YOMIKO STORIES

人と企業をつなぐ新コミュニティ・プラットフォーム「バーチャル沖縄」の可能性に迫る!

~「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」レポート第5弾~

 2024年11月21日、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー「TOKYO NODE HALL」にて「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」が開催されました。これは、YOMIKOが2024年に掲げた独自の価値創造モデル「コミュニティクリエイション®」に基づいて様々なプレイヤーをつなぎ、事業課題や社会課題の解決を図る事例を紹介するイベントです。
本フォーラムからの最終レポートとなる今回は、株式会社あしびかんぱにー代表取締役 片桐 芳彦氏、同社2Dデザイン部 大浜 未有希氏、YOMIKO 都市生活研究所 プロジェクトクリエイションルーム 日浦 康雄が登壇。「人と企業をつなぐ新コミュニティ・プラットフォーム デジタルツインが生み出す新コミュニティの可能性と成功の鍵」をテーマにしたトークセッションをおこないました。

沖縄のシビックプライドが生んだ「バーチャル沖縄」

 「YOMIKO GAME CHANGE FORUM 2024」の最終セッションPart2‐2に登壇したのは、沖縄発のメタバース空間「バーチャル沖縄」の開発企業株式会社あしびかんぱにーの片桐社長および総合プロデューサーの大浜氏とYOMIKO都市生活研究所 日浦。まずは普段からシビックプライドコンサルタントとして活動する日浦が、CIVIC PRIDE®についての説明をおこないました。

「CIVIC PRIDE®は、YOMIKOが大切にしている概念であり、単なる郷土愛とは異なるものです。住んでいる街をより良い場所にするため、自身も関わっているという自負心や、当事者コミュニティが持つ自負心のことを指します」

 その一例として日浦は、YOMIKOが関わる「立飛(たちひ)ホールディングス」の「都市格向上プロジェクト」や、広島県の様々な地元企業で構成される「広島都心会議」を紹介。さまざまな形でシビックプライドの向上施策に取り組んできた結果、「沖縄×メタバース」の取り組みである「バーチャル沖縄」の研究と理論支援などの連携にたどり着いた経緯を話しました。

シビックプライドコンサルタント 日浦 康雄

 日浦から「バーチャル沖縄」の始まりについて聞かれた片桐氏は、その背景を次のように話します。「あしびかんぱにーは、沖縄で生まれて10年目の会社ですが、会社の設立当初から『沖縄の魅力を世界に届けたい』をテーマに活動を続けてきました。今回のバーチャル沖縄も、若い社員から沖縄の魅力をバーチャルで届けられるのでは?と企画提案を受けたことから始まりました」

バーチャル沖縄

沖縄特有の社会問題を「デジタル空間」で解決したい

 大浜氏によれば、あしびかんぱにーがバーチャル沖縄に注力する方針を固めたのは、コロナ禍の影響が大きかったといいます。観光産業が盛んな沖縄ではコロナ禍以降、目抜き通りの国際通りから観光客が激減。そこで、同社ではリアル開催が困難になったイベントなどをデジタル上で実現することを最初の軸にしたのだといいます。

「それらの施策を進める中でも、産業の少なさや若年層の県外流出など、沖縄特有の社会問題が露わになってきました。創造性の高い仕事がしたければ、県外に出るのが当然でしたし、そこを行政が変えようにも県内に頼れる企業がない。そうなると自然、地元に寄り添った結果が出にくくなってしまいます(大浜氏)」

 だからこそ、あしびかんぱにーが大事にしているのが「沖縄の人間」が関わることなのだといいます。大浜氏によれば、バーチャル沖縄プロジェクトも、沖縄の若者の発想や瞬発力を大事にすることで上手く進んでいったのだといいます。同氏はまた、「コロナだからデジタル施策」だったわけではなく、産業活性化の調整のしやすさから元々デジタル空間やメタバースに着目していたという戦略的なエピソードについても披露しました。

株式会社あしびかんぱにー 大浜 未有希氏

沖縄セルラーとの共創が話題を呼んだ 「あつまれ!全力応援ランド」

 続いて大浜氏は、バーチャル沖縄で最初におこなわれた企業との共創事例として「沖縄セルラー」の取り組みを紹介しました。

「沖縄セルラーは、毎年『受験生をはじめ、がんばる全ての人を応援したい』という応援プロジェクトを実施されている、沖縄のauさんです。CMや広告のような一方通行ではなく、相互のコミュニケーションができる形で県民を応援したい、という思いから2023年にご一緒させていただきました」

沖縄セルラー「あつまれ!全力応援ランド」

 共創の話を受けてからわずか3ヶ月後には「あつまれ!全力応援ランド〜in バーチャル沖縄」のモックアップ版を展開。公開後はブラウザ版のメタバースにも関わらず、通常の滞在時間の倍以上の数字を記録したと大浜氏はいいます。

「コミュニケーションができることを軸に、いろんなコンテンツを詰め込んで、どんな結果もすべて共有する『実験場』にしていただきました。沖縄セルラーさんのコンセプトに共鳴された結果、由緒正しい八社のひとつ、沖宮(おきのぐう)神社さんがメタバース空間へ出てこられたことでも話題を呼びました」

 その他にも、沖縄テレビによる「バーチャル首里城」のお化け屋敷化とそのドラマ化や、バーチャル沖縄内でパイロット、CAたちがカチャーシーを踊る航空会社JTAの事例などが紹介されました。

株式会社あしびかんぱにー代表取締役 片桐 芳彦氏

 それを受けて日浦は、各社とも様々な事業課題の解決に向けてバーチャル沖縄内でPoCをスピーディに展開していることを指摘し、YOMIKOとしてはコミュニティクリエイション®の視点からそれらの活動を紐解いていきたいと述べました。

「バーチャル沖縄では、『沖縄を活性化させるビジネス創出』という課題に向かって様々な会社同士の共創関係が生まれています。また、様々な取り組みの成果が各社で共有された結果、さらなるPoCが進んでいる。われわれはこの様子を見て、PoCの先にある新たな手法として『マイクロPoC』と名付けることにしました」

「バーチャル沖縄」がPoCに向いている理由とは?

 日浦は、PoCの実行に至るまでにはさほど「ヒト・モノ・カネ」はかからなかったと述べた参加企業のインタビュー結果を引き合いに出し、それではなぜ「バーチャル沖縄」はPoCに向いているのか?という質問を投げかけました。

 それに対して片桐氏は、デジタル空間には「しがらみ」がほとんどないことが最大の成功要因である、と答えました。「バーチャル国際通りと、バーチャル首里城に集まってくる沖縄好きの方にどんなPoCをしたいのかは、企業ごとに異なります。ただ、いち早く形にした上でそれに対する反応を見てみよう、という姿勢は各社とも共通している。沖縄の課題解決に向けて動いていることが、施策上のスピード感にもつながっているのだと思います(片桐氏)」

 この発言を受けて日浦は、これがもしもリアルの取り組みなら絶対に実現できなかったと思う、と述べました。国際通りを再現しているようでありながら、実は権利関係を上手く逃がして再現していたりする。そうした「のりしろ」の部分が準備されているからこそ、様々な関係者が関わりやすくなっていると指摘しました。

 さらに日浦は、あしびかんぱにーをハブにしながら、企業間の連携が非常に活発になってきたことに注目。バーチャル沖縄の国際通り店を出店した沖縄バヤリースとヤマト運輸が手を組み、リアルでのECを実現した両社のスムーズな連携についてその理由をたずねました。

 それに対して大浜氏は、そこはデジタルだからこそやりやすい前提があるのだといいます。片桐氏もそれに同意した上で「沖縄に長く住んでいる方は、特にシビックプライドの高い方が多いと感じます。沖縄在住の若い人間が何かを提案しに行くと、最初から笑顔で出迎えてくれる。一番初めの段階をクリアした上で話ができているから、結果的に連携がスムーズにいくのではないでしょうか」と述べました。

 日浦は、各企業にインタビューした結果、どの企業も『沖縄が抱える社会課題は、今後日本が抱えることになる課題である』という危機感を持っていたといいます。「未来は、いま若い人たちに成長の機会をつくれるかどうかにかかっているんだと。そのことが、お互いWin-Winの関係になれるのなら、いくらでもチャンスをつくるよという姿勢につながっているんですね」

 さらに日浦は、バーチャル沖縄が「楽しい空間」であることも大きいと指摘。ユーザーにとってバーチャル沖縄はまさに地域をテーマにしたエンタメ空間であり、企業側にとってもある意味「遊び場」として機能している。「社会課題解決」という言葉の重さに比して、楽しみながら前向きに解決しようとする姿勢が沖縄出身者だけでなく、多くの人に共感を生んでシビックプライド

YOMIKOが考える「デジタルツイン」は デジタルとリアルが相互作用する状態

 最後に日浦は、企業連携PoCによって成功の種がバーチャルからリアルに拡張している傾向を指摘。一般的に、「デジタルツイン」という言葉はリアルをバーチャル上に再現する精度を指すものの、YOMIKOでは「デジタルとリアルが相互に作用する様」を意味するとした上で、あしびかんぱにーが今後どのようにリアルへと拡張していくつもりなのかをたずねました。

 片桐氏は、それに対して次のように応えました。「最近の沖縄の課題は、盛り返してきた観光産業に対して明らかに人材が不足していること。そこへの対策として、バーチャル沖縄で十分に観光案内をしておき、現地ではほとんど案内がいらないようにすることも考えられますよね。企業側からもデジタルからリアルへの貢献方法が提案されるようになり、より深い議論ができるようになったのを感じます」

 セッションの終わりに、三人からは次のようなメッセージが述べられました。

「私たちは日々、バーチャル沖縄の取り組みに関わる方々のシビックプライドの高まりを感じています。沖縄の伝統文化の良さや魅力をあらためて確認したり、自分が沖縄を盛り上げることに関わっている意識がそうさせているのだと思います。

 現在、当社では2025年3月に向けて『OKIVFES(オキブイフェス):バーチャル沖縄内で開催されるイベント。沖縄の音楽や観光、文化、食など、さまざまなコンテンツが用意されている』を制作中です。新たな沖縄の企業さんも増え、より大きく粘り強く育てるべきイベントに成長しました。今後も、エンタメを交えながら様々な角度で沖縄に貢献していきたいと思っています。みなさんも可能な範囲でVR事業の実証実験に参加することで、来たるべき変革のXデーに備えていただけたらと思っています(大浜氏)」

「沖縄の魅力は、突き詰めると『人』だと思っています。関わる企業さんの人柄や沖縄への愛を受けることで、ますます沖縄を好きになっていく。現在、沖縄での実績を知った都内の企業さんといくつか事業をご一緒させていただているのですが、その中の一社さんは、バーチャル沖縄でのPoCを通じて沖縄の魅力に気づいていただいた。そんなふうに、直接沖縄にご縁がなくても、PoCを通して沖縄の応援団になっていただける選択肢もあると知っていただけると非常に嬉しいですね(片桐氏)」

「今回のメタバース事例は、社会課題解決に向けた共創型マイクロPoCの実験場として非常に優れているのではないか、という視点でお話をさせていただきました。これまでのセッションでご紹介してきた『リアル起点』とは一味違う、デジタルだからこその社会課題解決方法についてお伝えできたと思います(日浦氏)」 

 共創コミュニティの一員として、今後は沖縄のスターづくりにも挑戦していきたいと抱負を述べた日浦氏。YOMIKOは、これからも企業や自治体にあらためてバーチャル沖縄の価値を伝え、コミュニティクリエイション®を加速させていきたいと述べて最後のセッションを締めくくりました。

<登壇者プロフィール>


株式会社あしびかんぱにー 代表取締役社長
片桐 芳彦氏

1980年生まれ。ゲーム会社にて上場を経験した後、2013年に株式会社プリアップパートナーナーズを設立(現・代表取締役)。2014年7月に沖縄における観光以外の新たな事業創出と沖縄の若者の雇用創出を目的に株式会社あしびかんぱにーを設立。ゲームコンテンツ事業、おきなわEX事業、エンタメDX事業など、沖縄ならではのエンタメコンテンツを幅広く展開中。

株式会社あしびかんぱにー 2Dデザイン部 部長 
大浜 未有希氏

2015年に株式会社あしびかんぱにーに入社。沖縄県出身。
2Dデザイン部の部長としてゲーム開発に従事しながら、メタバース事業部のグループリーダーを兼務。VOKINAWAとOKIVFESのプロデューサー。

都市生活研究所 
日浦 康雄

2009年に外資系コンサルに入社。 電気・家電・自動車メーカーの、 グローバル戦略、SCM、CRM等に従事。 その後、読売広告社にストプラ職として入社し、幅広い広告マーケティングに携わると共に、MPでのビジネス開発などを経験。現在は、広島都心会議ブランド部会の副部会長や、自治体のモビリティシフト推進等を担当。