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多様化社会と「解放」される生活者

2023.09.20

都市生活研究所の新しい研究プロジェクト ―「新カテゴリーニーズ研究プロジェクト」とは?

 「新カテゴリーニーズ研究プロジェクト」は、都市生活研究所が新しい座組みで取り組む、新商品開発や新カテゴリー創造をサポートするためのナレッジ研究活動です。2022年度に研究をスタートし、外部パートナーとの連携を2023年度からスタートした、今まさにソリューションを開発中のプロジェクトです。
 先日の都市生活研究所フォーラムでは、そのアプローチとチーム体制を発表しました。立ち上げの経緯や強みとするソリューションの概要、今後の展開などについて、都市生活研究所メンバーの小林、西川、そして外部パートナー「未来予報社」「TNC」の皆さんにお話を聞きました。

■ いままで誰も気づいていなかった、 “新しいカテゴリーニーズ”が生まれる瞬間がある

―― 新カテゴリーニーズ研究プロジェクトを立ち上げた「きっかけ」を教えてください。

小林: 2022年にプロジェクトを立ち上げる以前から、都市生活研究所としては様々な研究に取り組んできました。2019年からの都市生活研究所ビジョン「THE FUTURE IS ALREADY THERE IN THE CITY.」がありますが、その未来の兆しは年々見えにくくなってきている、という課題感がありました。

では、「どう未来を見つめていくか?」と考えた時に、いわゆる王道の研究とは違う、ちょっと実験的な取り組みをしてみようと視点やアプローチを変えていった先に、このプロジェクトが生まれました。

西川:いままで誰も気づいていなかった“新しいカテゴリーニーズ”が生まれる瞬間がある…、これがこのプロジェクトの原点になっています。

例えば、男性メイクアップ市場。「メイク=女性だけのもの」という既成概念から、ここ数年で若い男性が当たり前のようにメイクをする時代になりましたよね。あらゆる業界で生まれている“新しいカテゴリーニーズ”そこにアプローチできないか?という思いからこのチームがスタートしました。

新カテゴリー誕生のサイクルが早くなってきていること への危機感と着目

西川:この研究領域に取り組むべき理由は3つに整理できると思っています。

1つ目は「ブルーオーシャンの領域」という点。まだ誰も気づいていない領域だからこそ、競合も存在しない。ここをいち早く見つければ、カテゴリーの先駆者になれるかもしれない!という、すごく夢のある領域だと捉えています。

2つ目は「事業会社では取り組みにくい領域」という点。まだニーズが顕在化していないからこそ、広告会社の私たちが取り組む意義があると考えます。

そして3つ目が1番の決め手ですが「事業誕生~成長のサイクルが速くなっている」という点。ここへの危機感がきっかけとなりました。

■海外の先進ビジネス事例研究が起点

―― 都市生活研究所と外部パートナーの協業プロジェクトだとお聞きしました。具体的にはどんなチームなのでしょうか?

西川:いまお話した通り、新カテゴリーニーズは、まだ見ぬ市場。そんな未知の市場を、どうやって見つけるのか?そのベースになる分析が、「海外先進ビジネス事例の収集&分析」です。

多くの新市場は海外で生まれ、その数年後に日本に入ってくることが多い。そこで、まずは海外ビジネス事例の分析をするチーム編成をしました。それが「新カテゴリーニーズ研究チーム」です。

■「未来予報社:イノ―ベーション」×「TNC:海外在住ライフスタイルリサーチャー」×「都市生活研究所」

小林: 具体的には、私たちYOMIKO都市生活研究所を中心に、「未来予報社」「TNC」という2社との協働プロジェクトになっています。

「未来予報社」は、SXSWの日本事務局をやっている会社でもあります。世界各国のイノベーション事例を独自のタグ付けでデータベース化していて、その小さな兆しから「未来人像」を描いています。実際にいろんな事業会社さんと「家電の未来」や「働き方の未来」などを考え、商品開発などにも活かしています。実力と実績ともに惹かれ、お声がけさせていただきました。

「TNC」は、世界各国にライフスタイルリサーチャーと呼ばれる、生活やトレンドに精通する日本人女性のネットワークを抱えている会社です。アジアトレンドランキングや世界の食のトレンドを紹介するレポートも定期的に発行しており、そのノウハウやナレッジ、独自のリサーチネットワークに惹かれてお声がけしました。

■いま生活者は、何から「解放」されようとしているか?という問い

―― 都市生活研究フォーラムのタイトルは「多様化社会と【解放】される生活者」というタイトルでしたが、この「生活者の【解放】」とは何でしょうか?

西川: いま説明した2社×都市生活研究所の3社協業体制の新しいチームで分析をする中で、私たちが大切にしたのが「いま、生活者は、何から【解放】されようとしているか?」という問いかけです。

西川:これらの問いかけを起点にしながら、私たちのチームは新カテゴリーニーズを探っています。

■重要なのは、社会や生活者における「次の解放は何か?」を見極めること。

小林: 2022年度は、まず約80の海外ビジネス事例を分析。「それらは何から解放しているのか」に注目して、事例を読み解くことからスタートしました。(下記の解放パターンはあくまで一例)

西川:私たちが重視しているのは、「次の解放は何か?」を見つけること。それこそが新しいカテゴリーニーズの発見に繋がる、と考えています。だからこそ、その「次の解放を見つける」にはどうすればいいのか?ということに取り組んでいく。それがこのチームになります。

「次の解放」を見つけるヒント…解放発見プログラム

――「次の解放は何か?」という発想は、フォーラムの聴講者アンケートでも好評だったと聞いています。そのアプローチについて少し具体的にお話いただけますか。

西川: まだ誰も気づいていない「解放」については、定量/定性調査をしてもなかなか出てこないですよね。そこで私たちは非言語アプローチをベースにした、大きく3つのStepで構成した「解放発見プログラム」というものを作成しました。

曽我さん:Step1のキープレイヤーが、私たち「未来予報社」になります。
未来予報社にある大量の海外先進事例データベースを活用し、それをもとに「未来人と【テーマ領域】の関係性」について徹底的に想像を膨らませ、仮説を立てるというのがStep1の概略です。

私たちは「What〜if発想」と呼んでいますが、「もし〜だったら?」という視点が発想法のポイントになります。テーマ領域だけではないアプローチで、未来人の暮らしや価値観変化について考えうる限り可能性を洗い出すのが特徴です。A/B/C領域…といったように、全く別ものと考えられがちな他領域の新技術が拡大普及したら、今回のテーマ領域のライフスタイルや価値観にも変化がおきるはず…と、かなり妄想にも近いようなことも含めて未来人の価値観の変化を想像し、「超未来的な解放の予報」を作っていきます。

▲未来予報社
イノベーションリサーチの専門会社として、独自のイノベーションリサーチアプローチで評価。小さな未来の兆しをもとに多くの国内大手企業のコンセプトデザインやコンサルティングを手がける。

小林:未来予報社さんのデータベースは独自のタグ付けがされているので、テーマ領域外のイノベーションによる影響なども妄想できるというのが強みですよね。事業会社の目線では自社領域のイノベーションについてはウォッチしていても、自社から遠い領域まではなかなか手が回らないのではないかと思います。ですので、未来予報社さんのデータベースを活用する本プログラムは、ユニークなアプローチとなるのでは?と考えています。

堀川さん:次にStep2のキープレイヤーが「TNC」です。
Step1の妄想に近い仮説を、世界中のライフスタイルリサーチャーに共有し「より現実感のある仮説」に磨いていく、というのがStep2の概要です。
TNC独自のネットワークである海外在住の日本人リサーチ集団「ライフスタイルリサーチャー」を活用し、「次の解放」に繋がる共感や背景を探っていくというアプローチがポイントになります。

具体的には、Step1の「超未来的な解放の予報」に親和性の高い、既に予兆のある国とのオンライン・インタビューをプログラムに組み込みました。仮説に近い行動をしている「解放先駆者」と呼べる人たちを選び、直接インタビューすることが可能です。このような方法は、仮説の精緻化へむけた新しいアプローチ手法だと思います。

▲「TNC」
世界70カ国100地域600人の海外在住日本人女性のネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー Ⓡ 」を主軸に各種事業を行う、リサーチ&クリエイティブカンパニーとして活躍。

西川: ライフスタイルリサーチャーは、その地に5年以上在住し、現地人のパートナーを持つ人を中心に組成しているので、他社にはない独自性の高いネットワークだと感じています。TNC独自のメソッド=日本人目線かつ海外在住者目線で複眼的に分析すること、さらに世界70カ国にアプローチできる受容調査でもあるという点が特徴で、他にはなかなか無い検証手法ですよね。

小林:そして最後のStep3を、「都市生活研究所」が推進していきます。ここまでのステップで精緻化してきた仮説と日本とのギャップを明らかにして、近い未来に日本でも起こりうる「次の解放」を発見していく…というのがStep3の概要です。

例えば、解放できるかどうか?においては「規制緩和」や「政府方針」などの影響もあるので、日本の規制緩和動向なども踏まえるなど、私たち都市生活研究所の1988年から日本の大手デベロッパーの街づくりに併走してきたというノウハウも活かします。

つまり、Step3のポイントは、近い未来の日本へのローカライズ。日本だったら?という視点で仮説をローカライズし、日本における「次の解放」を発見&言語化していきます。最終的には、簡易的な事業アイデアや商品アイデアにまで落としていくのが、「解放発見プログラム」の一連の流れになります。

そのとき人類は、何から「解放」されるのか?

―― 最後に

西川: いま世界はAIの話題で持ちきりですが、きっと生成形AIの進化は私たちの暮らしをダイナミックに変えてゆくはずです。私たちの思考をAIがすべて先回りする時代になれば、もはや生活者のニーズやウォンツをすべて叶えてくれるようになるのかもしれません。

そんな時代にどう向きあうのか?その解放について今から考えるべき。そんなことも見据えながら、引き続きこの「解放」に注目して、研究を続けていこうと思っています。

このような私たちの危機感から始まるアプローチに対して、新商品開発チームの方を中心に、すでに複数社からお声がけをいただいております。ご興味がございましたら、ぜひお気軽にお声がけいただければ幸いです。

<プロフィール>(写真後ろ左から順に
都市生活研究所 都市生活研究所都市生活ビジネスデザインルーム 西川 検斗
都市生活研究所 都市生活コンサルティングルーム 小林 亜也子
VISIONGRAPH Inc. / 未来予報株式会社 代表 曽我 浩太郎
TNC 取締役 堀川 僚平

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