題について次のように述べます。「三井不動産は、不動産業が中心なので健康長寿の取り組みは専門ではありません。だからこそ、様々な方々と協力しなければ実現は難しいと感じていました。また、テーマの性質上、高齢者中心の取り組みに偏っていたことも課題でした」

 次に、明治の堀越氏が「ヨーグルトで街にミライをプロジェクト」立ち上げの背景とヨーグルト事業全体の課題感について次のように話しました。「当社は創業時から『栄養豊国』の精神を持ち、みなさまの健康への貢献を掲げてきました。そうした中、昨年、明治ブルガリアヨーグルトが50周年を迎えたことを期に、次の100年に向けて新たな健康増進の実践の場を求めていたんです。柏の葉スマートシティとの出会いは、そうした社会的課題解決の実践の場として重要な契機となりました」

 続いて高橋が同プロジェクトの詳細について解説しました。
「このプロジェクトは、大きく分けて2つの軸で活動しています。一つ目が、各種ヨーグルトの喫食による効果を検証すること。2つ目が、街全体のウェルビーイング向上を実証することです。また、エリア全体の健康長寿の意識向上を目指して巻き込み施策を実施し、それらを柏の葉ならではのアセットと組み合わせて『より健康な未来』をつくりあげる。それが今回の取り組みになります」

 現在、実践中のプロジェクトは「あるいて、たべて朝腸活!ウォーキングルト」と、「うがい、お口体操、はみがきで お口から体調管理教室」の2つ。前者は、街のボディコンディショニングの施設の参加者や医者と連携しながらより良いウォーキングやストレッチの方法を学び、体に最適な栄養補給についてを学ぶプログラムです。幅広い年齢層が参加し、リピーターも増えてきて「街ごと化」が進んでいるのを感じると高橋はいいます。

 また後者は、地域の保育園と連携しながら口内環境や体調管理、うがい、歯磨きの方法について勉強するプログラム。2023年12月にプロジェクトをスタートして以来、すでに10以上の保育園を回っているといいます。

 こうした取り組みは明治一社だけではなく、行政や地域の子育て施設、健康づくり拠点、アカデミアといった多くのステークホルダーが連携し、研究や実証に街ぐるみで取り組んでいると高橋はいいます。その際に各組織のつなぎ込みや推進の役割を果たしているのが、YOMIKOも参加している「UDCKタウンマネジメント」なのです。

長期的な取り組みを通じて 「街の発展」と「企業の課題解決」に貢献する

続いて高橋は、これまで同プロジェクトに約一年間取り組んできた上で気づいたことや成果について尋ねました。明治の堀越氏は、柏の葉スマートシティは行政との距離が近く、住民も非常に協力的であるため、交渉がとてもスムーズに進むと感想を述べました。

「自治体というものは、多くのことに時間がかかってなかなか物事が前に進まないものですが、柏の葉ではUDCKさんがハブとなり、『明治がやりたいこと』と『住民のやりたいこと』の両者がシナジー効果を上げるよう、上手くコーディネートしてくれているのを感じます」

 同じく三井不動産の小林氏は、アカデミアが中心になって取り組む実証の多くは住民にとってあまり身近に感じてもらえない傾向があるものの、今回の取り組みは身近なヨーグルトだったため参加率が高く、互いにwin-winの関係になっている、と述べました。

 続いて高橋は、両氏に今回のプロジェクトの成果や参画の意義についてどう感じているかをたずねました。堀越氏は、明治は短期的な売上を目的にしているのではなく、ヨーグルトが健康に良いことをより中長期的に伝播できるよう取り組んでいる、と話します。

「われわれの戦略は、ヨーグルト全体の市場をもっと広げていくことです。一番大事なことは、ヨーグルトを食べることで効果を実感していただくこと。今後もアカデミアの協力を得ながら、ヨーグルトを食べ続けることは気持ちの上でのウェルビーイングにもつながる、といったエビデンスも示していければと考えています」

明治 堀越 槙吾氏

 小林氏も、デベロッパーというものは通常、商業施設やマンションを分譲して素早い資金回収を目指すものだが、柏の葉スマートシティではあえて長期的な目線で取り組んでいる、と述べました。「明治さんの取り組みは、日本や世界に対してインパクトを与えようとしているもの。今回のような形でご一緒できたことは、本当に意義深いと感じますね」
 

 また同氏は、今回の取り組みを通じて、企業の課題解決と柏の葉の発展とを結びつけるニーズの大きさに改めて気付かされたとして「柏の葉スマートシティ共成長ビジネスプログラム【CO-GROWTH】」を発表しました。同プログラムは「UDCKタウンマネジメント」がハブとなり、様々な企業のニーズを考えながら街の機能との連携やプロジェクト推進、実証実験のサポート、体外発信などを一手に担う取り組み。

このプログラムを様々な企業の方に活用していただくことで、企業の課題解決や日本の産業発展に資するような動きにつなげていきたい、と述べました。

”新しい豊かさ”を多方面に生み出す コミュニティクリエイションの3つのポイント

 今回の「ヨーグルトで街に未来をプロジェクト」について、高橋は次のように全体総括しました。
「こうした『健康な街づくり』が実践できるのは、アカデミアや住民のみなさんが同じビジョンを共有しているからこそ。今後も、ヨーグルトを通じてこの街のウェルビーイングが向上していくモデルづくりに専心したいと思います。そしてまた、その成果を別の街にも展開できる仕掛けをつくれたらと考えています」

 その上で、様々なステークホルダーの価値向上を目指し、共に育つ未来を目指す本プロジェクトに即してコミュニティクリエイションのポイントを以下の3つにまとめました。

①多様なプレイヤーとのネットワーク、信頼関係の構築
②すべてのステークホルダーの共成長を目指すプロジェクト設計・継続運営
③プロジェクトの経過や成果の発信による、社会課題への意識向上、より大きなムーブメント化

YOMIKO 高橋 比香理

 最後に、同氏は本セッションを次のように締めくくりました。「共創が大切であることは実感しつつも、その難しさは皆さんが日ごろ肌で感じていることと思います。これらのハードルを乗り越えるための仕組みや機能を提供するYOMIKOの取り組みこそ、今までの時代にはなかった『新しい豊かさ』を多方面に生み出していくと私は信じています」

<登壇者プロフィール>

(左より)
三井不動産株式会社 柏の葉街づくり推進部 事業グループ 主事
兼 一般社団法人UDCKタウンマネジメント コミュニケーション部 小林  悟氏

2011年三井不動産株式会社に入社。経理部財務グループにて資金調達業務を担当したのち、三井不動産レジデンシャル株式会社に出向し大規模マンション開発業務を担当。2019年度より柏の葉の街づくり推進部に異動し、柏の葉スマートシティモデル事業の推進やエリアマネジメント事業等を担当。

株式会社 明治 発酵マーケティング部  プロバイオグループ長 堀越  槙吾氏
2005年に株式会社 明治に入社。市乳量販店向け営業、ヨーグルト及び市乳マーケティング部(ヨーグルト、デザート担当)、宣伝部(プロバイオ・ヨーグルト担当)、商品開発部プロバイオグループ長などを経て、2023年より発酵マーケティング部 プロバイオグループ長として従事。

株式会社読売広告社
ビジネスデベロップメント局 アセット&サービス開発推進部
シニアアカウントエグゼクティブ 高橋 比香理

2016年読売広告社に入社後、不動産・Webサービス・菓子・飲料など、幅広い業態のクライアント担当を経て、2021年9月よりSIGNINGに複属出向。ビジネスプロデューサー (営業)としてブランド・ソーシャル領域(TTL制作/戦略/各種プロモーション)・事業構想サポート・R&D研究・自社サービス開発に従事。
2023年12月よりYOMIKOに帰任。商品開発・商品ファクトづくり・実証実験設計・公民学連携プロジェクトのマネジメントなど、タウンマネジメントを基軸としたトータルプロデュースを担う。 研究領域として「街づくり/スマートシティ」に注力。「CIVIC PRIDEⓇ編集部」や「iBASHO」など、YOMIKO社内でのR&Dプロジェクトにもメンバーとして参画。