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「次世代サードプレイスの潮流」研究会【第2回】
ワークプレイス/オフィス イノベーションを生む場として進化するワークプレイスデザイン

2018.11.23

第2回は、「ワークプレイス/オフィス」をキーワードに、WORKSIGHTというワークプレイス雑誌の編集長であり、ワークプレイスのコンサルティングも行っているコクヨ株式会社 山下正太郎氏をゲストに、塩田氏、大野氏(sinato)、YOMIKOメンバーでディスカッションを行った。

ディスカッションの模様

都市の活性化で注目すべきスタートアップ

(山下氏)
世界の大都市のワークプレイスを見るひとつの視点としてスタートアップの集積には注目している。
世界中にいる優秀なスタートアップを、日本や東京にどう集めるかは産業育成、既存事業の再生を考える上で重要な課題。
スタートアップの集積には様々なパターンがあるが、代表的なものとしてベルリンのように、生活のコストが安く、新しいことに社会が寛容、感度の高いライフスタイルが充実している、であることがあげられる。

ベルリン型の進化モデル(下図)
典型的な例はベルリンだが、社会構造の大きな変化、また既存産業が不調になり、そこが廃墟やリスクの高い地域になる。
そうして、生活コストが安くなったエリアにアーティスト等魅力的な存在が入居する。その後、中規模・大規模資本が入って都市が再生していく。
ベルリンは欧州でユートピアと呼ばれている。
東京では、清澄白河は倉庫業がダメになって、その建築のポテンシャルを生かし、個性的な店舗やカフェ等が入ってきている。
清澄白河は今後、さらに発展する可能性はあるだろう。

ベルリン型の進化モデル

ロンドン・サンフランシスコのような大資本がその資本力によってスタートアップを集めるモデル
メガベンチャー、VC、エンジェル投資家、大資本主催のコンテストによるインセンティブ付与やオフィス補助等によって、魅力的なスタートアップを集める。
大資本としてはスタートアップとの協業やM&Aによる事業拡大、イノベーションのための新しいアイデア獲得のきっかけを得る。
その他に、深センのように既存産業のエコシステムを活用したモデルなどもある。

スタートアップが集積するワークプレイスづくり・仕組みづくりによって、都市の活性化が図られる。

街区規模の開発に可能性あり

(山下氏)
近年、話題になりつつあるのがスマートプリシンクト(街区)。街区単位でスマート化していく。

(大野氏)
これは面白いと思う。一種のBID※。街区の行政・ディベロッパー、店舗オーナーなどがインフラ整備にお金出して、お店単体で何もしなくてもハイテクオフィス等になる可能性。他者が介入できる状態にしておくと面白いことが起こるのでは。

(山下氏)
街区は、都市開発レベルほどの制約がない一方で、1つのビルよりもできることが多い。

(YOMIKOメンバー)
ディベロッパーは、街区レベルの大きなものになるほど、オフィス、商業施設、住居などを用途単体でみると事業としての不安要素が大きくなるため、トータルでの付加価値の向上を目指す。
昔とは変わり、エリアマネジメント視点で専門家を交えながら街づくり/街区のあり方を考えている。
ビジネス視点だけでなく、企業としてのあり方も含めて行政と企業の関係性ができてきている。

ワークプレイスでも人づくり、街づくりの視点が重要。
その他に、深センのように既存産業のエコシステムを活用したモデルなどもある。

効果の限られるビル開発と、利害関係者が多くなる都市開発の間に位置づけられる
街区規模の開発はビジネス視点に加えて、街づくり視点による付加価値向上が求められ、ワークプレイスのあり方も、その価値創出に貢献しうる。

※BID
Business Improvement Districtの略。
エリアマネジメント活動(地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み)を支援するため、地区を指定して不動産所有者等に資金の負担を求め、その資金をエリアマネジメント活動を実施する団体等に配分するしくみをいう。

企業にとってのオフィス空間

(塩田氏)
先端のテック企業以外では、オフィス空間に何を求めているか?オフィス空間に対する意識はどのくらい高いのか?

(大野氏)
日本のICT企業の事例では、ソフト面をテコ入れし、固定席からフリーアドレスに移行した。彼らは成果を確認するミドルマネジメント層を重視。部下が自由に動くので、逆に成果を客観的に判断するようになり、会社としてはいい方向に進んでいるそうだ。
地方企業の新社屋の設計を行っているが、「先端のオフィス」ではなく、地域貢献という視点が出てきている。その地方は雪など自然環境が厳しい。社員+地域の人、学生とが集まって、一気に雪下ろしをする。その際に集まれる共用スペースをつくる。スーパー帰りの主婦が寄って「これ直して」とか言えるような場所にしようとかアイデアを広げている。
また、スタートアップにコワーキングスペースを提供するCICは、空間が彼らの「発明で商品」と言っている。イノベーションを起こすことに特化した空間を強みとしている。

ベーシックなトレンドは、オフィス空間設計によってイノベーション創発や働き方のフレキシビリティ確保を実現しようとしているが、
個別の企業課題を解決するワークプレイスが生まれている

働く人にとってのワークプレイスと街づくり

(山下氏)
Roamは、世界同一料金でコミュニティ付きのシェアオフィスかつシェアハウス。
移動×仕事というコンセプトで世界中に展開している。

(YOMIKOメンバー)
Roamが進出する都市の基準は何か?また、ワーカーがRoamを使うメリットは?

(山下氏)
基準は観光地として魅力的かどうかではないか。バリ島にもある。リゾート、都市の中にサービスアパートメントとコワーキングが一緒になった施設。リモートワークが一般化し、さらにワーケーションなど福利厚生のバリエーションが増えたことも影響している。

(大野氏)
違う文化・国の人で同じ様な問題意識持っている人と語るだけでも価値はありそうだ。

(YOMIKOメンバー)
ノマドワーカーの孤独解消という側面もある。会話しやすければ、孤独感を解消しやすい。緩やかな帰属。空間・仕組みとしてのプラットフォームとなっている可能性がある。

普通の人のクリエイティビティを創発する場はあるのか?いかに作れるか?

(大野氏)
優秀な人を集めるのは一つのエコシステム。いろんなエコシステムがあっていいと思う。コミュニティに根付いているかなど。

(YOMIKOメンバー)
ワークプレイスは、複合開発に必要なハードというより都市の魅力アップに必要な場。トレンドというよりは背景にある価値観の変化、空間ビジネスの変化があり、ワークプレイスの役割が変わったのだと思う。

ワークプレイスは、複合開発に必要なハードというより都市の魅力アップにも必要な場。
そこでは主体的に活動したくなる空間が求められ、実際に登場しつつある。

【編集後記】

ワークプレイスの未来に向けた視点

1つのオフィスで完結するのではなく、都市・街区に存在するインフラや、シェアオフィス、ビジネスイベントなど周辺環境を活用する企業が生まれてきた。
アマゾンやGEなど先進企業は、ワークプレイス戦略に注力している。

周辺環境を活用し、企業はABW※などオフィスを柔軟に活用をはじめている。

また、都市にはエコシステムが存在し、都市ごと・規模・発達段階・活躍業種など異なる。
それらを理解した上で、自社にとって価値ある情報・人などが発見・蓄積されるように都市との関係づくりを行っていくことが必要。

さらに、行政が目指す街の方向性も重要な要素となる。

都市との対話による新たなワークプレイス戦略がますます必要となり、課題解決に留まらない、新たな価値を生み出すコアな空間となりつつある。

IoTなど技術の進化を背景にワーカーにとっても選択肢が広がり、働く上で今の自分に必要な環境(働き方のフレキシビリティや課題探求/発見/解決)を選びとるための条件が整いつつある。

ワークプレイスは、ワーカー自身が必要と思うものがより主体的に得られる場へ変化しており、個の能力やネットワークを最大化する魅力的な場へと、さらに進化してゆくであろう。

※ABW
Activity Based Workingの略。オランダから始まった時間と場所を自由に選択できる働き方

メンバー

本件についてのお問い合わせ
都市生活研究所 城
TEL:03-5544-7223

(都市生活研究所 都市インサイト研究ルーム 平野 修二)