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位置情報ターゲティングによるオンライン・オフラインを統合した施策

2020.06.29

1.はじめに

2019年1月~2019年12月におけるインターネット広告費は前年比19.7%増の2兆1048億円となり、テレビメディアの1兆861億円を超えて媒体別で初めての首位となりました。なぜインターネット広告費は他の追随を許さない勢いで伸びているのか、その要因としてインターネット広告では「ターゲティング」と「サイト誘導からのCV獲得」ができることが大きくあります。「ターゲティング」により、ユーザーのWEB上の行動データなどから「誰に広告を配信するか」が明確になりました。また広告配信後サイトへと誘導することにより、問い合わせや応募などのCVを促すことができます。この「ターゲティング」と「サイト誘導からのCV獲得」という能力は、インターネット広告がその他媒体より秀でている点でありますが、現状多くの施策において、この能力の活用がインターネット広告だけで終始していることが多いように思われます。つまりはインターネット広告でのオンライン施策と、その他媒体でのオフラインの施策が連動しておらず、「ターゲティング」と「サイト誘導からのCV獲得」というインターネット広告の強みが十分に発揮されていないのです。オンライン、オフラインの施策を統合させ、より広告効果を最大化させるには「位置情報ターゲティング」が鍵になると私は考えます。本記事では位置情報ターゲティングの活用法をもとに、オン・オフ絡めた統合的な施策の必要性を解説していきます。

2.位置情報ターゲティングとは?

位置情報ターゲティングは文字通りユーザーの位置情報を特定し、広告配信をするターゲティング手法であります。位置情報の取得方法はスマホアプリからのデータをもとにする媒体や、Wi-Fi接続時の情報をもとにする媒体など様々です。現代社会においてほとんどの人がスマホと一緒に行動しているので、その位置情報データを得ることで、その人がどこに行き、何に興味があるのかある程度分かるのです。この位置情報ターゲティングを活用することで、オンライン上の行動を追うだけではなかなか補足できない、ユーザーのオフライン上の行動をターゲティングすることができます。また実店舗への来店誘導への活用や、オフラインの施策との統合施策など、活用方法は様々あります。第3章では位置情報ターゲティングの具体的活用方法について、一部事例を交えながら解説していきます。

3.位置情報ターゲティング活用方法

①オフラインの行動をもとにしたユーザーターゲティング

インターネット広告のユーザーターゲティングは優秀ではあるものの、商材によってはあまり機能しないこともあります。当社が担当している新卒のリクルート案件もその一つです。本案件での広告主のご要望としては、特定の大学の生徒に絞って広告を配信したいというものでした。しかし、WEB上に蓄積された閲覧データやアンケートデータだけではなかなか大学単位で絞り込んでの広告配信は難しいという課題がありました。そこで位置情報ターゲティングにより、指定大学を地図上で囲い、その周辺に頻繁に訪れているユーザー、特に若年層のユーザーに絞り込んで配信をしたことで、より高い精度で指定大学の学生を特定することができました。このような新卒リクルート案件のみならず、「よくカーディーラーに行く人」を特定する新車購入検討層ターゲティングや、「よく商業施設を利用する人」を特定する商業施設利用者ターゲティングなど、活用方法は様々です。位置情報ターゲティングによって実際のユーザーの行動をもとに広告配信をすることで、高い精度でサービス利用意向の高い層への配信が可能になるのです。

②実店舗への来店誘導

もし広告主が実店舗への集客に課題を抱えているケースでも、位置情報ターゲティングは有効な手段となります。例えばカラオケ店やドラッグストアなどでは、実店舗への来店を目的として街頭でチラシを配布することが多くあります。ただし街頭でのチラシ配布は人件費等のコストがかかるとともに人手不足も相まって、販促のデジタルシフトが求められております。そこで位置情報ターゲティングでは実店舗の付近にいる、もしくは関連があるユーザーに対して広告配信をすることができるので、チラシの代替手段として活用することができます。街頭チラシと比較して、広告費用の大半を配信費に使えるので、低単価で届けたいユーザーに広くリーチすることができます。
さらには各媒体独自の計測ロジックにより、その広告配信がどれだけ来店に寄与したのか効果検証をすることも可能です。また商業施設等の広範囲からの集客を目的とする場合でも、位置情報ターゲティングで過去来訪ユーザーを特定できるとともに、広告効果を可視化することで商圏分析に役立てることができます。
このように位置情報ターゲティングを来店誘導目的で活用することにより、そのエリア関連度の高いユーザーにリーチでき、広告の効果検証から次回実施の示唆までPDCAを意識した店舗誘導施策が可能になるのです。

③オフライン施策とオンライン施策の統合

位置情報ターゲティングをオフラインの施策と連動させることで、認知、獲得両方の観点から、広告効果を最大化させることができます。例えば交通広告は認知効果の高さが明らかであるものの、獲得にはあまり寄与せず、広告効果も計測できないというケースが多くあります。ユーザーが広告に接触して認知をしたとしても、検索や実店舗への来店等の次のアクションを起こさないと、認知しただけで終わってしまうのです。そこで交通広告の実施しているエリアに合わせて位置情報ターゲティングで広告配信をすることで、ユーザーが交通広告に接触した後、サイトへ流入するまでの導線を作ることができます。また交通広告を出稿する期間と出稿しない期間の両方で位置情報ターゲティング広告を配信し、それぞれを比較することで交通広告の効果を推測することも可能です。オフライン施策の認知効果、オンライン広告の獲得効果、これらを両立させ効果を最大化させることが位置情報ターゲティングによってできるのです。

④まとめ

インターネット広告、とりわけ運用型広告が全盛を迎えようとしている昨今、オンラインの施策はWEBの専業代理店、それ以外のオフライン施策を総合広告代理店が担当するという住みわけが見られます。オンライン施策をWEBの専業に任せることで運用型広告における獲得単価を少しでも下げることが狙いのようです。しかしながらインターネット広告に終始し、獲得目的で運用していくだけではいずれユーザーの枯渇という壁にあたってしまいます。対して認知効果の高いオフライン広告だけをやっていても果たしてその広告が届けたいユーザーに届いているのか、どれだけ獲得に寄与しているのかはわかりません。最近では新型コロナウイルスの影響により急速にオンライン化が進んでおりますが、外出自粛解除後にはオフラインでのリアルな体験も再び価値を取り戻すことが考えられます。そのため今後はより一層オンライン・オフラインを連動させた施策の重要度が高まることが予想されます。そのオン・オフ統合した施策の最も簡単な導入方法が今回ご紹介した位置情報ターゲティングであると考えます。

桑野 大介

デジタル戦略推進部 プランナー

2019年読売広告社入社。デジタルメディアのプランナーとして、KPIに沿ったメディアプランのご提案、配信、ご報告までワンストップで担当。特に不動産業種のデジタル領域を中心とした獲得系の施策に多く携わる。