YOMIKO STORIES

企業の想いをカタチにする地域とのコラボレーション東京 原宿“ウラハラ”で反響を呼んだ、まち×結婚式のイベント「wedding march―まちを、もっと幸せにしよう。」が成功した理由とは?

~「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」レポート第3弾~

 2024年11月21日、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー「TOKYO NODE HALL」にて「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」が開催されました。これは、YOMIKOが2024年に掲げた独自の価値創造モデル「コミュニティクリエイション®」に基づいて様々なプレイヤーをつなぎ、事業課題や社会課題の解決を図る事例を紹介するイベントです。
本フォーラムからのレポート第3弾として、株式会社ウエディングパーク コーポレートデザイン本部 菊地 亜希氏と、YOMIKOフロントライン戦略局 野口 卓矢が登壇した「企業の想いをカタチにする地域とのコラボレーション なぜ社会とのつながりを企業が求めるのか?その想いを問う」についてのレポートをお届けします。

コロナ禍で危機感を感じたことから始まった 「結婚式の未来を構想する」プロジェクト

「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」のメインセッションPart1‐2に登壇したのは、株式会社ウエディングパーク菊地 亜希氏とフロントライン戦略局 野口 卓矢。企業の経営課題や事業成長に貢献するためにクリエイティブの力を活かす仕事に取り組んでいるという野口は、一企業が地域や行政を巻き込みながら街を舞台に「共創」を実現させる事例として、同社と進めるソーシャルアプローチの事例を紹介しました。

 セッション冒頭、菊地氏はウエディングパークの会社紹介をおこないました。1999年に創業、結婚式場のクチコミサイトからスタートしたという同社。現在では、主にウエディング領域におけるデジタルマーケティングの支援やDX支援、教育事業など様々な課題をデジタル技術で解決しているのだといいます。

「当社では『21世紀を代表するブライダル会社を創る』というビジョンを掲げ、カップルの幸せとウエディング業界で働く人々の幸せ、そのどちらも叶えることで結婚が多様な幸せを叶える新しい時代を創ることを目指しています。今回の試みも、そのためのカルチャーづくりとPR活動の一環になります(菊地氏)」

ウエディングパークのフィロソフィー・ビジョン

今回紹介されたのは、2024年に開催された、結婚・結婚式によってまちを幸せにするためのイベント「wedding march ―まちを、もっと幸せにしよう。」。これは、2021年から継続している同社の『Wedding Park 2100ミライケッコンシキ構想』プロジェクトのひとつだといいます。

 開催場所となった街の商店街の50店舗以上が参加し、「まち引き出物」という切り口で来場者に街からのギフトを提供したという同イベント。街が一体となって盛り上がった印象的なイベントだったという野口は、同プロジェクトを立ち上げた経緯について菊地氏にたずねました。

菊地氏によれば近年、年間の婚姻組数約50万組のうち、結婚式を挙げている割合は約半数に過ぎないといいます。そうした中、新型コロナウイルスの大流行が発生。2020年4月の緊急事態宣言以降は多くの結婚式場が休業を余儀なくされ、同年は24万組ものカップルの結婚式が延期、もしくは中止になったといいます。

株式会社ウエディングパーク 菊地 亜希氏

「式を挙げられないカップルのためにと、多くの式場が在宅セレモニーやオンライン配信などを試みる中、テレビの報道では結婚式場のキャンセル料が高くてトラブルになっている、などのネガディブな情報が目立つようになりました。私はそれを見て『自分たちは今こそ、自社の広報ではなく、“業界”の広報にならなければ』と意識を変え、改めて結婚や結婚式の本当の価値を発信していこうと動き出したんです(菊地氏)」

 それが「結婚式の未来を構想する」プロジェクトの立ち上げにつながり、一年に一度イベントを開催する流れになったのだといいます。第一回のイベントは緊急事態宣言のさなか2021年3月に開催。その後、毎年3月に開催し続け、参加者も年々増加して、2024年には6,000人を越える規模にまで拡大。確実に拡がりと手応えを感じるようになったと菊地氏は話します。

「結婚式」は地域を活性化し、社会に貢献できるはず

 続いて、野口から2024年に東京の裏原宿で開催された新たなイベント「wedding march ―まちを、もっと幸せにしよう。」の詳細が紹介されました。

「wedding march ―まちを、もっと幸せにしよう。」

同イベントについて、菊地氏は次のように思いを語ります。

「2023年に新型コロナウイルスが第5類感染症に移行したことで、結婚式の需要もだいぶ戻ってきました。そこで考えたのは、これから先の未来へ向けた可能性についてでした。結婚式の価値は式場の中で閉じるべきものではなく、実は地域を活性化し、社会に貢献できるものなのではないか。この仮説をもとに、地域の式場さんや地元の商店会さんと一緒になってウエディングイベントをおこなうことにしたんです」

 街にゆかりのあるおふたりが、その街を舞台に新たな人生をスタートする。それをきっかけに街中のみんなが集まってお祝いをする。そんな場をつくることで、街と行政、企業が一体になれる、新たな共創の可能性を感じ取ったと菊地氏はいいます。

 同イベントの成功を、一企業としてどのように捉えているかと尋ねた野口に対し、菊地氏は次のように応えました。「定性的な成果で言えば、SNS上に『結婚式のあり方って、変化しているんだな』とか『街とウエディングが一体になったのはおもしろい』などの声が多数上がっていて、われわれが構想した仮説がちゃんと届いていることがわかりました。また、定量的な成果では、最初は100程度だった賛同企業が現在は533まで増加。参加者数も6,000人を超え、制作パートナー企業数も51+50店舗と大きく拡がりました。当社だけでは実現できなかった熱のようなものが、どんどん伝播しているのを感じますね」

「自社の価値」と「顧客の課題」との接点に 「社会の課題」を重ね合わせてみる

 セッション後半は、野口が同イベントを基に、ウエディングパークがなぜ今回のような共創を実現できたのかについて考察をおこないました。野口によれば、通常のビジネスでは「自社の価値」と「顧客の課題」という2つの領域が重なる部分にビジネスが発生するといいます。それに対し、今回の事例ではそこに新たに「社会の課題」という要素を重ね合わせて可能性を探ったことが大きなポイントであると述べました。

「ここでは、顧客(=全国の式場)にとっての重要なビジネス課題が『地域にいかに貢献し、いかに若者から愛される存在になるか』になっています。その視点に立てば、地域の若者といかに繋がりを持つかが大事だとわかります。そして、その課題は当然ながら各自治体も含めた街全体にとっての重要課題になっているんですね」

YOMIKO 野口卓矢

 野口によれば、「若者離れ」という課題を抱えた街は全国でも非常に多いといいます。今回、若者から通称「裏原」と呼ばれる神宮前商店街の人たちも、コロナ禍でめっきり若者の数が減ってしまったという課題を抱えていました。そこで街を舞台にした結婚式イベントをやれば、若者も来るし、街も盛り上がるため、地域活性化にもつながっていくと説明し、多くの賛同が得られたのだといいます。

「裏原に遊びに来た若者たちは、『そんなイベントがあるなら、観てみたい』と集まってくれたでしょうし、みんなでいっしょに祝福する体験をした人たちは『やっぱり、この街は素敵な街だな』と街への愛着や共感がどんどん高まっていったはずです。結果、参加した人はもちろん、イベントに参加した地元のお店の方々まで、『やっぱり、結婚式っていいものだな』と、今一度その価値に気づいていただく機会にもなりました。こうなれば、地元の式場も含めた関係者、すべてにとってのウィンウィンが成立するんです」

 野口によれば、企業ではまずCSRの取り組みが先にあって、次に社会へのアプローチを考えるもの。ただ、それではなかなか長続きしなかったり、企業内で取り組みへの価値が疑問視されたりするケースも多々あるといいます。それに対し、上記の3つの領域がしっかりと重なる部分を見つけることができれば、自社のビジョンの実現につながり、同時に顧客の満足にもつながるのだと説明しました。

「ポイントは、共通課題の発見と、みんなが実現したいと思えるビジョンづくりです。そのためには、ビジネスの成長の先に、社会とのつながりを見出すことが重要です。この部分の設計をいかにおこなうかで、継続性のある『共創』につながるかどうかが決まるのだと思います」

コミュニティクリエイションを実現させる「3つのポイント」

 菊地氏は、今回の裏原宿での「wedding march ―まちを、もっと幸せにしよう。」の成功を次のように総括します。「今回、『wedding march』がうまくいった理由は、YOMIKOさんを始め、関係した方々と同じビジョンを共有し、そこへの熱量を最後まで高く保てたことが一番の要因だと感じます。そんなふうに、ビジョンを共有できるチームが社外にいくつもできていくことは凄く大事なことだと感じました」

 また、地域と一緒にイベントを開催することにも大きな可能性を感じているといいます。「今回は『ウラハラ』で開催しましたが、成功したこの取り組みと座組みを、いかに全国に広げていくか、が非常に大事だと思っています。ゆくゆくは全国各地の多様な地域で『wedding march』が開催され、やがて自走していくようなイベントになっていくこと。それが今後の目標ですね」

 結婚する人たちが街中からお祝いされるような恒例イベントができれば、人が自然と集まり、そこを中心に経済も回っていく。菊地氏は、「Wedding Park 2100」によって街での結婚式や式場の価値を高めていくことができれば、「この街に住みたい」「この街にもっと貢献したい」と願うシビックプライドを持つ人たちも、どんどん増やしていけるのではないかといいます。

「もともと、『Wedding Park 2100』はあくまでも広報活動、ブランディングの一環として始めたものでした。今後はそこをいかに自社の事業活動につなぎ込むかが重要になってきます。この4年間の活動を通して知り合った様々なコミュニティとの関係性を、事業やサービスにしっかりと活かしていく。そんなふうに、今後もブランディングとビジネスの2軸でチャレンジを続けていきたいですね(菊地氏)」

 野口も本セッションのまとめとして、「コミュニティクリエイションを実現させる3つのポイント」を以下のように提示しました。

①「社会の視点から、共通課題を発見する」
②「共有できるビジョンで関係人口を増やす」
③「クリエイティブの力で共創へ巻き込む」

 野口によれば、たとえ今現在、見えている課題がなかったとしても、バックキャスティングの視点で考えることで自分たちだからこそ取り組むべき「社会とつながる課題」が見えてくるのだといいます。これをみんなと一緒にディスカッションをしながら発見することが、最初の大きなポイントだとしました。

 それが見えてきたら、②の「共有できるビジョン」を持つ段階に入ります。課題に対して具体的な解決法を考えること。ウエディングパークでいえば、それは「まちを、もっと幸せにしよう。」にあたります。
同じ課題を感じている人たちが「そういうビジョンなら、自分たちも関わりたい!」と思えるようなテーマをきちんと設定して言語化し、発信していく。これが関係人口を増やす大きなポイントだと思うと野口は話します。

 最後の③の段階では、言葉だけではなくビジュアライズして、クリエイティブの力で人々の間に共感が生まれる形で巻き込んでいく。これは最終的には人が実行することなので、そこに関わる人たちが「自分も参加したい!」と感じて自ら動きたくなるようなムーブメントをつくれるかどうか、ここが大きなポイントになると述べました。

 最後に野口は、一社だけでは社会課題の解決は難しい、と感じた時こそYOMIKOが培ってきた「共創」を実現するための様々なケイパビリティを活用して欲しい、と述べました。そして、これからは自社の課題を自社だけで追求するのではなく、会社の壁や業界の壁を越えて、社会の大きな課題を、より大きなチームで解決していく時代を迎える。そんな新しい「共創」のかたちをぜひ、みなさんと一緒に、いち早く創り出していきたい、と話を締めくくりました。

菊地 亜希氏

株式会社ウエディングパーク コーポレートデザイン本部 

ブランドマネージャー

大学在学中よりフリーライターとして活動し、2004年カルチャーマガジン『Wooly』を初代編集長として創刊。2006年サイバーエージェントに入社し、WEBディレクターとして複数のメディア立ち上げ・運営に携わる。2011年ウエディングパークに入社後、新サービスの開発やコンテンツ編集・運用などを経験。2014年ブランドマネージャーに就任し、現在は、広報領域を中心に全社のブランディングを統括している。

野口 卓矢

フロントライン戦略局 

STED

2002年 読売広告社に入社。コミュニケーションデザイナー / ワークショップデザイナー。クリエイティブ局でアードディレクターとしてキャリアを重ねた後、コミュニケーションデザイナーとして、広告、SP,PRといった領域を横断した様々なブランディング活動を手掛ける。2021年に経営企画局に配属されたのをきっかけに、経営とクリエイティブの創造的な関係づくりを追求するようになり、現在は事業戦略からプロダクト開発、組織開発と、新たな領域での貢献活動を展開している。