SPECIAL CONTENTS

質の高いものほど無料に。YouTubeで話題のチャンネル構造について

2019.07.31

前回はYouTubeにおける集客構造のデザイン要素として4つの項目を抽出しました。
・動画コンテンツを構成する成分→「娯楽性」と「ノウハウ」
・チャンネル発信の条件→「一貫性」と「習慣化」
今回は第2章として、実際にYouTube内で活性化しているチャンネルにフォーカスし、その構造を紐解いていきます。

視聴者のみならず、投稿者からも愛されるチャンネル

YouTubeで投稿する際に、最も気をつけるべき項目の1つとして著作権問題があります。投稿者はコンテンツ制作において、BGMや画像、動画素材などが著作権を侵害していないか、とても慎重になります。(YouTubeがローンチして間もない頃から私も動画をアップロードし続けてきましたが、昨今はさらにその規制が厳しくなってきているように感じます。)

そのため、多くの投稿者がフリーの素材や音源を活用して、コンテンツを制作しています。そのような投稿環境に呼応し、あるカテゴリーが台頭し始めます。

それは「no copyright music」というカテゴリーです。要するに著作権フリーの音楽素材を扱うチャンネルカテゴリー群です。これだけを聞くと、WEB上に従来からある「フリー音源サイト」と変わらないのではと感じる人もいるでしょう。

しかし、実は大きく異なる点があります。それは、活用できる無料素材が「有料コンテンツ並みに質が高い」傾向にあるということです。また素材ごとに、曲名とアーティストのプロフィールがしっかり明記されていることも特徴の1つです。

これにより、「投稿コンテンツに対してなるべく高いクオリティを担保したい」という欲求がありながらも「著作権に配慮しなければならない」という投稿者のジレンマを一気に解消しました。

また「no copyright music」では格納している素材が、有料コンテンツ並みに質が高いため、視聴者からは素材チャンネルというよりも、立派な音楽チャンネルとして認識され、素材動画に多くの再生回数やコメントが付くケースもあります。

このように「no copyright music」というカテゴリーは、視聴者には「音楽チャネル」、投稿者には「素材チャンネル」という性質を帯び、両者のニーズをうまく取り込み急速に巨大化していきました。

質の高いものほど「無料」という発想

本来、しっかり作り込まれた質の高い音楽ほど、それに見合った報酬をアーティストは受け取るべきだと考えます。しかし、この「no copyright music」では、視聴者がその音楽を無料で享受するだけに止まらず、素材としての使用も許可されています。

では、なぜこのようなモデルが成立するのでしょうか。

それはYouTubeの広告収益モデルが起因しています。
YouTubeでは特定の条件を満たしたチャンネルにおいて、自身の投稿動画に広告を付与することができます。それにより広告が視聴されるとYouTubeより広告収益を受け取ることが可能になります。

「no copyright music」は楽曲使用の条件として、「素材を使用した動画の概要欄に使用した曲のオリジナルのYouTubeURLと曲名、アーティストのプロフィールを追記すること」という項目を設定しているケースが多いです。

これにより、素材を提供者したアーティストは、自身のチャンネル内で再生回数を獲得しつつ、素材としても活用されることで、自身のチャンネル以外の視聴者たちにも楽曲と自分の名前をリーチさせるのです。

上記のようなモデルの場合、より質の高い素材であるほど、より強力に拡散が促されます。それにより、他者の動画からオリジナル動画への誘導も強化され、結果的に広告収益の増加が見込まれます。

このモデルは「広告収益」だけではなく「アーティストとしての認知向上」を促すという報酬も秘めているため、優秀な若手アーティストたちは、どんどん質の良い楽曲を解放し、それらが、あらゆる投稿者に動画BGMとして採用され、YouTube内で活性化しています。

特に大物YouTuberに採用されると、彼らが抱える大量の視聴者にリーチできるため、一気に有名アーティストとして認知されるなど、大きな報酬を得る可能性もあります。

また昨今では「no copyright music」カテゴリーのアーティストたちが集い、そこで次々に楽曲を配信している、さらに上位の音楽チャンネルも存在します。このようなチャンネルの登場により、我々投稿者は、より効率的に楽曲を吟味できるようになりました。

実際に登録者数が2,000万人を超える巨大なチャンネルもあり、そこに掲載されるだけでも、多くの報酬を得ることができるため、より優秀なアーティストがそのチャンネルに集まるという好循環も見受けられます。

no copyright musicイメージ

以上のように、YouTubeの広告収益により、視聴者は無料で楽曲を享受しつつも、楽曲提供者のアーティストには報酬を得ることができる特殊な構造が成立しています。


おわりに

いかがでしたでしょうか。
今日ではYouTubeというメディアに格納されている「チャンネル」そのものが、既にメディアのような振る舞いを見せており、広告収益を土台とした三者間市場モデルを確立しています。

これは今後のチャンネル集客構造において必要不可欠な視座となるでしょう。

この他にも、細かいテクニックなど、YouTubeのチャンネル運営においての情報をご要望のかたは、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

長谷川 広典

デジタル戦略推進部 プランナー

最先端のアドテクノロジーとメディアトレンドを組合せた、デジタル領域の広告戦略を担当。最適なメディアプランニング、PDCAによる広告の効果と効率の最大化、課題解決に向けたコミュニケーション手法など横断的なアプローチを実践。