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推しから読み解く、愛されるブランドのヒント

2021.12.22

都市生活研究所では、2021年10月に「YOMIKO 都市生活研究所フォーラム2021」を開催致しました。
今回は、生活者フォーサイトセッション「推しから読み解く愛されるブランドのヒント」での研究発表内容をお届けします。

「推し」への注目

SNSやメディアで頻繁に目にするようになった「推し」という言葉。
あなたはどんなイメージをお持ちでしょうか。

「推し」という言葉を辞書で引くと、以下のような定義がなされています。

人やモノを薦めること、最も評価したい・応援したい対象として挙げること、
または、そうした評価の対象となる人やモノなどを意味する表現。

ー 実用日本語表現辞典

この言葉が世間一般に知れ渡ったのは、2010年ごろの「AKB選抜総選挙」がきっかけと言われています。
「誰々推し」という形で、アイドルグループの中でも個人的に特に応援したい人を表現する言葉として、アイドル界ではすっかりお馴染みの言葉となりました。

そんな「推し」という言葉は、マーケティングにおいても、“アイドルやコンテンツ好き”に向けたコミュニケーションや商品づくりのキーワードとしてよく用いられるようになりました。

「推し」という言葉の使われ方に変化が訪れている

しかし、ここ数年で、「推し」という言葉の使われ方に大きな変化が訪れています。
どうやら、アイドルやコンテンツについて語る場合だけではなく、多くの人が普段の生活の中で使用する言葉になっているようです。

私たちは、そんな一般化し始めた「推し」という言葉に注目し、独自調査を実施。
その調査結果から、15歳~59歳までの男女において半数以上が「推しがいる」ことがわかりました。

さらに、その対象は企業・ブランドや乗り物、建築物、はたまた身近な人にまで及んでいます。
特に、「企業・ブランドを推している」と回答した人は29%にのぼり、「スポーツチーム・選手」を上回っているのも注目すべきポイントです。

ではなぜ、「推し」という言葉はこのように一般的に使われるようになったのでしょうか。
また「好き」や「ファン」という言葉もありながら、なぜ生活者は「推し」という言葉を使うのでしょうか。
私たちは、そこに “今の時代の生活者のニーズ” を理解するヒントが隠されているのではないかと考えました。

日常的に使われる「推し」という言葉が意味するものとは

私たちは「推し」を深く知るため、「好き」という言葉との違いをどのように感じているのか、調査を実施。
すると、「推しと好きは違う」と回答した人が43%に上りました。

具体的にその違いを尋ねてみると、「好きは恋愛、推しは母性」「推しは育てる・貢献する意味も含む」という意見や、「好きは客観的な視点だけれど、推しはもっと近いところで応援している感覚」「推しには、自分の行動が利益になってほしい」といった意見が見受けられました。
どうやら、「推し」と「好き」には、生活者の心持ちとして、曖昧なようで明確な違いがあるようです。

さらに、「推せる」という気持ちを呼び起こしている要素は何かについても探ってみると、「見た目の良さ」「完璧さ」だけではなく、「人間臭さが見える」ことが重要であることがわかりました。

では、企業やブランドに対して「推し」という言葉を使う場合は、どのような意図が含まれているのでしょうか。

「推せる」のは、完璧よりも“不完全“な企業・ブランド

そこで、今度は「どんな企業・ブランドであれば推せるのか?」聞いてみたところ、興味深い結果があがってきました。
「完璧で非の打ちどころがない」が9.3%(非常に推せる)であったのに対して、「地味だが実はいいところがある」は19%(非常に推せる)と、9.7ptの差をつけて高い結果となったのです。

他にも「どこか不器用さがある・人間臭さが垣間見える」が16.7%(非常に推せる)の回答を得ており、ブランドや企業においても「完璧なものよりも、少し不完全なところがある」ことが、「推したい」気持ちを醸成する一つのポイントになっていることがわかります。

“不完全さ“を醸し出す要素をさらに深掘っていくと、「完璧ではないが目標がぶれないまっすぐさがある」「下積み・開発・試行錯誤などのストーリーがある」という “頑張りを称えたい” 気持ちや、“成長を見守りたい” 気持ち、また「ニッチな要素があり自分で開拓した気分が味わえる」という “発掘感” が上げられていました。

企業・ブランドのどんな“ふるまい”が「推せる」のか

では、具体的に企業やブランドがどのような“ふるまい”をしていると「推せる」のか。
まず挙がったのは「消費者の意見を聞いてくれる・取り入れてくれる」こと。その次に「社員が楽しんで仕事をしている・商品を提供している」ことでした。

「消費者の意見を聞いてくれる・取り入れてくれる」について、さらに具体的なコメントを覗いてみると、「ユーザーの困っているところを改善する様子を発信してほしい」「それがたとえできなくても、その理由を説明するなど、ユーザーの声は届いているところを見せてくれると推せる」という声や、「多くのこだわりや苦労談まで分かると推せる」という声がありました。

つまり、単にアンケートなどで意見を聞いてくれるということではなく、『苦戦しているところ含め、試行錯誤した姿までリアルに見せてくれる』『一緒に並走している感覚を味わえる』ことが重要だと言えます。

続いて回答の多かった「社員が楽しんで仕事をしている・商品を提供している」という項目についても具体的なコメントを覗いてみると、「社員が“嬉しそうに”商品紹介をする」「その人のオリジナルの使い方まで編み出してしまう、自慢するくらいの勢いで商品への思い入れを語る」といった声が多くみられました。

このように『社員が一生活者として、等身大の視点や感情も含めて話してくれる』『リアリティを感じられる』ことが、「推せる」感情に繋がるようです。

企業やブランドを「推す」とは

改めて、企業やブランドを「推す」とはどういうことなのでしょうか。
ここまでの調査結果をふまえ、「好き」という言葉と対比させながら、企業・ブランドと生活者の関係性を整理したものが下図です。

「好き・ファン」は完成されたものを愛でる・称える感覚に近く、自分はあくまでそれを受け取る・与えられる側だと考えます。
一方、「推し」は、「力になりたい」「頑張りも認めたい」「かわいらしくすら思える」といったように、未完成なものを支えたい、いわば「世話を焼く」側にいることがわかります。

実際に推されている、とあるインテリア雑貨メーカーの事例では、「ここに収納が欲しい!」というありとあらゆるニッチなニーズにいち早く気づき、商品化していく徹底ぶりに対して「ここまでやる狂気を認めざるを得ない」「ニッチなところまで網羅する頑張りを称えたい」という声が上がっています。単に商品の素晴らしさを称えるのではなく、その商品開発に対する姿勢や行きつく過程をチャーミングなものと捉え、「推し」という言葉を通して称えているのです。

企業やブランドが、様々な戦略で生活者との接点や関係性を構築しようと奮闘しているいま。
『推し』は、生活者との関係性を築くうえでのヒントになるかもしれません。
私たち読売広告社は、企業やブランドの新しい愛され方を探るべく研究を進めてまいります。


<研究メンバー> 左から、
●古川 亮輔|2010年読売広告社入社/データドリブンマーケティング局第2マーケティングルーム所属/ストラテジックプランナー
●内海 佑一朗|2021年読売広告社入社/データドリブンマーケティング局第2マーケティングルーム所属/ストラテジックプランナー
●上野 涼|2020年読売広告社入社/データドリブンマーケティング局都市生活マーケティングルーム所属/ストラテジックプランナー
●藤井 明子|2017年読売広告社入社/データドリブンマーケティング局第3マーケティングルーム所属/ストラテジックプランナー
●三上 詩央|2018年読売広告社入社/都市生活研究所 生活者フォーサイト研究ルーム所属/ストラテジックプランナー
●石川 晃|2020年読売広告社入社/データドリブンマーケティング局第3マーケティングルーム所属/ストラテジックプランナー
●山下 雅洋|2012年読売広告社入社/都市生活研究所都市インサイト研究ルーム所属/ルーム長/インサイトプランナー
<その他メンバー>
●鹿毛 絵梨花|2016年読売広告社入社/クリエイティブ局第1クリエイティブルーム所属/コピーライター/プランナー