YOMIKO STORIES
2025.04.11
ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS GOLD受賞記念 「柏の葉TALKING CITY」×社長 菊地英之 Special座談会 ―YOMIKOならではのまちづくりとシビックプライド―

柏の葉スマートシティで実施された「柏の葉イノベーションフェス – TALKING CITY –」(以下、「TALKING CITY」)企画が、2024年にACC TOKYO CREATIVITY AWARDSブランデッド部門GOLDをはじめとする数々の賞を受賞。今回、企画を担当した統合クリエイティブセンターの大屋翔平、住吉美玲、野村葉菜の3名と菊地英之社長による座談会を実施しました。まちへの愛着(シビックプライド)を高めるユニークな取り組みと、YOMIKOのまちづくりにおける可能性について語ります。
TALKING CITYとは:AR(Augmented Reality / 拡張現実)技術を使って、柏の葉エリアの計81カ所におしゃべりする顔が現れる施策。建物や、まちのモノにARが起動するトリガーとなるシールを貼り、スマートフォンをそのシールにかざすと、まちのモノたちが目を開けてそのスポットの成り立ちや特徴を話してくれる。この“まちのモノたち”には、住民が声を吹き込んでおり、これを聞くことで街の知らなかった側面に気付く体験ができる。街を介して住民同士にコミュニケーションを生み出していることも大きなポイントとなっている。
まちの価値を住民の声で伝える「ぬくもりのあるデジタル」が高評価
菊地:ACC GOLD受賞、おめでとう!素晴らしいよね。しかも審査員の評価がすごく良かったと聞いています。
野村:びっくりしました。最初からみんなで「賞を獲りたい」という話はしていたのですが、自分自身がプランナーになって初めて獲れた大きな賞で、「強い思いを持っていると審査員の方にも伝わるんだな」ということをすごく思いました。

大屋:大きく評価されていたのは、住民の声を集めてデジタルテクノロジーに命を吹き込んでいる点で、実際に地元の人が声を入れているから、「○○ちゃんのお母さんが声を入れたらしいよ」と噂が回ってわざわざそこに聞きに来るような、テクノロジーを通してリアルな動きやつながりが生まれることでした。
また、ARは今や珍しい技術ではないけれど、テクノロジーの目新しさに踊らされない「人のぬくもり」のある演出により、ARという技術を再生させた、という評価もいただきました。

住吉:CMのようないわゆる「広告媒体」とは違う、新しい形で賞を獲れたことも良かったと思います。日々の業務の中ではデジタル領域も多く、反響は数字で測ることが多い中で、「TALKING CITY」は実際に人に届いている実感がすごくあって。それが審査員の方にも伝わったのが嬉しかったですね。
菊地:YOMIKOらしいというか、シビックプライドの発想で作られている点が素晴らしいと思います。そういう企画が錚々たる審査員の人たちに評価されたということは、YOMIKOの存在意義、勝ち筋みたいなものを示せたんじゃないかな。これは今後にも広がっていく可能性を感じるね。
シビックプライドを高める仕組みでまちに新たな価値を
菊地:今回のプロジェクトでは、シビックプライドをどう捉えて取り組んでいましたか?
大屋:柏の葉はもともとシビックプライドが高いまちだと思います。だから私たちがそれを「上げる」必要はありませんでした。今回の企画も、シビックプライドが高いか低いかという静的な指標というよりも、「活性度」、つまりいかにお互いがコミュニケーションし合っているかを大事にしました。マンションの多い柏の葉では、普段の生活の中では混ざり合わない人がいっぱいいます。でも、このようなイベントをすると、おじいちゃんおばあちゃんと子どもやその親たちが少しだけ混ざり合える。そのような活性度を上げる方が豊かだと考えました。
住吉:私は九州出身ですが、上京するまでは地元のことを「何もない田舎」だと思っていました。でも、出てから気付けた地元の魅力がいくつもありました。住んでいるときは気づけないものが、外の視点を手に入れることで見えてくる。指標としてのシビックプライドは、住んでいる人自身が「魅力を発掘する入口」だと捉えてもいいのかなと思います。

野村:シビックプライドは、「まちの自己肯定感」のようなものかなと思います。それに気づくだけで幸福度が上がるようなもの。これまでは、その場の盛り上がりや、いい空気が流れているということを可視化する手段がありませんでした。そんな見えないものが可視化できることで、もっとまちのことや人のことを好きになって、さらにみんなが幸せになれるんじゃないかと思います。数値化されることのポジティブな側面もあるのだろうと。
YOMIKOならではの長期目線とまちづくりへの姿勢
菊地:まちづくりの仕事についての魅力や、YOMIKOが発信しているまちづくりについて、どう感じていますか?
大屋:YOMIKOは、企画を発想するときに、長期目線を持っている人が多い印象です。
菊地:それはわかるね。私がYOMIKOに来てすごく思ったのは、仕事が「長い」ということ。長時間労働という意味ではなくて(笑)、長期的な視点で考える文化があるということだった。
大屋:まちづくりの仕事をしている人の特徴ですよね。5年後どうなっているかわからないけれど、考えて、企画していく。実は小さな企画にもその視点が入っているので、それが他にはない切り口の企画になる要因かなと思います。継続的に自走していくようなものが多いですよね。「TALKING CITY」もそうで、音声の録音に参加した住民が友人をそこに連れていって、そこで話が盛り上がって次に展開されるというような。一度のコミュニケーションで終わらずに先に続いていくようなものを、自然と設計している人が多い気がします。

菊地:ここ数年、世の中で「サステナビリティ」と言われるようになってきたけれど、YOMIKOは柏の葉スマートシティのまちづくりが始まった約20年前からずっと関わってきた。他社の人に「20年前からやってます」というと、本当に驚かれるんだよね。今は、企業の課題が社会課題とほぼ同じになってきているから、企業の取り組みにも長期目線のものが増えてきた。その意味では、YOMIKOは世の中の流れを先取りしていたということだね。
まちづくりは、最初の数年は相当な投資が必要だから、参入障壁も高いよね。柏の葉においては、その時期は既に終わっているから、今後はよりビジネスにつなげられるところが増えてくると思います。
大屋:まちづくりの案件は、大学教授や地権者、行政などさまざまなステークホルダーが関わります。その中で、「こんな研究があるんだけど、何かできない?」など、そのプロジェクト以外での相談ももらえることがあり、クライアントと代理店の関係を超えることが多々あるんです。そこから横展開や新たな取り組みが始まることは十分考えられますね。

菊地:そこできちんとビジネスプロデューサーがプロジェクトマネジメントをして、形にしていく。その部分はYOMIKOの人間は長けているし、コンテンツを考える力も一般企業の人たちにはない強みだね。プロジェクトマネジメントとソフト面の発想能力は、大いに生かしてほしいです。
例えば旅行会社でも、シビックプライドを使って旅行商品開発ができると思います。行った先でARを使ってもらって、その場所の歴史を体験できるとか。それを地域と連携して行っていくことで、シビックプライドだけじゃなく、インバウンドにも使える可能性があるね。
大屋:実は、社内でもシビックプライドを高める施策についてよく話をしています。日本ではとくにインバウンドなど外から来た方が、現地の人たちと直接触れ合いたいという需要が高い。「TALKING CITY」は地元の人たちの声が集まる仕組みなので、直接話を聞かなくてもARで体験できる。「うちのまちはここがいいよ」という地元の声がARで聞けるのは、渋谷など観光地でも応用できると思います。
菊地:それによって訪れる人が去年の150%になったとなれば、いろんなまちから引く手あまたになるだろうね。

世の中に良いことを発想し、ビジネスにつなげる――これからの挑戦
菊地:それぞれYOMIKOでこれから成し遂げたいこと、挑戦したいことがあれば教えてもらえますか。
住吉:こういう仕事をする中で、「自分は誰かを幸せにしたいんだ」という気持ちを改めて実感しています。近くにいる誰かも、遠くの誰かも幸せでいてほしいんです。それを考えたときには、商品のセールスプロモーションも大事ですが、何を伝え、何を残すのかという視点を持ってやっていきたいです。特に情報の流通や流行り廃りが激しい時代に、「蓄積するものの価値」を見つめ直したいと感じています。
野村:私はずっと社会課題の解決になる案件をやりたいと言ってきました。ただ最近、広告づくりもより一層面白さを感じ始めていて、それは自分のポジティブな変化だと思っています。生きづらいと感じるときに、見方を変えるだけで生きやすくなる可能性があると信じているので、それを広告の面白さと組み合わせて企画していくのが広告会社。これからも楽しみながら取り組んでいきたいです。
大屋:「TALKING CITY」もそうですが、そこに暮らす人がよりよくなる企画をしたいです。YOMIKOは「GAME CHANGE」を掲げていますが、私は企業のGAME CHANGEとは、生活者のGAME CHANGEだと思うんです。
広告は良くも悪くも、人に外部から刺激を与える表現行為。その人にとって良い刺激の与え方をすれば、まず生活者が変化し、企業にとっても良い変化になります。そういうチェンジをうまく届けられるようになりたいと思って仕事をしています。
自分の仕事はまちづくりやシビックプライドに関するものも多いですが、その考え方や手法をいかに様々な企業のブランドに転換できるかにも、今後はチャレンジしたいですね。
菊地:みんなの話を聞いていて改めて、YOMIKOの未来への可能性をすごく感じる仕事だと思いました。私自身は営業上がりだから、ビジネスにつなげる方法を考えるのが得意だけど、みんなのような発想豊かなメンバーには、世の中にとって良いこと、人にとって良いことをどんどん考えてほしい。それをいかにビジネスにするかを考えるのが、ますます楽しみになりました。

―座談会を終えて―
大屋 翔平
統合クリエイティブセンター 第1クリエイティブルーム クリエイティブディレクター
受賞を機に、この仕事がさらにいろいろな場へ広がっていくことを期待しています。また、かかわってくれた多くのメンバーたちも、各自がこの仕事をひとつのステップにして、良い企画をしてくれたらいいなと思っています。

住吉 美玲
統合クリエイティブセンター 第1クリエイティブルーム プランニングディレクター
世の中に良い、ハッピーなものを作りたいという気持ちがあります。YOMIKOでしかできないこと、自分にしかできないことを磨いていくことで、それを叶えられる可能性が広がっていくと思っています。

野村 葉菜
統合クリエイティブセンター 第2アクティベーションルーム コミュニケーションディレクター
チーム外の人とあまり「TALKING CITY」について深く話すことがなかったのですが、いろいろ展開ができそうだという社長のお話と視点を聞いて、たくさんの気づきを得ることができました。

