YOMIKO STORIES
2026.01.22
まちづくりとビジネス成長の橋渡しを――中長期視点で都市と経済に貢献できるYOMIKOならではのあり方
2025年9月、シティラボ東京で開催されたフォーラム「サステナブルシティ・サミット5」に、コミュニティクリエイションビジネス局 都市生活研究所の城雄大がコーディネーターとして参加しました。シティラボ東京は、持続可能な都市・社会づくりを行うためにスタートアップや企業が共創するOpen Innovation Platform。
城がこのフォーラムで行ったセッション内容を踏まえ、そこから見えてきたこれからのYOMIKOが目指すべきまちづくりのビジネスについて語ります。
“サステナブルビジネス”と“まちづくり”両側面から語り合う
シティラボ東京主催の「サステナブルシティ・サミット」に参加した経緯を教えてください。
城:YOMIKOでは、以前からシビックプライドの研究を進めています。研究を進める中で、シティラボ東京でのシンポジウムの開催や、まちづくりに関する意見交換を重ねたことで関係が深まり、今回のフォーラム「サステナブルシティ・サミット5」に参加することになりました。
このフォーラムでは、まちづくりやビジネスの背後にある〈経済〉の新しい潮流である、“まっすぐ(直進)ではない経済”にフォーカスし、6つのセッションが行われました。セッションを通して、〈経済〉が私たちの生活に与える変化やサステナブルシティ(持続可能な都市)につながる道すじを探っていく場となっています。
その中で、私は「未来志向で育む、〈経済〉と都市のリバビリティ」というセッションの企画・コーディネートを行いました。
「未来志向で育む、〈経済〉と都市のリバビリティ」とは、どのようなセッションですか?
城:セッションを考えるにあたり強く意識したのは、まちづくりに携わる方々と企業の皆様との橋渡しです。
そこで今回は、主体的にまちづくりに参画し、地域の経済に大きく関わる企業の事例を、お二方から紹介していただきました。
一人目は、しののめ信用金庫の丸茂康次さん。しののめ信用金庫さんは前橋営業部ビルを改修し、学生から高齢者まで多様な地域の方々の居場所や活動の場づくりを行うなど、金融機関の役割を超えて地域に貢献する取り組みをされています。金融機関が、このような取り組みをどのような価値観で推進し、成果を出しつつあるのか?他業界の企業にも刺激になるはずだと考えました。
二人目は、月刊商店建築の編集長、塩田健一さん。たくさんの商業空間を取材されています。以前、塩田さんから近年は商業のための空間のあり方が大きく変わってきていること、「短期的な儲け」だけでなく「ファンづくり」や「エリア価値の向上」などにつながる空間が、特にコロナ禍以降に広がっていると聞きました。そんな先進的な事例が、企業にとって参考になると考えました。
金融機関と商業空間という、一見まちづくりとはやや距離があるように見えるプレイヤーが、実は地域の居場所づくりや売り場づくりを通じてまちの魅力や価値を高め、それによって高まったエリアの“引力”を自社のビジネス成長につなげていく取り組みを行っているのです。そのような事例から、〈経済〉と都市のリバビリティを考えるヒントが得られるのではないかと考え、セッションを構成しました。
効率のみを追い求める経済が限界を迎え、新しい視点が求められている
なぜ、「〈経済〉と都市のリバビリティ」をテーマにしたのですか?
城:これまでの経済活動と都市の関係を考えてみると、消費活動は歴史の中で大きく変化し、経済にも都市にも大きな影響を与えています。その変遷を辿ると、現代の課題が見えてきました。
かつて、寺社の境内や街道沿いで「市」が立つところから始まり、今ではネットやバーチャル空間でもショッピングが可能となるなど、消費活動は基本的に利便性と効率を追求する方向で発展してきています。都市計画の面でも同様で、特に都市再生特別措置法の施行以降は、経済的価値を最大化するためのまちづくりとして、非常に高密度な都市再開発が進んできました。
経済合理性を追い求めるこうした動きによって、多くの人々にとっての利便性は格段に向上。選択肢の量は拡大し、新しいモノやコトに触れられる機会が身近にある都市が実現しました。
しかし同時に、デメリットもはっきりしてきています。収益を追求する経済システムで厳密に管理された都市による市民や地域の分断・格差の拡大、すべての市民にとっての居場所やパブリックライフの減少、環境や持続可能性の悪化などが深刻となってきており、人間らしい「幸福感」を感じられるシーンが都市の中で減少しつつあります。
マーケティング的な視点で言えば、短期的な売上最大化や投資回収に偏重することによって売り手と買い手の関係が希薄化し、真のファンづくり=売上げの中長期的な基盤づくりが困難になっていくのと似た現象です。まちづくりの視点で見ると、もっとも重要なまちの構成要素である市民の幸福度低下や帰属意識・主体的な関与の希薄化が課題となりつつあります。
だからこそ今、中長期視点での新しいビジネス成長と、その受け皿としての都市空間のあり方を考える必要があります。短期的な効率追求とは異なる、お金と人の新しい流れをつくる。それが都市のリバビリティ(住みやすさ、豊かさ)の向上にもつながるのではないでしょうか。
金融機関と商業空間からはじまっている、新たなまちづくり
都市のリバビリティ向上には、どんなことが必要なのでしょうか?
城:しののめ信用金庫の取り組みと、商店建築の塩田さんが導きだしたトレンドキーワードにそのヒントがありました。
しののめ信用金庫は、築60年の群馬県前橋市の営業拠点である前橋営業部ビル(旧前橋信用金庫本店)をリノベーションし、敷地内に「つどにわ」を開設。地域に開かれた場所へと生まれ変わらせました。
城:四方の道路から自由に出入りできるように設計し、1階にはコーヒースタンドを誘致。2階のライブラリースペースは誰でも利用できる場となっており、特に地元の高校生の放課後の学習の場&居場所にもなっています。信用金庫に用事がなくても、様々な人が足を運べる仕組みを施しました。他にもセミナールームや大ホールなどもあり、市民の方々が様々な用途で利用できる場所になっています。
このような空間は、即座に収益を生むわけではありません。しかし、ここで学んだ高校生が、大人になって金融機関と取引する時にしののめ信用金庫を思い出してくれるかもしれない。身近にこのような場所があったことがプラスの思い出になって、大学進学で前橋を出て行っても東京に就職せず再び戻ってきてくれるかもしれない。「若者の流出」という地方都市の課題に対して、まちづくりの視点で10年、20年後を見据えた活動に取り組んでいるのです。
一方、商店建築編集長の塩田さんによると、商業空間ではコロナ禍以降に「公共性」「居場所」「複合化」などが開発のキーワードとして加速していると言います。モノを売る前に人を集める、ファンをつくる、そのお店があるとまちが良くなる。そんな発想で設計される商業空間が増えているのです。
城:例えば、下北沢の「ボーナストラック」は、店舗と住居が一体化した職住一体の空間。自由が丘の「JIYUGAOKA de aone」も、低い建物として容積率をあえて抑え、オープンスペースをたくさん設けています。他にも、街角の広場のような空間の化粧品メーカーのショールーム、パン屋や広場を併設するメガネ店など、実例が広がっています。
こうした変化の背景には三つの理由があります。
一つ目は、不景気でモノが売れなくなったこと。
二つ目は、情報過多で顧客が離れていきやすいためファンづくりが必要になったこと。
三つ目は、自分の店だけではなく周りの店や街全体がハッピーになるべきだと考える事業者が増えていること。
両者に共通するのは、中長期視点でのコミュニティ形成につながる「場づくり」を重視していることです。短期的収益だけでないビジネス成長へ向けた価値観への転換と「場」の生み出す価値への投資が、金融機関でも商業空間でも起きていることがわかりました。
「水平連携型」のコミュニティと社会について考える
なぜ今、中長期でのコミュニティ形成や「場づくり」の視点が必要なのでしょうか?
城:一つは、従来型のマーケティング発想だけでは対応しきれない欲求が、生活者の中で沸き起こっているからです。大量生産・大量消費の時代に消費者を大衆としてとらまえたマスマーケティング、デジタル技術&メディアを駆使して消費者を個として追いかけるOne to Oneマーケティング、どちらも引き続き有効なマーケティング手法ではあります。
しかし、いま生活者の中にはマスでもない、個でもない、同じ価値観や共感でつながったコミュニティ的なものに対する帰属欲求が拡大しており、それらが新たなマーケットを形成しつつあります。そして企業においては、そのような生活者を販売の「ターゲット」ととらえるのではなく、ブランド成長における「パートナー」や「支援者」としてフラットな横の関係性を築いて行くことが求められているのです。
城:企業の担当者の方と話をしていても、自分たちの事業やブランドに共感してくれる生活者と「“新たなつながり”をつくるような取り組みが大事だ」という声が以前よりも高まっていると感じます。ただ、それを具体的な事業計画やマーケティング活動に落とし込むことが難しく、今後の課題です。
このような新しい関係性ニーズについて、私は、「垂直統合型」社会に対する「水平連携型」社会の出現と捉えています。
垂直統合型とはたとえば、資本家を頂点とし、企業組織、消費者・労働者がピラミッド構造になっていく資本主義社会のあり方のイメージです。これは全体最適やスケールメリット、安定性を追求するのに適した形です。
一方、水平連携型は行政や企業、コミュニティ、個人が横のつながりで結びつき、テーマによって新しい関係性をつくっていく形です。多様なテーマ、プロジェクト、価値観等によって人々がアメーバのように自在につながり、そこに人とお金の新しい流れが生まれていきます。水平連携型の強みは、それぞれのプレイヤーの個性を発揮しやすく、新しい価値が生まれやすい点です。ただし、強い求心力がなければバラバラになってしまうため、共感やビジョンを共有し続けるための「場」の存在が重要になってきます。
城:例えば企業が「地域密着型のマーケティング」を考えるときに、一社だけでやりきるのは困難なことが多いです。だからこそ業界や競合といった壁を超えて仲間をつくり、まちづくり発想でその地域におけるファンづくりや接点づくりをしていく。これが、新しいエリアマーケティングのあり方ではないでしょうか。当社のようなさまざまな取引先を持つ存在が基点となってコンソーシアムを組み、“新しいつながり”を生む機会と場の創出が重要ではないかと考えています。
YOMIKOが目指す、まちづくり×ビジネス成長の推進
このような時代の流れの中で、YOMIKOとして何ができるのでしょうか?
城:一つは、志を同じくするプレイヤーたちをつなぎ、コンソーシアムづくりをサポートすることです。広告会社として、これまで多様なプロジェクトを企画~マネジメントしてきた経験を生かして人と人、組織と組織をつないでいく。それを積み重ねることで、水平連携型の関係を構築~運営してゆくノウハウも蓄積していけると考えています。
もう一つは、拠点や場づくりです。対面で顔を突き合わせるからこそ、立場や会社が異なる人とも仲間になれるという側面は往々にしてあります。当社には、幅広い場づくりの経験に加えてシビックプライド発想を取り入れた「コミュニティクリエイション」という独自の価値創造モデルがあります。それらを活用し、新たな価値を生み出す場づくりと運営のあり方を追求することで、社会課題の解決と様々な企業のビジネス成長に貢献できればと考えています。
城:今回のサステナブルシティ・サミットを通じて、まちづくり界隈の方々だけでなく、サーキュラーエコノミーの専門家や研究者、スタートアップの皆さんや広く一般企業の方々とのネットワークが広がりました。共感を共有し、育てる「場」が増えていく都市。それは目先の利便性だけでない、生きていて楽しい、自分らしさを発揮しやすいリバビリティの豊かな都市です。
そんな豊かでサステナブルな都市づくりに、YOMIKOはどう貢献できるか。企業と地域をつなぐ新しいビジネスモデルをどう構築するか。まだ道筋がすべて見えているわけではありませんが、トライ&エラー&ラーニングを重ね、YOMIKOとパートナー企業のみなさんの新たなビジネス成長を目指していきたいと思います。
<参考>
・サステナブルシティ・サミット5
https://www.sustainablecity-summit.jp/
・サステナブルシティ・サミット5 B-1セッションレポート
https://citylabtokyo.jp/article/2025/10/09/report-sustainablecity-summit5-b-1/
城 雄大
コミュニティクリエイションビジネス局 都市生活研究所
シニア・アーバンストラテジスト
1999年読売広告社入社。マーケティング局にて航空会社や玩具メーカー等のクライアントを担当。その後、地域の再開発に関するコンセプト構築やクライアント企業の新規事業開発に関わるコンサルティング業務などに従事。また「シビックプライド」をはじめとした、都市と生活者の関係に関する研究開発も行っている。 東京大学大学院新領域創成科学研究科スマートシティスクール修了。