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2020BtoBマーケティングの次なるステージとは

2020.03.11

近年、BtoB案件に携わらせていただく機会が増えてきている中で、顧客の認知から商談までのフローの変化を肌で感じることが増えてきました。わかりやすいところですと、比較的新しいメディアであるタクシー広告では当初は一部の人材系やSaaS系のBtoB企業の広告が多くを占めていましたが、最近では法人PCなどのデバイス系の広告や多岐に渡るSaaS系企業の広告が見られるようになってきました。このように、世の中やマーケティングのデジタル化が進むことで、業界・業種を問わず認知経路にも変化が出てきています。そしてもちろんのことですが、認知だけでなく理解・検討・購入決定のフェーズさえもデジタル上で起きるようになってきました。

今回は、YOMIKOのパートナーとしてご一緒しているBtoBマーケティング専業エージェンシーの2BC株式会社 代表取締役会長の尾花淳氏とともに、現在のBtoBマーケティングにおける障壁やこれからの可能性についてお伝えしていきたいと思います。

木村:近年のBtoBマーケティングと言えば、ここ数年で多くの企業がMAツールや分析ツール、BIツールなど様々なマーケティングツールを導入し始め、デジタル上で起きていることを紐解き、案件獲得への効率的なルートを見出すべくデータ活用が盛んになってきました。ただ、ツール導入先行で実際使いこなせていないというお声を聞く機会が増えてきています。

──現状のBtoBマーケティングについてどう思われますか?

尾花氏:BtoCと同様にBtoBの世界でもどんどん購買プロセスが変化してきていますね。今後、BtoBの購買プロセスは二極化していくと考えています。1つはテクノロジーを活用してより自動化していくような買われ方。例えば、生産管理システムと直結した購買システムなどで実現されるものです。人が介在する部分を極力排除する方向に向かうでしょう。既に、製造業での一部の直接材や間接材でその傾向が見えています。
他方は、よくわからないものをじっくり調べて購買する形。従来の延長線上にあるスタイルですね。延長線上とは言え、言うまでもなくこの20年間での情報行動の変化によって「事前に自分達で調べる」ことは当たり前になりました。ここ最近感じているのは、ここにエモーショナルな判断基準が入り込んできたこと。組織として「初物」の購買だからこそ、ブランドが与える影響が増えてきています。
いずれにせよ「省力化かつ最適化」を突き詰める傾向は変わりません。そういった行動を取る組織に対してどんなマーケティング活動を展開していくのか、というのが現在のお題になってくるわけです。その中で、様々なツールを駆使し幅広い情報収集に力を入れ、効率的に収益を上げることにチャレンジしていう企業が増えていますよね。
格段に入手できる顧客情報や顧客になりうる潜在顧客の情報量は増えてきていますが、そのデータを使い切っている企業はまだ少ないのが実情です。

──変化が絶えない市場環境の中で、ブレずに臨機応変に企業の競争力を上げていくためにはどうしたらいいでしょうか?

尾花氏:BtoBでもマーケティングが必要だという共通認識はできつつある。それでも、マーケティングの悩みは漠然としている。それは、新たなツールや手法に飛びついてみても、それだけでは実利につながらないことを社会が学習してきた成果なのかもしれません。
それこそ、色々なデータを見ることができるようになっても、そもそもそのデータが何故必要なのかという目的がツールを導入する段階で明確になっていないから、収集したデータの使い道が明確でなかったり、マーケティングの部署では手に負えないような範疇の改善が必要だったりと収益改善に向けた手を打ちづらい悩みが生まれているせいではないでしょうか?
BtoBマーケティングの助けとなる数々のツールが生まれている中で、マーケティングの部署としてデータを分析して価値ある発見をして営業力や収益を上げるために「何かをやっている」状態にはなっていますが、そもそも「やる」ことが目的になっていることが多いです。
そのため、施策を始める前に何に貢献するものなのか目的をハッキリさせることが重要となってきています。

例えば、今では当たり前に会話されるKGIやKPIという言葉。
マーケティング施策を1つ打つにもKPIを設定するのが通常ですが、そのKPIを何に設定するべきなのか、そしてKGIに対するKPIだけでなく、さらに因数分解したPI1つ1つの設定の仕方やKGIに対するKPIやPIの優先順位付けなどが正しくされていないと各施策の評価が正しくできず、本来望んでいる成果まで辿り着くことが難しくなります。各PIの計画値をロジカルに設定していれば、実績が乖離しても原因が見えやすくなります。

木村:この施策が各指標にどのように貢献するかという視点は確かにとても重要ですね、以前の広告会社であれば各施策の成果指標の計測には限界があったので曖昧にしていることが多かったのですが、今はマーケティングがデジタル化してきたことで、各指標に対して貢献度を計測できる施策を提案するように変化してきました。これらの変化は、企業がより効率的にマーケティングを行い成長していくことの助けになることは明白です。今一緒に取り組ませていただいている案件でも、まさに指標の優先順位付けは重要なところですね。日頃追うべき指標をしっかり定めることでブレがなくなり施策の実施判断がロジカルになってきたことは大きな進化だったように思います。見られる指標が増えれば増えるほど人によってブレが生じますし正しい判断が難しくなっていきます。マーケティングのデジタル化が進むほど各企業の中で生じる課題というところでしょうか。
ちなみに、KGI(Key Goal Indicator)とは「重要目標達成指標」を指していますから、「売上高」「利益率」「成約数」といった事業活動の最終的な目標や特に重要な数値が設定されなければなりませんよね。そのKGIを因数分解して定めていくKPIやPIは各社のビジネスプロセスにもよって多岐に渡っていくためその設定は慎重に進めていくことが重要だと考えています。

──では、PI~KGIを定めていく中でのポイントは何でしょうか?

尾花氏:まず事業全体を見通すことが大前提です。そもそもその企業がどのような組織体制や資産で利益を生み出しているのか、個々の企業で異なってきますから、全体像を把握することが重要になります。その上で収益を上げる要はどこなのか、またはボトルネックがある場合はどこなのかを探ります。
そこから戦略を立て、戦術に落としていく過程を踏んでいくのですが、最初の戦略を立てる時点でKGIの設定が可能になります。売り上げを1,000億円にするのか、業界のシェア1位になるのか、何をゴールにするのかで戦略も戦術も変わってきます。これは企業によって考え方は異なるかと思いますが、自社にとって何が成長していくために設定すべきゴールかを見極めないといけません。そして、KGIを設定すると、組織が優先的に取り組む必要がある項目が明確となり、経営リソースを効果的に活用できるようになります。本来は全ての施策はKGIに貢献できるものしかやるべきではありませんから、KGIに直結する要素をPIに因数分解する。その中からKeyになる指標をKPIとして選定することが大事になりますね。そしてこのPIツリーはどの企業も必ず作るべきであると考えています。(下図)

木村:そして、それらの設定した指標を達成していくために各施策を実行をする、これはシンプルなことではありますが、各指標に結びつかない施策をこれまでの慣習で続けている企業も見受けられますよね。あらゆるデータが可視化して指標を追うことができるようになってきた今、改めて施策を根本から見直していく必要があるのかもしれません。
YOMKOは広告会社ではありますが、得意先からいただくオリエン内容だけのスコープで考えると、得意先が掲げるKGIに対してコミットできる幅が狭くリターンが小さくなりがちなので、そもそもKGIに対して広告領域だけのご提案ではなくなってくることが増えてきました。例えば、昔からダイレクトビジネスの業界では、KGIに結びつかない、もしくは成果指標が曖昧なものを施策としてやらないというのはセオリーでしたので、経営視点で様々な戦略立案をご支援させていただいてきましたが、これからは他業界に関してもその視点でのご支援が重要と考えています。
今、尾花さんとの案件もKGIに対するKPIを細分化し、戦略を立てた上で各施策落とし込んでいますが、得意先とリアルタイムにKGIからPIまでを可視化するスキームを作っているので施策のPDCAを回すスピードが格段に上がりました。その結果、KGIの達成度が昨年度の150%越えの進捗となってきており、KGIに対する明確なKPIとPIの設定とそれぞれの施策反映の効果を実感しております。やはり、KGIまでのパイプラインが可視化されるほど、目的意識と優先順位付けを正しくすることができればPDCAの速度も格段に上がりますし、成果に結びつきやすくなっていくことがわかります。

──これからのBtoBマーケティングにおいて何か思うことはありますか?

尾花氏:もっと企業のマーケティングに関わる人が自社のPL(損益計算書)の話をもとに会話することできるようになれば、より本質的で成果に結びつくマーケティング活動ができると思っています。どこにどれだけのリソースを配分することで成果が最大化するのか。そういった、より経営視点で、狭い範疇に囚われず領空侵犯しながらマーケティングを実践していくことで、市場においても社内的にも価値が上がり競争力が高まっていくと思います。

木村:確かにおっしゃる通りですね。経営視点で捉えることができればより正確な目標と戦略・戦術に繋がっていきますね。そして、BtoBマーケティングと経営がより密接な関係になっていくことでビジネスの成長スピードも一段階上がっていくように思います。その上で武器として各マーケティングツールを活用できれば生み出される成果も変わってくるはずです。まだまだBtoBマーケティングは進化の伸びしろが沢山あると感じます。YOMIKOとしても、頂いた課題に対して広告プロモーション中心の領域だけではなく、経営視点で必要な戦略・戦術に落としていき、得意先のビジネスの本質の部分でお役に立てるように努力を続けていきたいと思います。

木村 朋子

デジタル戦略推進部 シニアプランナー

デジタルマーケティングにおける多方面の課題解決を担当。さらに、デジタル領域にとどまらず、デジタルと従来のマーケティングを掛け合わせた最適な戦略立案も請け負う。最近は特にBtoB案件業務が多く、長期的に事業拡大を支援。領域としては、戦略立案・データ分析・サイト改善提案・MA活用提案など多岐に渡る。