YOMIKO STORIES

Path for Community Creation〜コミュニティクリエイションへの道〜(3)人と人とをつなぎ、地域への愛着を醸成する

YOMIKO独自の課題解決メソッドである「コミュニティクリエイション®」をどのように実践しているのか、4つの注力領域の担当者に、それぞれの実務の視点から語ってもらう「Path for Community Creation〜コミュニティクリエイションへの道〜」。第3回は、シビックプライドコンサルティングに注力する統合クリエイティブセンター(都市生活研究所兼務)の中村賢昭と都市生活研究所の小関美南の2人に話を聞きました。

* 近年、人口減少社会において、市民一人ひとりが誇り高く喜びをもって生きることができる都市や地域を実現するために注目されている考え方です。
※「シビックプライド/Civic Pride」は、株式会社読売広告社の登録商標です。

街・地域のビジョンを共有し、共創する

中村:私は、地域や都市の魅力をどのように引き出していくのかといった戦略の策定を主に手掛けています。また、クリエイティブやプロモーション、PRなど、具体的な施策の企画、ディレクションも担当しています。

小関:私は、主に「CIVIC PRIDE®ポータルサイト」の編集長として、サイト運営をはじめ、このサイトを起点に生まれたさまざまな地域とのネットワークや知見を活かしたプロジェクト(CIVIC PRIDE ACTIONなど)を推進しています。また、講演やセミナーを通して、社外に対してYOMIKOの「シビックプライド」のプレゼンスを高める活動も行っています。

中村:私が感じていることは、地域や都市に対する愛着や共感・誇りというのは、度合いもベクトルも、人それぞれだということ。その前提のもと、「こんな地域になったらいいね」と、みんなで共有し、協働しあえるビジョンやメッセージを提案することが重要だと思っています。

また、私はデンマークのグループ会社に派遣されていた時期があるのですが、現地の街には、自分たちの街に対する解釈の仕方や楽しみ方を自分たちなりに見つけて試したり、実践したりできる土壌があることに気づきました。そのような土壌があるからこそ、愛着が高まるのかもしれないと感じました。

「シビックプライド」に関しても“こうあるべきだ”、という風にはしたくなくて、地域に対する解釈や楽しみ方の多様性を受け入れながら、地域が成長していけるようにデザインしたいと思っています。

「CIVIC PRIDE®ポータルサイト」では、自分たちなりの解釈を実践している方々が徐々に増えている実感があるので、そのようなムーブメントをより促進できるよう注力していきたいと思っています。

小関:シビックプライドについて話すときに、いつも思い出す言葉があって……ある地域で活動している方を取材した際、その方がこうおっしゃったんです。「自分と同じように地域のために頑張っている人たちの存在を知るまでは、ずっと“孤軍奮闘”している感覚だった」と。

全国各地には、地域への思いを胸に活動している人が大勢いますが、思いが強いほど孤独を感じやすいのかもしれません。特に、現場で日々活動している人にとって、自分の思いは“当たり前”のもので、あえて言葉にする機会も少なく、目に見えにくいのが実情です。

だからこそ、こうした思いに、“あえて「シビックプライド」と名前をつけてみる”ことに意義があると思います。名前がつくことで、自分と同じ思いを持つ仲間を見つけやすくなり、新たなつながりが生まれる可能性が広がります。

シビックプライドという言葉は、活動している人たちのエネルギーを、より大きな力に変える可能性を秘めていると思っています。

人から人へ、熱量のバトンをつなぐ

中村:地域・街は、さまざまな考え方や、得意な領域を持つ方々、いわばステークホルダーの集合体です。だから、前述したようにみんなで一緒に目指したくなるビジョンを掲げ、それぞれが持っているものをお互いに共有し合って、「シビックプライド」を醸成する。その過程がまさに「コミュニティクリエイション®」なのかなと個人的には思っています。

そう感じたきっかけは、ある自治体のシティブランディング・プロモーションのプロジェクトです。その自治体では、若い世代の街に対する愛着が低く、いかにして若い人たちが誇れる街の魅力を発見するかが課題でした。

そんな状況を変えていくために、ターゲットと同世代で、街への愛着を持って地域で活動する方々を巻き込み、日々過ごしている景色や暮らしの様子をそれまでとは異なる形で提示するメッセージを制作。

そのメッセージを起点に、これまで自分の街に興味を持てなかった方々も、自らの大好きなシーンを見つけ共有し合うプラットフォームをつくるようにコミュニケーションをデザインしました。

このプロジェクトでは、地域に対する熱量のある若者が集まり、集まった人がさらに人を呼び新たな熱量が生まれていく様子が印象的でした。

小関:私が関わったプロジェクトでは、“シビックプライド名刺入れ”の事例があります。このプロジェクトでは、青森県の竹浪比呂央ねぶた研究所と株式会社ポックと協働し、実際に運行されたねぶたの彩色和紙の端切れをアップサイクルして名刺入れを制作。

「シビックプライド」を名刺入れという“目に見える形”にすることで、その人の心にある街への愛着を再認識するきっかけになればと思いました。

また、制作した名刺入れをリレー形式で贈る企画では、地域のために活動されている人から人へリレーがつながっていくことで、その地域の新たなネットワークの創出につながりました。

小関:「シビックプライド」という言葉が、聞こえが良いだけの言葉やスローガンにならないように気をつけることでしょうか。たとえば「あなたも一緒にまちを良くしようよ!」と言われたら、“いいこと”だから拒否しづらい雰囲気がありますよね。でも“いいこと”って、“やるべき”の押し付けになってしまう危険性もはらんでいる。押し付けで始まる活動は長続きしないので、丁寧にコミュニケーションをとる必要があると感じています。

大事なのは、関係する一人ひとりが自発的であること。それぞれが“自分にとってのシビックプライド”を見つけることが、活動を支える揺らがぬエンジンとなり、持続可能な取り組みになっていくと考えています。

中村:小関の言うように、言葉の強さゆえに、各々が言いたいことが言えなくなる可能性もあると思っているので、異なる立場・目線にいても、それぞれの意見を引き出すための対話が必要です。同時にプロジェクトを牽引する広告会社として、対話の場や機会をつくり、促していく重要性も感じています。

「コミュニティクリエイション®」から広がる、新たな可能性

小関:今後はプロジェクト単体のみならず、各地で「シビックプライド」の活動している人たちが、お互いの活動を讃え合い、交流できるネットワークを積極的に作っていきたいです。

全国各地で活動している方々をさらにさまざまな領域のプレイヤーの方々とつなげることで、新しい化学反応を創出していくことも可能だと考えています。

中村:生活者ひとりひとりはもちろん、企業や自治体など、あらゆるステークホルダーにとって、さまざまな選択肢に出逢うことができ、さらにそこから新たな可能性が広がっていく。そんな場をより多くの街に増やしていくことに貢献していきたいです。

ステークホルダーと共に良質な対話を交しながら、豊かな交流や会話が生まれる、コミュニケーションの会社だからこそできる場づくりに取り組みます。

(写真左)中村 賢昭 統合クリエイティブセンター 兼 都市生活研究所
(写真右)小関 美南 都市生活研究所 CIVIC PRIDE®ポータルサイト 編集長