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「シビックプライド」ポータルサイト制作チームが語る
シビックプライドへの思いと今後の展開

2023.06.15

市民が都市に対して持つ「愛着」や「誇り」のことを指すシビックプライド。近年とくに注目度が高まり、シビックプライドの醸成を意識しながらまちづくりに取り組む自治体も、年々増えてきています。当社は2006年より「シビックプライド研究会」と共に研究を進め、「シビックプライド」の商標を持って活動を展開しています。そんな中、2023年春に、より広く普及していくためのポータルサイトをオープンしました。制作に関わったメンバーにサイトをオープンしたきっかけや目指す未来について語ってもらいました。

「シビックプライド」サイトをオープンしたきっかけや思いとは

小関:最近、色んな記事やシーンで「シビックプライド」について語られるようになってきましたが、その情報がまとめられていたり、情報を求めている人たちがつながれる場所ってなかったんです。そこで、これまでずっとシビックプライドについて研究してきた自分たちで、そのような「場づくり」にチャレンジしてみようと動き始めた…というのが表向きの理由なんですが…もちろんそれも大きいんですが、動機はもっとシンプルで。今回、サイトの立ち上げをきっかけに行った取材を通して、地域や街のために活動している方々の姿勢や情熱に触れて「かっこいい!伝えたい!」と感じたからなんです。

山下: YOMIKOは、シビックプライドに関する書籍の出版や「シビックプライドランキング」の発表といった活動を15年前から行ってきていますし、相模原市との取り組みや、柏市「柏の葉スマートシティ」、そして渋谷区の「MIYASHITA PARK」など、シビックプライドを意識した様々なプロジェクトにも携わってきました。
そんな中、私たちは、常々「志」をもって活動している人たちの熱量や行動力、小関さんがさっき言った「カッコよさ」がそのまま伝わる場があったら、と考えていました。そのカッコよさを伝えることで、アカデミックで難しくなりがちな「シビックプライド」の民主化を図っていくようなことができたらいいなと思っていたんです。

黒田:僕もサイトのコンセプトを考えている段階から、「専門家のためのサイト」にはしたくないと思っていました。みんなが親しみやすいサイトにしたいからこそ、イラストレーターを起用するなどして、カジュアルな見た目にすることを心がけました。

木村:それは私も同じ意見ですね。私はデザイン、UIやUXを担当しているんですけど、基本的に「シビックプライドをかわいくしたい」と思ってつくっています。かわいいというのは見た目という意味だけではなく、誰でも、それこそ何歳の人がこのサイトを訪れても、親しみやすくて、わかりやすく、開かれた場にしていきたいということを意識してます。あとは「上から目線」にならないことですね。

小関:それは大事ですよね。実際にシビックプライドを実践している人に取材すると、当事者自身は、実はそれほど「シビックプライド」というものを意識して活動しているわけではないんですよ。あくまで自分の、もっとこの地域をよくしたい、という気持ちに素直に活動していて。なのでいつも「その素敵な活動にあえて名前を付けるとしたら、シビックプライド、ということなのかもしれませんね」という気持ちでいます。

木村:わかります。シビックプライドって、そこに住んでいる人の心の持ちようですし、誰の所有物でもなくて、色んな形があっていいものですよね。なので、シビックプライドって、実は後付けで、だからこそ「シビックプライド」というコトバだけを押し付けたりしたらいけないんじゃないかと感じています。

小関:すでに現地で大活躍されている方に、ことさらに名前をつけてあげます、なんて、それはおこがましいので避けたいですよね。とはいえ、名前をつけたからこそ生まれるものもあると思っています。例えば、名前をつけることで仲間を見つけやすくなりますし、つながりが生まれ、拡がっていく可能性もあると思います。

「シビックプライド」サイトにできることやその役割とは

黒田:自分はこのサイトのコンセプトや全体構成を担当させてもらいました。その過程で、シビックプライドに関する生活者の声を探ろうとSNS分析ツールの「Talkwalker」を使って、分析を行いました。その結果、世の中のシビックプライドの声がリアルタイムでどんどん広がっていっている様子を見ることができたんです。将来的にはこのサイトがきっかけとなってシビックプライドに関する個人のつぶやきが増えていったらうれしいですね。
あと、サイト内の広がりで言えば、地域を盛り上げようと頑張っている人が、同じように情熱をもって活動している他の地域の人たちとつながって、情報交換できるような場へ発展していってくれたらいいなと思っています。

木村:例えば、熱量はあるけどつながりやノウハウがない人がこのサイトに来て、全国にこんなに色んな活動があることを知ったら、その人にアイデアが湧いてくる気がするんです。だからアイデアに出会える場所にしていきたいですし、もしあの人の話を聞きたいということなら、私たちが、活動をしている人同士の渡し役にもなれる。そうすることでシビックプライドの拡がりに役立てばいいなと思っています。

山下:それを聞いて思い出したんですが、ある市役所に、すごい熱量をもって活動している職員がいらっしゃって。「この街が好き」という人を見つけては自ら取材に行ったりしているんですが、その熱心さに初めは周囲から不思議な目で見られていたそうです。もちろんそれは本人が好きでやっていることなので、誰かとつながりたくて、ということではないかもしれませんが、でも、自分と同じようなことをしている、全国の「カッコいい」人たちの具体的な声や活動について知ることができて、困ったときに力を貸してくれそうな仲間やアイディアに出会える場があったらきっと役立つんじゃないかと思います。

広告会社がシビックプライドに関わる意義とは

小関:シビックプライドは地方創生や人口減少などの社会課題と一緒に語られることが多くて、それは決して悪いことではないのですが、そればかり念頭に置かれて「やらねば!」と頑張らなきゃいけなくなるのは、正直しんどいと思うんです。それに、実際に取材させていただいた方々はとても楽しそうに活動されて、社会課題に向き合う姿勢として、とってもすこやかなんですよね。そういう、なんというか、左脳で考えがちな社会課題に対して、ちゃんと右脳的なワクワク感を持ってアプローチする、そんな軽やかな向き合い方を提案できるのは、私たちの得意分野だと思います。ちゃんとワクワクすることって実はものすごくスキルとエネルギーがいることなので、社会課題が山積している分野こそ、広告会社がかかわる意義があるのかなと思いました。そもそも、私たちも楽しんでこのサイトをつくってますし。

黒田:自分は北海道出身で、母は地元でお店を経営しています。だからこそ思うんですけど、地方には良いものがたくさんあるけれど、良ければ売れるか、というとそんな簡単な話ではないんですよね。広告会社ならば、コミュニケーションの力で、都市と地方を繋げたり、モノ・ヒト・コトの素晴らしさや、新しい価値を一緒に考えたりして、良いものを全国に伝えられる「架け橋」になれるんじゃないかと思っています。

山下:確かに、例えば、ねぶたのかけらの名刺入れ(「YOMIKO CIVIC PRIDE ACTION」プロジェクト)もそうでしたけど、地元の皆さんにとっては使い終わって産業廃棄物だったものが、視点を変えるだけで世界にひとつだけの価値あるものになる。広告会社って、そういう、第三者の視点というか、いつもそばにあるからこそ気付きにくい新たな価値を見つけることが得意で、そこから新しい流れをつくって拡げることができますよね。

YOMIKO CIVIC PRIDE ACTION プロジェクトURL: https://civic-pride.com/casestudy/case05/

木村: 0から1をつくること以上に、1をどれだけ10とか100にできるのか、そこに様々な分野で経験とノウハウを持っているところが私たち広告会社の“強み”だと思うんです。ネーミングやパッケージ、そして「場」の創造というカタチで、もっと多くの人に、まだ気づかれていない地域の魅力や価値を、手に取って親しんでもらえたり、もっとたくさんの人に知ってもらうお手伝いをしていきたいですね。

このサイトを通じて実現したいこと、目指す未来

小関:たとえばプロジェクトや事例を紹介するときに、概要や結果を伝えるだけになってしまうと、急に温度が冷めた印象になってしまうんですよね。そうではなく、活動しているその人の想いの根っこや情熱の源などを“物語”にしてお伝えするような、体温を感じられるサイトにしていきたいと思っています。ブログやSNSでも元気がもらえるようなアカウントがあるように、このサイトも、人の気持ちに触れて心が動くような「場」になっていったらいいなと思っています。

木村:私も「人」を主役にしたオープンでフラットな世界観つくりにこだわりたいです。これからコンテンツが増えたり、切り口が変わったりするかもしれませんが、学術的な固い内容になるのではなく、老若男女が集い、楽しめて、そして自然と出会いが生まれていくような、そんな開かれた「場」にしていきたいですね。山下:今もまさにそんな雰囲気ですが、子供が訪れても楽しめる、かわいくてカジュアルな場になればいいんじゃないかと思います。ある街では小学生が教育の一環としてシビックプライドの活動をしているケースもあって。このサイトを訪れた小学生がシビックプライドに興味をもってくれて、将来、街づくりに携わったり、ボランティア活動を始めたりするような、そんなきっかけになれたら嬉しいですね。

黒田:自分がYOMIKOに入ったのは、地方の企業や地元の個人・小規模企業などとコミュニケーション領域で仕事がしたいと考えたのが理由です。だから、このシビックプライドサイトに関われているのは、本当に嬉しいです。このサイトの活動を通じて、いつか自分の地元も取材しに行けたらいいなと思っています。

山下:こういういい活動だからこそ、サステナブルなものにしたいですよね。なので、ビジネスとしてもちゃんと発展性のあるものにしていくことが大事だと思ってます。シビックプライドには、人を動かす力があると思っていて、その結果、例えば活動人口を上げられるかもしれない。今後そうした力や効果を具体化させていけば、さらに価値も高まっていくと考えています。今もいくつかの自治体の皆さんとお話させていただいていますが、このサイトが成長していくことで、日本中のさまざまな自治体とつながって、どんどん新しい取り組みに繋がっていったらいいですね。

木村:YOMIKOには全国に支社もあるし、自社内で果たせる役割がたくさんあります。熱量はあるけれど人脈やノウハウがないとき、シビックプライドサイトを通してYOMIKOに連絡していただければ「橋渡し」もできる。それらが経済活動の一環となって最終的には地域に還元していけるようになれたらうれしいです。

<プロフィール>(写真左から順に)

都市生活研究所
「シビックプライド」サイト編集長
小関 美南

都市生活研究所
局長代理
山下 雅洋

メディアビジネスプロデュース局
デジタルメディア推進部
パフォーマンスクリエイティブグループ
シニアクリエイティブプランナー
木村 朋子

マーケットデザインセンター
メディアプランナー
黒田 太郎

「シビックプライド」サイトのご紹介

今春、当社として「シビックプライド」をより広く普及していくためのポータルサイトをオープンしました。
「シビックプライド」の調査報告レポート、都市(まち)や地域の事例など様々な関連コンテンツを集約したサイトとなっています。また、ソーシャルリスニングツール「Talkwalker」を活用して、世の中における「シビックプライド」関連ワードの拡散状況をリアルタイムに知ることができます。

「シビックプライド」サイトはこちらから https://civic-pride.com

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