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YouTubeのチャンネル設計における集客構造デザイン

2019.03.27

みなさんYouTuberと聞くとどのようなイメージをお持ちでしょうか。「楽して稼いでそう」や「自由気ままにやっている」、「顔出しして危険そう」など、様々な印象をお持ちだと思います。おそらく100人に聞くと100通りの答えが返ってくるでしょう。

なぜなら、YouTuberと一括りにしていますが、昨今は数多のYouTuberが存在し、「コスメ、料理、スポーツ、エンタメ、ゲーム、音楽」など、多種多様にカテゴリーが確立されており、カテゴリーごとに投稿者とそのファン(視聴者)がいるからです。またYouTubeのレコメンドシステムが手伝い、さらに我々は細分化されている現状にあります。

数年前は市民権を得ていなかったYouTuberという言葉が広く認知された背景には、様々なYouTubeチャンネル(およびYouTuber)の台頭がありました。
筆者も大学時代より兄弟で運営してきたゲームチャンネルがあります。現在はチャンネルの登録者が40万人を超えましたが、そこには集客のための試行錯誤がありました。

今回はYouTubeにおけるチャンネル構造を筆者の経験をもとに紐解き、YouTube内における集客の重要な要素を導き出したいと思います。

ゆくゆくはそれら要素の検証および広告会社としての知見を組み合わせた場合に創出できるビジネスポイントを考察できればと思います。

動画コンテンツを構成する成分

まずはYouTubeに投稿されている動画に含有している成分をご説明します。

ざっくり捉えると主に2つあります。それは「娯楽性」と「ノウハウ」という成分です。また、これらは視聴者の情報摂取の態度に依存するため、同じ動画でも視聴者によって摂取される成分の比率は変動します。

例えば、メークアップの動画を視聴する場合、普段メークをしない筆者にとっては女性がみるみるうちに綺麗になっていくという点で「娯楽性」の成分が高い動画といえます。
一方、メークの関心度が高い10代の女性にとってはどうでしょうか。おそらく、その動画で紹介されているメークのコツ(ノウハウ)を学ぼうとするはずです。その場合、彼女たちはメークアップ動画を「ノウハウ」動画として認識するのです。

ゲーム実況でも同様です。実況者がプレイしているゲームについて娯楽目的に視聴しているユーザーと、ゲームを進めていくためのコツや攻略方法(ノウハウ)を学ぶために視聴しているユーザーへ分類できます。

これらは、動画のコメント欄を観察すると顕著で「娯楽性」と「ノウハウ」の2つの成分に紐づいた内容がコメントされています。娯楽性だと「可愛い・きれい・すごい」など。ノウハウだと「~がためになりました・今度使ってみます・真似してみよう」などが挙がります。

この2つの成分は、情報を受け取る視聴者のニーズによって、伝わる比率が変化するため、下記のようにイメージすると良いでしょう。

「娯楽性」と「ノウハウ」の2つの成分 イメージ

「ノウハウ」という成分が「娯楽性」でコーティングされ、包まれているイメージです。メークに関心のある視聴者のみが「ノウハウ」という深い情報まで摂取することができ、それ以外の視聴者は「娯楽性」が高い動画としての認知で留まります。

ポイントは「娯楽性」と「ノウハウ」の両成分を含有した動画を設計し、どちらのニーズにも耐えうるコンテンツを格納することです。これがユーザーを集客する火種となるのです。

上記の構造を踏まえ、次のフェーズとしては、実際に発信すべき「娯楽性」や「ノウハウ」の情報を決定していきます。しかし、これ以降の領域は「投稿者の属性」によって流動的な事項のため、今回は説明を割愛します。

ただ、一般的にはYouTubeアナリティクスというチャンネルの分析ツールと視聴者からのコメント、世の中の流行りを横断的に捉え、今の視聴者に求められているニーズを予測し、コンテンツを細かくチューニングしていきます。

チャンネル発信の条件

前項では、集客に必要な動画の成分にフォーカスしました。つぎは、動画発信における条件をご説明します。

重要なのは、「一貫性」と「習慣化」という条件です。本来はこの他にもチャンネルごとに細かく条件を設けていきますが、特にこの2つは今のYouTubeには必要不可欠な要素となるため、今回はこちらを掘り下げていきます。

「一貫性」とはチャンネルに格納している動画群に一貫性が感じられるか。「習慣化」とは、決まった周期で動画コンテンツを発信しているかを指します。

これは視聴者の視点で捉えるとわかりやすいです。

視聴者がたまたま見つけたあなたの動画について、とてもわかりやすく、面白いと感じたと仮定します。すると次の行動としては、関連動画を見るか、あるいは、あなたのチャンネルに格納されている別の動画を漁ることが容易に想像できると思います。「一貫性」は後者に効果を発揮する条件となります。

要は、あなたのチャンネルに初めて訪問した視聴者が一目みただけで何をコンセプトにして発信しているチャンネルかを認識できること。これが重要なのです。そのためには、一貫した動画コンテンツの作成と簡潔に概要が伝わる動画サムネイルのデザインが求められます。

特にサムネイルは、インプレッションにおけるクリック率が10%を超えるケースもあり、PCとスマホのどちらのデバイスから見ても、わかりやすく伝わりやすいデザインにしましょう。

これにより「動画サムネイルを発見→視聴→動画が魅力的と判断→チャンネルを訪問→さらに魅力的な動画サムネイルを発見→視聴→動画が魅力的と判断→チャンネルをお気に入りに追加(登録)」というフローが発生します。

重要なのは、チャンネルに格納しているどの動画が入口だったとしても、それがトリガーとなり、最終的にはチャンネル全体を好きになってもらえるように着地させることです。視聴者に動画単位ではなく、チャンネル単位で記憶してもらうことが重要なのです。

チャンネル単位で記憶してもらうことが重要

そして「習慣化」とは、チャンネルを登録あるいは、認知している視聴者に効果的な条件です。要は動画コンテンツを決まった周期で発信し続けることで、視聴者にも決まった周期で視聴を促し、結果的に視聴すること自体を習慣化させ、リピーターを発生させるのです。人気のYouTubeチャンネルは毎日1本のペースで投稿するケースが多く、中には公開時間まで決めているチャンネルも存在します。

「習慣化」イメージ

昨今のYouTubeのように毎日膨大な数の動画が投稿され続けている状況下では、雑多に動画が格納、発信されているよりも、一貫性を持った明確なチャンネルの提示と、習慣的なコンテンツ配信を実施することが重要です。それにより、チャンネルという大きな枠組み単位で視聴者に認知してもらい、かつ、リピーターを生み出し、チャンネルへの継続的な流入を創出します。

今回はYouTubeにおけるコンテンツ作成と発信という軸から、大きく4つの要素「娯楽性」「ノウハウ」「一貫性」「習慣化」を説明してきました。次回はこの要素を具体的なYouTubeチャンネルにあてはめ、検証することで4つの要素をさらに細分化していきたいと思います。


おわりに

実務においてもYouTubeの企業アカウントの設計について、ご相談をいただくことがあります。前述した通り、「娯楽性」や「ノウハウ」は投稿者の属性を見極めたうえで、中長期的に調整をしていく事項です。そのため、まずは「一貫性」と「習慣化」の観点で自身のチャンネルに抜け漏れがないかチェックしてみてはいかがでしょうか。

この他にも、細かいテクニックなど、YouTubeのチャンネル運営においての情報をご要望のかたは、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

長谷川 広典

デジタル戦略推進部 プランナー

最先端のアドテクノロジーとメディアトレンドを組合せた、デジタル領域の広告戦略を担当。最適なメディアプランニング、PDCAによる広告の効果と効率の最大化、課題解決に向けたコミュニケーション手法など横断的なアプローチを実践。