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オンライン行動のスタート地点『検索エンジン』を抑えるデジタル戦略

2020.07.13

企業のコミュニケーションのハブ、オウンドメディア

オウンドメディアは、あらゆる商材で重要な生活者とのタッチポイントです。オウンドメディアとは、自社で運営・情報発信を行うメディアで、自社メディア、パンフレット、カタログなどを指しますが、今回はその中でもオウンドサイトについてご説明します。
オウンドサイトは、ペイドメディア(広告などを有料メディア)・アーンドメディア(SNSの口コミなど消費者起点メディア)と組み合わせて施策を行うことで、幅広いユーザー層に接触することができる、ハブとなる場所です。PRリリース配信、会員へのメルマガ、SNS投稿など様々な広告コミュニケーションに触れた生活者が、より情報を得たいと訪れるコミュニケーションの帰結点となります。(図1)最も自分たちのアピールしたいことや訴求すべきことを表現できると同時に、オウンドサイト来訪ユーザーは分析ツールの導入ができるため、訪問したユーザーの属性や行動データを分析し、次の一手に生かすことができます。
このようにさまざまな情報が集約されるオウンドサイトですが、その内容と導線を最適化し、多くの生活者を誘引することは、商材やサービスの広告コミュニケーションとして重要です。

(図1)オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディアの関係

では、生活者はどのようにオウンドサイトに訪れるのか?

オウンドサイトへの誘引方法は様々あり、前述したようにデジタル広告やSNS経由での来訪もあります。その中でも今回は「検索エンジン→オウンドサイト」への導線について取り上げたいと思います。以下のデータ(図2)は、生活者全体と各年代の各メディアの利用状況です。

これによると、全年代を通しても、Google、Yahoo!JAPANなどの検索エンジンが上位をしめています。一般化しているSNSや動画サイトの利用率も高いことが分かります。私たちの実際の生活1日を通して考えてみても、出かけるときの行き先、出先での食事する場所、明日の天気などを思わず検索しているのではないでしょうか。検索機能のみを提供していた検索エンジンですが、現在では様々なサービスが加わったポータルサイト化が進んでいます。例えば、アーティスト名で検索すれば、各ストリーミングサービスのリンク、Youtubeへのリンク、Wikipediaへのリンク、ショップへのリンクが表示されます。オンライン上・オフライン上のあらゆる行動の起点になっており、生活者の中でも利用率が高くなることが理解できます。この「検索エンジン」からオウンドサイトへの流入に注力することで、多くの生活者を誘引することができます。

(図2)各インターネットメディアの1週間の利用有無

検索エンジン→オウンドサイト流入最適化。では、何をするか?

そのための手法は大きく2つあります。それが、SEO、リスティング広告です。SEOとはサーチエンジン最適化(Search Engine Optimization)の略です。検索エンジンで、狙った戦略キーワードの検索結果の上位に表示され、自然検索流入を獲得することを目指します。具体的には、検索エンジンに評価されるサイトにするべく、サイト設計を調整したり、独自コンテンツの開発などがあります。

一方、リスティング広告は、サーチエンジン上の有料広告のことです。課金することで検索結果の上部の広告スペースに表示させる仕組みです。基本的に1クリックあたりに料金が発生する課金体系になっています。

検索エンジンの表示枠は大きく分けて2つあります。(図3)それぞれの検索エンジン上の表示枠に対して、SEOで対策、リスティング広告で対策できる領域は異なります。

(図3)SEO、リスティング広告対策箇所

自社および自社のサービスや商材をさすブランドワード(例えば読売広告社)では当然検索結果の上位に入ります。ただし、より広い一般ワード(例えば広告代理店 赤坂)になると上位には入りません。それは検索エンジンのアルゴリズムは、ユーザーのニーズ(つまり検索するキーワード)に最もマッチする結果を表示するからです。
ブランドワードで検索して流入してくる層は、すでに顕在化しており、興味をもった状態でオウンドサイトに訪れます。その分、サイト際での滞在時間が長く、何かCVポイントがあれば、それに結び付きやすい優良な層といえます。ただし、そのキーワード自体に認知度やニーズがなければ、そもそも検索されることはありません。その際は、後者のような一般ワードでも流入させていく必要があります。
そのために活用するのが、前述のSEOとリスティング広告です。以下のように(図4)、それぞれのメリット・デメリットがあります。検索エンジンからのサイト流入最適化という意味では、どちらも分かれることなく、シームレスに実施することが重要です。

(図4)SEO対策・リスティング広告それぞれのメリットとデメリット

では何からはじめるべきでしょうか?

ここでは、私たちが実施したケースをもとに、開始から実施、継続までのフローをご紹介します。

サービスオフィスブランドのAの場合:
新規事業としてサービス付き小規模オフィスが開業。ODM・新聞などのオフライン広告は実施していたが、よりターゲットの認知を取っていく必要がある段階。先行競合オフィスも多く、それらからユーザーを引っ張ってくる必要があった。

そこで、以下フロー(図5)にて進行しました。

(図5)A社実施フロー

まずは戦略KWを選定する前段階として、自社・他社・市場の分析が必要となります。ここはリスティング広告もSEO対策も共通しています。ここでは、私たちは他社分析としてkeyword mapなどツールを活用し、SEO流入キーワードやリスティングの入札キーワードを確認します。また、Googleサーチコンソールやキーワードプランナーを使い、自社サイトへの流入状況や狙いたいキーワードの入札状況などを確認します。また、市場としては、keyword mapやGoogleトレンドなどを活用し、商材へのニーズの変遷や共起語などを確認します。その後、それらの結果をもとに戦略キーワードを選定します。これ以降は手順が異なるため、分けて説明いたします。

①SEO

基本的には、上記分析を踏まえておおよそのキーワードの目途を立て、検索ボリュームや競合性を加味しながら選定していきます。キーワードの中にも大きく3つに分けられます。(図6)検索数を取ると、その分ヒットするユーザーは多くリーチは広がりますが、またニーズが顕在化していない可能性が高いです。反対に、コンバージョン率を取ると、そもそもの検索数自体は少なくなります。コンバージョン率が高いスモールワードを抑えながら、適宜ミドルワード、ビッグワードを戦略キーワードに追加していきます。

(図6)SEO対策における戦略キーワード

戦略キーワードを選定したら、次はそれらのキーワードに紐づいたコンテンツ設計にうつります。その前に、コンテンツを作ることでなぜ検索結果上位を狙えるかです。SEOでは、検索エンジンの中でも利用者の多いGoogleをベースに考えます。サイトを最適化するには、Google独自の検索アルゴリズムに習ったSEO対策を行う必要があります。Googleの検索アルゴリズムは、「ユーザーの検索意図」「ウェブページの関連性」「コンテンツの品質」「ユーザビリティ」など200以上の要素から構成されています。ですので、SEOでは「ユーザーの検索意図にあった、独自で品質の高いコンテンツ」を制作することが重要です。コンテンツ内に単純に戦略キーワードを入れ込むだけでなく、そのキーワードで、すでに検索結果に出てくるコンテンツよりもさらにオリジナルで品質の高いものにする必要があります。

②リスティング広告

こちらもキーワードの選定ですが、大きく分けて2つあります。(図7)

(図7)リスティング広告におけるキーワード

指名系キーワードと一般キーワードです。指名系キーワードは、対策をしなくても、自然に上位表示されるため流入するのではないか?と思われるかもしれません。
ただし、自社指名キーワードの広告枠に競合の広告が配信されている場合や(競合の指名キーワードを入札してはいけない規則はありません。)、自社の指名キーワードにも関わらず、自社サイトのオーガニック検索順位が1位でない場合もあります。「指名ワード」を検索しているユーザーは、既に商品やサービスを知っているので、購買行動に対するモチベーションの高いユーザーであることが想定されます。ここを取りこぼすことなく、対策した方がよいでしょう。
また一般キーワードは、自社・他社・市場の検索傾向を加味して、選定していきます。指名ワードでは頭打ちになってしまう流入数をさらに伸ばすことができます。ただ、一般キーワードはクリック単価も高い傾向にあり、上限CPCを調整するなど、無駄なコストを使わないようにする必要があります。
キーワードが選定できたら、広告文・キャンペーン設計を進めます。キーワード×広告文のかけ合わせは重要なので、キャンペーン設計は最低でも指名・一般でわけて運用します。
オークションの際に順位決定の決め手となるのは「広告ランク」と呼ばれる指標で、これは「上限クリック単価」と「品質スコア」の2つの要素で成り立っています。「上限クリック単価」は広告出稿時に指定するもので、1クリック当たりいくらまで支払うつもりがあるかを示すものなので、広告主側で任意に設定できます。「品質スコア」は、広告、キーワード、クリック率、リンク先ページなどを総合的に評価して決定される指標で、よい広告、魅力的なリンク先ページであるほど高くなります。広告主でコントロールができず、入札単価を釣り上げても、「品質スコア」が低いままですと、いつまでも上位を狙えません。キーワード・広告文・リンク先のオウンドサイトを連動させることが重要です。

SEO対策・リスティング広告ともに、効果測定・PDCAを回し、日々改善していくことが必要となります。サービス付き小規模オフィスAの場合も、継続してPDCAを回しており、徐々にSEO対策による上位表示・自然検索からの流入につながってきました。また、リスティング広告についても、初期は広く設定していたキーワードを獲得効率のよいものに精査、広告文をブラッシュアップするなどして、獲得単価は改善しています。

まとめ

検索エンジンの機能も拡充されている今、生活者にとっての検索エンジンの利用率は今後も高まることでしょう。オールデジタル化が進む現代では、生活者のタッチポイントは多岐にわたります。
その中でも、検索エンジン対策は今後重要になっていきます。前述のように検索エンジンに注力するのであれば、SEO対策・リスティング広告を両輪で回していくことが重要です。

熊谷 友里
デジタル戦略推進部 プランナー
デジタル領域の広告戦略立案と実施を担当。不動産・オフィス関連商材などのCVを目的とした獲得案件など。デジタル領域の分析、メディアプランニング、クリエイティブ方針立案、PDCAによる効果最大化を実践。