YOMIKO STORIES
2025.07.30
マネジメント職社員が語る男性育休のリアル ~子育てしやすい職場環境のきっかけに~
YOMIKOは「ワークライフバリュー※実現」を掲げて社員一人ひとりが有意義な人生を送ることができるようにさまざまな取り組みを行っています。多様な働き方を推進すると同時に、育児や介護との両立を応援。性別に関わらず育休をあたり前に取得できる会社を目指して、男性育休100%取得を宣言しており、2022年から3年連続で、男性社員の育休取得100%を達成しています。
今回は、2024年に1カ月間の育休取得をした統合クリエイティブセンター クリエイティブディレクター兼アートディレクターの戸川進之介に、育休を取得したきっかけや思い、マネジメント職ならではの事前準備のポイントや育休後の心情の変化について伺いました。
※「ワークライフバリュー」とは? 仕事と私生活のバランスではなく「共に充実した人生を」という願いを込めたYOMIKOらしい働き方の定義です。
(聞き手:グループ人事局 労務部 楠本雄輝)

育休取得は僕の人生に新しい視点を与えてくれるに違いない。だから楽しみたいと思った。
楠本:マネジメント職で育休を取得された戸川さんにそのご体験を詳しく伺っていきます。はじめに、戸川さんが現在担当している業務内容について教えてください。
戸川:クリエイティブディレクター兼アートディレクターとして、さまざまなクライアントの課題発見から課題解決に向け、企画立案から制作業務までを担っています。組織では部署長を務めていて、部下は9人です。
楠本:私の個人的な意見ですが、日々多忙なクリエイティブのマネジメント職の方が率先して育休を取られたことがすごく嬉しいんです。部下を指導・育成するマネジメント職の方であっても育休を取得できることを体現してくださり、会社にとっても意味のあることだと思います。

戸川:それは多少あるかもしれませんね。YOMIKOに限らず、これまでの広告業界のクリエイティブ職の働き方は、家族やプライベートよりも、仕事と結果重視という風潮があったと思います。
楠本:戸川さんが育休を取ろうと思ったきっかけは何でしょうか。当社が男性社員の育休取得100%を達成したことが、動機のひとつでしたか?
戸川:YOMIKOが育休取得に力を入れていることは知っていたのですが、「100%取得」ということを実は知りませんでした。ただ、せっかく取得しやすい環境にあることですし、育休を取りたいと思いました。
というのも、これまで僕は仕事中心の生活でした。そして初めての子ということもあり、シンプルに育児に興味もありました。何より我が子に会えるのを楽しみにしていたので、「しばらく仕事は休んで、育児に取り組みたいな」という思いが湧き上がってきたんです。妻から言われて取ったわけではなく、むしろお互いのなかで「親だから当然だよね」という暗黙の了解がありました。
妻も働いているので当然、産休・育休を取りますし、僕も自発的に「育児をしよう」と思ったことが一番の理由です。
もう1点、ちょっとした意識改革もありました。
僕はこの業界で20年以上働いていますが、先ほど話したように、その大半は仕事中心の生活でした。しかし今回の育休取得で「そういう生活を変えるきっかけのひとつになるかな」との思いがありました。だから「いい意味で過去の自分を否定する」ところから今回の育休取得は始まった、と言えるかもしれません。
もちろん、好きで仕事をしてきたので、そこに後悔はないんです。ただそれとは別に、「育休取得が僕の人生に新しい視点を与えてくれる。それを楽しみたい」とも思いました。産後の妻を労い、できるだけ寄り添いたいというのも動機の1つです。

楠本:育児だけでなく、パートナー自身のサポートはとても大切だと思います。その考え方が広まることで、育休取得の捉え方が有意義なものになると感じています。
仲間からの応援・サポートもあっての育休取得
楠本:育休を取るに当たって、仕事面ではどのように準備を進めましたか。
戸川:妊娠初期に当時の上長へ「育休を取得する可能性があります」と伝えていました。その時に、「なるべく早めに労務部に相談した方がいい」といろいろなアドバイスをもらいました。その後、安定期に入ったのをきっかけに、改めて上長へ育休取得の相談をしました。
予定日の2~3カ月前に、一緒にクライアントを担当している営業のみなさんには、「育休を取るので、いろいろフォローをお願いします」と伝えました。部員に育休のことを伝えたのは、2週間に1度のペースでメンバーと30分の1on1をしているのですが、ここで各スタッフに伝えました。
楠本:みなさんの反応はいかがでした?
戸川:僕も驚いたのですが、とても喜んでくれました。余談ですが、僕が所属している部員全員から1人ずつ絵本をもらいました。1人ひとりセレクトした絵本をプレゼントしてくれたのです。これが一番嬉しかったですね。毎日一緒に読んでいます。

『きんぎょが にげた』 五味 太郎 作 福音館書店
『あおいよるのゆめ』 ガブリエーレ・クリーマ 作・絵 さとう ななこ 訳 ワールドライブラリー
『パンどろぼう』 柴田 ケイコ 作 KADOKAWA
『100万回生きたねこ』 佐野 洋子 作・絵 講談社
『ねないこ だれだ』 せな けいこ 作・絵 福音館書店
『あなたがだいすき』 鈴木 まもる 作 ポプラ社
『パパ、お月さまとって!』 エリック・カール 作・絵 もりひさし 訳 偕成社
『メリークリスマス、にじいろの さかな』 マーカス・フィスター作 谷川 俊太郎 訳 講談社
楠本:すごいですね。普段から信頼関係が築かれているからでしょうね。とはいえ、やはりマネジメントとして実務以外の管理業務も担っていると思いますが、そこはどのように対応しましたか?
戸川:部署の運営は、組織上最も近い立場にいる社員に移譲しました。具体的には毎週、部門会へ出席して部員全員に情報共有をしたり、2週間に1回、1on1でそれぞれの業務状況を確認したりする作業です。そのほかのシステム上の承認業務などについては、上長にお願いしました。
楠本:運営を任された方にもお話を伺いましたが、さまざまな気づきがあったそうです。例えば、「クライアントによって仕事内容がまったく違うこと」「メンバーそれぞれが様々な考えを持って、仕事を進めているとわかったこと」など非常に刺激的で大変おもしろかったです、とおっしゃっていました。
お話を伺った方も今年度、部署長になり、戸川さんのされてきたことを見習って部員との1on1で一人ひとりの状況を深く聞いているそうです。
戸川:そうみたいですね。僕もそれを聞いてうれしくなりました。
「育児を手伝う」ではなく、「育児をする」のも育休の意義
楠本:育休・育児に関する準備はどのように進められましたか。
戸川:当然ながら、妊娠・出産については知識不足でしたので、区役所と病院からもらったハンドブックをじっくり読みました。ハンドブックは必要な情報が網羅されていて、医学的に事実しか書かれていません。書き方は割と素っ気ないのですが、際限なく不安を煽る記事が出てくるインターネットよりもむしろ良かったと思っています。
あとは実際に出産するのは妻で育てていくのは自分たちなので、二人の意思疎通をしっかりとるためにいろんな話をしました。
楠本:育休中はどのように過ごされたのですか?
戸川:今もアプリに記録していますが、生まれてから最初の1カ月間は3時間ごとにミルクをあげて、寝かしつけるというスケジュールを繰り返していました。幸いなことによく眠る子なので、僕らもあたふたすることなく過ごしています。
「午前2時から朝6時まで寝ない」ということもありましたが、「たまにはこんなこともあるよね」という感じで話しています。こういった会話ができることが産後の妻にも重要だと思っています。
楠本:分担はどのように?
戸川:基本は、シフト制です。お互いしっかり休めるように、6時間以上の睡眠を確保できるようにしています。
いまは、リモートワークと出社を併用しながら、なるべく早く帰宅。帰宅したら妻とバトンタッチして、概ね19時〜夜中3時までは僕が育児を担当し、夜中3時から朝8時〜9時ころまでは再び妻の番で、9時からお昼前まではまた僕の番となります。
そういうシフトで分担をしているので、僕自身も育児ができないと話にならないんです。当たり前ですが、育児をスタートする前にミルクの作り方や哺乳瓶の消毒方法、おむつの替え方を二人で習得しました。病院でも父母研修があったのでそれにも参加しましたし、沐浴のさせ方も学びました。

楠本:すごい! 一般論ですが、育休を取る男性には「新生児のお世話はひとりで完結できる」という認識がない方がいます。その点でも、戸川さんは素晴らしいです。
戸川:何度も一人で子どもを世話しており、僕が育児している間に妻もリフレッシュで出かけています。そして、交代の前後に必ず会話する時間が生まれるので、その際に妻の調子を尋ねたりしています。
楠本:とても大事なことですね。
育休を経験して気づいた、みんなが働きやすくなるヒント
楠本:育休取得後、戸川さんの仕事への取り組み方は変化しましたか?
戸川:そうですね。これまでは、目の前にある企画の仕事に時間も意識も集中できましたが、育児に6時間費やすとなるとそうはいきません。
その分、自分の意識改革をして、ある程度は「スタッフに権限を委譲する」と決めて。今は自分にしかできないことのみに集中することにしました。
スタッフでもできることであれば任せて、最初のセットアップと最終チェックをしっかり行う。そうすることでクオリティを担保できるようにしました。
楠本:なるほど。それは後進の育成にもつながりますね。
戸川:仕事を任せることで、若手スタッフが成長するきっかけになります。
中途半端に横から口を挟むのではなく、ゴールイメージをしっかり共有して「途中経過は任せる」という感じで仕事を預けますが、立場上私の役割として、重要な部分ではディレクションという細かい指示や注文はします。
楠本:それはある意味、組織運営にも良い影響を与えていますね。「管理職だから自分にしかできない」のではなく、任せられるところは任せるという組織全体の意識改革につながると思います。
戸川:マネジメント業務は、先ほどもお話したように自分に近い位置にいるスタッフに移譲できますし、システム承認については、横並びの職務か上長であれば移譲処理ができますから。
楠本:そう、実はシステム的に解決できることがたくさんあるんです。「管理職だから育休が取れない」わけではないんですよね。
戸川:今回、実際に休暇を取得して、近い上司と部下には権限委譲を行っておくことが大事だと思いました。
育休以外にも夏季休暇などの長期休暇がありますし、撮影などで長期出張ということもあるからです。撮影時に「今すぐ承認してほしい」と言われても、なかなか難しいんですよね。バックアッププランがすでに用意されていると戦略的にいいと思います。

「子育てできるクリエイティブチーム」を目指して
楠本:最後に、ご自身の育休の体験を踏まえて、育児休業の感想やご意見をお願いします。
戸川:まず、男女問わず育休取得に興味がある方に「YOMIKOにはしっかりとしたサポート体制があるので安心です」とお伝えしたいと思います。
「全員育休を取るべき」との考えを押し付けるつもりはありません。
興味があって取得したいと思っているのなら、安心して取得してください。すると「抜けた穴は誰が埋めるのか」という話も出てきますが、外部リソースを活用したり、組織としてクオリティを保つ工夫をしたりなど、部署に違いはあると思いますが、いろいろな手段が考えられると思います。
育休取得後も安心して働ける職場であることは、長く働き続けるモチベーションにもなりますし、「働きやすいクリエイティブ局」「子育てできるクリエイティブ局」になっていけばいいなと思います。

戸川 進之介
統合クリエイティブセンター センター長代理
クリエイティブディレクター兼アートディレクター
朝日広告賞、毎日広告デザイン賞、ONE SHOWデザイン賞、ADFESTデザイン、NYフェスティバルデザイン賞、日本広告写真協会賞、交通広告グランプリ など 主な仕事に、明治「きのたけ国民総選挙」、創味食品「ハコネーゼ」「焼肉のたれ二代目」、三井不動産「MIYASHITA PARK/RAYARD」ロゴ制作、Chacott cosmeticsブランディング など

楠本 雄輝
グループ人事局 労務部
シニアプランナー
労務部として、総労働時間削減施策や社員の育児介護等の両立支援、福利厚生対応等に従事。2025年度より月に一度の週休3日制『スリバカ』を社内へ本格導入。