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地域ごとに〝おうち料理”の特徴を分析「47都道府県おうち料理調査」で見えてきた新しい生活者起点のアプローチ方法とは

2024.03.28

東京の深川めし、大阪のバッテラ、愛知の味噌煮込みうどん。
有名な郷土料理は各都道府県に存在しますが、「おうち料理」や「食の嗜好」にも地域の特徴はあるのでしょうか。

家庭内の料理に関する地域別の特徴を明らかにするため、全国の30-60代女性に対して「47都道府県おうち料理調査」を実施したところ、よく作る料理や味付けなどに、大きな特徴や違いが見えてきました。また、そうした都道府県別の違いに着目し、当社オリジナルソリューションの開発も進めています。詳しい話を担当者に聞きました。

地域ごとの食嗜好を明らかにし、地域起点の新しいソリューションの開発

― 調査を実施した背景について伺えますか。

小島 日本の家庭料理には、豊かな地域色があります。味噌や醤油などの調味料から、食パンの厚み、おでんの具材、お正月に食べるおせち料理やお雑煮、そして同じ食べ物の呼び方まで違うなど、自分の郷土や住む地域以外の食卓を覗くと、発見や驚きがありますよね。

そうした地域ごとの食嗜好を明らかにすることで、地域を起点とした新たなソリューション開発が出来ないかと考えたのが、今回の調査のきっかけです。

― 調査の概要を教えてください。

菊池 47都道府県の日々料理を作っている女性の方々を対象に、自宅でよく作る料理や好きな料理のジャンル、料理によく使う食材・調味料や味付けなど、家庭内料理について多岐に渡る項目で聴取しています。

そして得られた結果を、大きく2つの視点から分析しました。

1つ目は「トピックス別 47 都道府県分析」

例えば「あるメニューが好きな都道府県」といったように、特定の味付けやメニューが、どの地域と親和性が高いのかを見ることが出来ます。

2つ目は「47 都道府県別 特徴分析」

「ある県がよく使う調味料は〇〇・〇〇」といった、全国で比較した際にスコアが高いものをピックアップすることで、地域別の傾向を明らかにすることが出来ます。

各地域の名産や特産品とは別に、家庭料理にも意外に「地域別の特徴」が明らかに

―「トピックス別 47 都道府県分析」では、どのような気づきや発見が得られましたか?

小島 やはり地域によって差がかなり出ていました。例えば、同じ「たまご」を料理するとしても、九州・沖縄や北海道は「卵焼き」、関西は「だし巻き卵」を好む、といった結果が出ています。

― 料理ジャンルでも、九州や沖縄では地元愛を感じる「郷土料理」を、首都圏では「イタリア料理」を好む、といった差異も出ていますね。

小島 あっさり味が優勢な西日本 vs.はっきりした塩味志向の東北など、比較的知られている傾向も出てきていますが、素材の選び方や調理の仕方には地域差があって興味深いですよね。

― もう一つの分析視点である「47 都道府県別 特徴分析」はいかがですか。

菊池 こちらも、地域ごとの特徴が浮かび上がってきています。

例えば【調味料・味付け】カテゴリーで見てみると、香川県や岡山県といった瀬戸内海に面している地域では、「かつおだし」「いりこだし」が特徴的に高く、特産品ならではという結果です。

対して、鹿児島を見ると「ケチャップ」「カレー」が全国トップという、地域の特産などとは関係のないものが上位に。鹿児島は、他の設問においても「甘い・甘辛い味」が日常的に好まれていたり、「ハヤシライス」が好きだったりと、複数の結果を横並びで比較すると、共通項が見えてきました。

※「自宅で料理をつくる際、よく使う調味料・味」の回答を都道府県別に分析

― 調査項目を横断してみると、さらに新しい発見もありそうですね。

小島 とても意外だったのが、山形県です。

山形県は、味・調味料・素材・メニューなど、どの設問においても上位を占めるものが多く、食への興味が非常に強い地域であると感じました。中でも、味付けでは「中華鶏ガラスープ味」を好み、好きなメニューは「麻婆豆腐、餃子、八宝菜、回鍋肉、青椒肉絲、春巻き…(他多数)」などが全国でも上位という、まさに「中華大好き県」と言える結果でした。

その他にも県別でみるとことで、MAP以外の様々な特長が見えてきました。

― 各地域の名産や特産品とは別に、家庭料理にも意外に「知られざる地域別の特徴」が見えてくると、いろいろな攻め口が見つかりそうですね。

食嗜好を起点に店頭販促やメディア展開、広告配信まで新たなソリューションの活用へ

―こうした結果を、今後どのように活用しようと考えていますか。

菊池 まずは、地域別の家庭内の食嗜好をとらえた、効果的なプロモーションの企画を考えることが可能となります。

例えば、売りたい商品がある場合には、その商品の特徴と食嗜好が近しいエリアで、テストプロモーションなどを実施することも考えられますし、逆に強化したいエリアがある場合には、その食嗜好にマッチする商品や、好まれる食材を起点にしたプロモーションを仕掛けるといったことも可能です。

塩見 さらに、食品スーパーでの店頭販促やメディア展開などにも活用できると考えています。

食品スーパーでの販促は、52週での歳時テーマを中心に展開することが多く、どの小売りにおいても横並びで、マンネリ化する傾向にありますが、エリア別の食嗜好に沿った生活者起点での企画テーマは、鮮度も高く、より共感されやすい売り場づくりに繋げることができます。

また、メディアのコンテンツ制作のヒントとしても活用できるので、現在、「小売り×メディア連携による商品ブランドのエリアシェア拡大」を目的としたソリューションも検討中です。

瀬川 ほかにも、食嗜好・行動に基づく広告配信という、新たなメニューを現在開発中です。

食嗜好・行動でオリジナルセグメントを作成、属性や行動が類似するターゲットに対して、広告配信をするというものです。

― 新しい試みですね。どのような背景から開発に至ったのですか。

瀬川 従来、食品・飲料メーカー様のWEB広告施策では、WEB閲覧行動から推測する興味関心ターゲティングや購買行動をベースにした購買データターゲティングの活用が多かったと思います。

いずれも効果的な手法である一方で、それらの行動の背景にある個人の嗜好性は、ある程度類推ができても正確に捉えることは難しかったと思います。

そこで、この食嗜好調査の結果を活用することで、例えば「こってり好き」や「○○を自宅でよく作る」といったように、WEB行動には表れづらい嗜好性をベースに当社オリジナルセグメントの作成、広告配信することが可能となります。

この手法を用いて、例えば「こってり好き」やがっつり系のレシピを好まれる方へは、減塩商品やカロリーオフ商品の提案、また調味料メーカー様や小売様はじめ新たなターゲット開拓等にご活用いただけたらと考えています。

また、ここで見られた反応を販促施策に活かしていくことも視野に入れています。今後、態度変容調査や購買検証等も絡めて、テストケースをどんどん増やして、精度を高めていきたいです。

生活者の多様化する食嗜好を捉え、新しい食を得意先と共に創り出す「GAME CHANGE PARTNER」に

―「食×サービス」という観点で、今後どのようなチャレンジをしたいですか。

瀬川 柔軟にプランニングが可能なデジタルメディアだからこそ、メーカー様へはレシピ訴求の最適化、小売様へは商品やクーポンの最適化等、生活者1人1人に寄り添ったコミュニケーション施策を行っていきたいです。

菊池 「これからの時代に向けて何を提供したらよいか?」というお悩みを多く聞きます。

今回の全国約5,000サンプルという大規模データベースを、地域という切り口のほかにも、属性や食への価値観など様々な角度から読み解き、新しい食を得意先と共に創り出す「GAME CHANGE PARTNER」を目指していけたらと考えています。

<調査概要>

■調査概要
対象 :30-60 代 女性(全国)
(日頃、ご自身がスーパーで食材の買い物をする&料理している方)
サンプル数 : 4,700 サンプル
(30-40 代・50-60 代 それぞれ各県 50 サンプルずつ)
実施時期 :令和 5 年 7 月 14 日~18 日
調査方法 :インターネット調査

■設問内容(※カッコ内は提示した選択肢の数)
・食生活に関する考え(21)
・自宅でよく作る/好きな料理のジャンル(9)
・自宅でよく使う食材(48)
・自宅でよく作る/好きな味(18)
・自宅でよく使う/好きな調味料・味(38)
・自宅でよく作る/好きなメニュー:主食(26)・主菜・副菜(合計 65)
・アレンジして楽しみたいメニュー:主食(26)・主菜・副菜(合計 65)
・季節ごとに食べたくなるメニュー(30)

<メンバー>

(写真後ろ左から順に)
瀬川 瑞希 メディアビジネスプロデュース局
塩見 淳二 マーケットデザインセンター
小島 正子 マーケットデザインセンター
菊池 真由 マーケットデザインセンター